モーリシャス船舶座礁・重油流出事故のその後:現地レポート①

モーリシャス船舶座礁・重油流出事故

 
「私が初めてのアルバイトで稼いだお金です。私にできるのはこれだけですが、モーリシャスの豊かな自然が取り戻されることを願っています」
 
このメッセージは、日本の支援者からMWF(Mauritian Wildlife Foundation:モーリシャス野生生物基金)に寄付とともに届いたもの。MWFのオフィスに飾られていました。他にも多くの日本の人々から、寄付と同時にメッセージ、それも「謝罪」するものが多く寄せられたとのことです。
 

日本の多くの人々が寄付を決めた事故は、2020年7月15日に起きました。日本企業の運航する貨物船「わかしお」がモーリシャス沖で座礁し、8月6日に重油の流出が確認されるというものでした。

 

事故発生から

 
この事故直後からピースボート災害支援センター(PBV)はMWFと連絡を取り合い、
  • 現地の重油被害の様子やMWFの対応
  • 環境や現地の人々への影響
などの情報収集を行い、緊急支援募金を立ち上げました。
 
その後、MWFの環境回復活動と長期モニタリングの支援金として皆様からお預かりしたご寄付を送金。モーリシャスの2つのNGOによる環境回復とコミュニティの支援を実施してきました。
そして2022年5月、PBVスタッフをモーリシャスへ派遣。現地の環境やコミュニティの状況の確認、各団体の活動や今も残る課題についての聞き取りなどを実施しています。
 

MWF(Mauritian Wildlife Foundation)の活動

 
MWFは、モーリシャス最大の環境保全NGOです。事故の起きた直後から、
・重油の回収
・希少動物や植物の移動・保護
・環境回復のための活動
などを行ってきました。
 
MWFの事務所に伺うと、保全担当ディレクターのVikashさんと、広報・ファンドレイジング担当のJeanさんが迎えてくれました。おふたりから、事故の概要とその後のMWFの活動、当時の政府や地元のボランティアの動きなどについて話を伺いました。
 
モーリシャスの人々が経験した事のない規模の環境災害となった今回の事故。MWFは現地NGOとしては唯一モーリシャス政府との調整委員会に参加し、関係機関との連絡・調整業務を担ってきました。初めてのことばかりで様々な課題に直面した一方で「世界から支援の手が差し伸べられ、コロナ禍で直接会うことはできなくても連帯が実感できた」と、お話しされていました。
 
また多く寄せられた謝罪のメッセージに関してVikashさんは
 
「事故が起きたのは彼らのせいでも日本のせいでもないのに、気持ちを寄せてくれる姿勢に心打たれました。日本の皆さんには本当に感謝しています」
 
と、仰っていました。
 
 
事故から2年以上が経過し、重油も除去も終わり、船舶の残骸も完全に撤去されており、事故があった痕跡はほとんど目に見えません。しかし環境への影響については中長期的な調査が必要となるため、MWFでは関係各所と協力しながらモニタリング活動を継続していきます。