3月、倉敷市と岡山県社会福祉協議会が共催で、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)の災害ボランティアセンター(災害VC)のこれまでを振り返り、今後も続く活動を話し合うフォーラムが開催されました。その場では、たくさんのボランティアと多様なNPO・支援団体が協働することになった背景に「受援(じゅえん)力」と「活援(かつえん)力」という二つのキーワードが挙げられていました。
西日本豪雨の災害支援フォーラムには、地元の民生委員ら約150名が参加(2019年3月、倉敷市)。
倉敷市災害ボランティアセンターの箭田(やた)サテライト(2018年7月、倉敷市真備町)。
さて、「受援力」と「活援力」についての紹介に入る前に、ちょっと質問です。
「あなたは、(災害に限らず)ボランティアをしたことがありますか?」
この記事を読んでくださっている時点で、災害ボランティアに参加したり、その活動をサポートした経験をお持ちの人が多いのかもしれません。「YES」と手が上がった人がそれなりにいらっしゃると思います。
では、もう一問お尋ねします。
「あなたは、ボランティアをしてもらったことがありますか?」
こちらはどうでしょう?講演や研修の場で質問したこともありますが、手を挙げる人の数はぐっと減ることがほとんどです。もしかすると、ボランティア活動をすることよりも、ボランティアに何かを頼むことの方がずっと難しいのかもしれません。
大きな災害では、平時から顔の見える被災地の地域住民だけでは対応ができず、外部からの支援が入ってきます。被災地外から応援に駆けつけるボランティアもそのひとつ。緊急時とはいえ、見ず知らずの「よそ者」を受け入れるにはちょっとした勇気と決断が必要で「受援力」と呼ばれています。
東日本大震災で、最も多くのボランティアやNPO・支援団体が活動した宮城県石巻市。個人や短期ボランティアのための災害VCと、団体や長期ボランティアが集まる石巻災害復興支援協議会の役割も大きな要素だったと思いますが、それ以上に浸水した自宅や店舗、避難所、地域でボランティアを受け入れた住民一人ひとりの努力と工夫があってのことだと思います。
ほんの一例ですが、「支援物資をもらうと、後から請求書が届くと思っていた」「ボランティアに泥かきを頼もうと電話したんだ。電話口で、何人で何時間ぐらいの作業?とか、必要な道具は?とか、床下もやりますか?と質問されたけど、はじめてのことだから聞かれても何も答えられなかった」など、受援する側の住民はたくさんの葛藤や失敗に直面していたはずです。
多くの被災地で支援を行う私たちPBVにとっても、こういった住民側の気持ちや事例をきちんと知っておくことが大切だと思い、大規模なボランティアの派遣がひと区切りついた2014年、改めて石巻市で受援側の住民リーダーとなった約20人にインタビューし、冊子にまとめたのが『石巻市民から学ぶ!! 支援を活かす地域力』でした。
この冊子を編集するとき、スタッフの間でも「受援力」という表現の方がいいのでは?という意見がありました。ただ、ちょっと違和感がありました。
シンプルに紹介すれば、「受援力」は『助けて』とSOSを言える力なのかもしれません。石巻市で話を伺った住民リーダーの皆さんは、外部からの応援を積極的に「受援」した上で、ボランティアやNPO・支援団体の違いや特性に合わせたSOSを出す工夫をしていました。支援に頼りすぎて、後になって自立できなくならないよう、内容によっては支援を「断る選択肢」も持っていました。そういった住民リーダーの工夫の数々を、当時の私たちは支援を活かす力と書いて「活援力」と呼ぶようにしました。
支援を受け入れる住民側の経験・視点を、事例や解説、コラムで紹介(冊子の一部より)。
ご存知のとおり、PBVは「災害ボランティア・トレーニング」を中心に全国各地でを行っています。自治会や自主防災会、民生委員などが対象になることもあります。多くの場合は年齢層も高く、「真夏の水害の被災地でスコップを持って泥かきをしましょう!」と呼びかけるのは難しいと感じることもあります。そんな時は、自分の地域が被災した際の「受援力」と「活援力」について考えてもらうワークショップを実施しています。
首都直下地震に備えるため実施した「受援力を考える特別フォーラム」(2018年7月、東京新宿区)。
上記の特別フォーラムでは、石巻市在住の阿部紀代子さんからもお話を聞いた(2018年7月、東京新宿区)。
町内会長や民生委員約140名を対象とした「地域自治会活動研修会」での実施も(2019年3月、北海道北見市)。
災害時に役立つ地域資源を見つけ、平時からどうつながるかを考えるワークショップ(2019年3月、東かがわ市)
今回は、被災した地域住民の立場から見てきましたが、もちろん避難所や災害ボランティアセンターを運営する立場でも「受援力」「活援力」を考えることができると思います。例えば、災害ボランティアセンターでも、地区ごとに被災者一人ひとりのニーズを取りまとめ、地区事情に合わせたボランティアの支援体制をつくる「コミュニティ・マッチング」という言葉を耳にするようになってきました。地域のこと、住民のことを本当によく知っている自治会や自主防災会、民生委員の皆さんは、地域に残り、近隣の住民と一緒に「受援力」「活援力」を高める努力と工夫ができる大切な存在です。
支援する側としての災害ボランティアは大切です。ただ、受け入れる側やそれをサポートする活動も災害ボランティアのひとつの形で、またその難しさや重要性も心に留めておきたいと思いました。
◆「支援を活かす地域力」の冊子購入、講師派遣のご希望は コチラ