モーリシャス船舶座礁・重油流出事故のその後:現地レポート②

エグレット島の見学へ

 
事故のあった地点からボートで約5分、およそ約2Kmの場所に浮かぶ、エグレット島。この小さな島は、PBVの現地パートナー団体であるMWF(Mauritian Wildlife Foundation:モーリシャス野生生物基金)が1965年から環境回復・保全活動を行ってきた自然保護区です。今でこそ希少な生物が多く暮らす緑豊かな島ですが、1965年当時は、外来種の動植物により固有種、希少種が脅かされる状態でした。
 
このエグレット島を、MWFスタッフのJeanさんの案内で見学させていただきました。
 

貴重な動植物の保護のために

 
MWFが長い年月をかけて豊かな自然を回復し、動植物を守ってきたエグレット島。重油流出事故が起きたとき、黒い油が島の船着き場にも達しました。MWFのスタッフは事故直後から、通常はエコツアーに使用しているボートを使い、
 
・島内の希少種・固有種の植物4000株
・島に棲む鳥類、爬虫類、ゾウガメの幼亀の一部
 
などをモーリシャス本島に移動し保護。また、コロナ禍によって海外から専門家が入ることが難しかった中、プライベートジェットでの動物の移送支援の申し出があり、爬虫類の一部はヨーロッパのジャージー島で保護されました。
 
 
 
エグレット島の動植物を保護する一方で、MWFのメンバーは重油の除去作業にも関わりました。
 
「これまでに経験のない事故だったので、いかに環境に負荷をかけずに重油を除去するか」ということが大きな課題だったとお話しされていました。
 
地元のボランティアやNGO、政府関係者などの協力によって、9月中旬には一部の動植物を島に戻せる状態に。2020年12月にはエグレット島でのエコツアーも再開されるほどに回復しました。
 
今回の事故で鳥類1羽の死亡が確認されているほか、希少な昆虫の個体数も減少しているという報告もあります。写真を一見すると美しい環境が取り戻せたように見えますが、事故による影響を明らかにするには、長期的なモニタリングが必要です。
 

今後も起こりうる座礁事故への対策

近年増加しているのが、モーリシャス周辺を航行する船舶の数。「わかしお」事故の後にも複数の座礁事故が発生しています。こうした事故を未然に防ぎ、事故が起きた際に迅速に対応できるような仕組みづくりも必要とされています。MWFは、多発する座礁事故から動植物が守られるよう、政府や関係機関への働きかけも同時に行っています。PBVは今後もMWFと連絡を取り合い、協力関係を深めていきます。
 

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2020年夏にモーリシャス沖で発生した、船舶座礁事故。ピースボート災害支援センター(PBV)は、緊急支援募金を立ち上げて、モーリシャスの2つのNGOによる環境回復とコミュニティの支援を実施してきました。2022年5月にスタッフを派遣し、現地の環境やコミュニティの状況の確認、各団体の活動や今も残る課題についての聞き取りなどを実施してきました。
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