「【前編】豪雨から3年が経った、倉敷市真備町へ行ってきました」の続きです。
以下のことを紹介いたします。
・コロナ禍が阻むスムーズなコミュニティ再生
・発災から3年、これからの課題:防災・減災啓発を河川敷から発信
コロナ禍が阻む、スムーズなコミュニティ再生
発災後から現在までの変化
被災前から隠れていたさまざまな街の課題は、被災を機に浮き彫りになると同時にその課題に拍車がかかってしまう場合があります。
現在の真備町でも、孤独・孤立化、コミュニティ形成の困難さなどが大きな課題にあがりました。豪雨から3年経った今も、163名の方が市内外の仮設住宅等で避難生活を余儀なくされています。地元を離れた仮住まいでの暮らしは、近所や地区内の顔の繋がりが途絶えてしまったり、生活状況が変わってしまったりと、心身ともに大きな負担がかかってきます。
一方で災害公営住宅の完成により、やっと住み慣れた場所での生活を取り戻しはじめた人もいます。けれど、決して自宅に帰れたわけではないので、移転先での新しいコミュニティへの不安等もあるそうです。
コロナ禍が阻む、スムーズなコミュニティ再生
この 2 年間、コロナ禍によって集会やイベントの開催はもちろん、募集人数もかなり制限されてきました。それによって地域住民の交流を活発にしたり、話合いを進展させたり、防災・減災のための意識共有を思うように進められない・・・など、もどかしい時間が長く続いてきました。
しかしながら、地区によってはオンラインを活用しリモートでの実施を試みたり、感染症対策をふまえ、屋内での人数制限を設けたイベントや屋外での開催を比較的多くしたりなど様々な工夫をしながら、復興と地域コミュニティの再生に向けて一歩づつ進んでいらっしゃいます。真備町に限った話ではありませんが、コロナはこうったところにも影響を与えていました。
服部地区まちづくり推進協議会・中尾さんは、こう仰っていました。
「とくに川の付け替え工事が終わるまでの大雨や雨季は心配です。けれど、ここに住んでいる以上は、地域みんなで支え合おうという意識を持つことをまず大事にしたいと思っています。ただでさえコロナ禍で満足に直接会える機会が限られている中で、地区の住民にどうやって呼びかけるか、どうやってコミュニティで声を通していくかが、今の大きな課題です」
発災から3年、表面化してきた危機感の薄れ
発災より3年が経ついま。これまで意識的に取り組んできた防災訓練や減災のための研修などの呼びかけに対し、住民の慣れや飽きといった雰囲気もあるそうです。災害に対する危機感の薄れに”危機感”を感じるという声も、今回の真備町訪問で聞こえてきました。
「水害はこの前の経験があるけど、じゃあ次に地震が来たらどうするか? と、心配は尽きません。これまで新型コロナに阻まれていたこともあり、なかなか住民間で意識を共有できませんでしたが、地区内で声を掛け合って避難するために、住民に“防災への第一歩”を踏み出してほしいと思っています。けれど、意識することの先にある行動へ繋げていくには難しさを感じています。
三軒両隣がどうやって逃げるかを把握し合う。もしかしたら足腰が動かないおばあちゃんが隣の家に居るかもしれない。隣が無事逃げたかどうかを把握してから避難するような繋がりを作り上げていきたいです」
(岡田地区まちづくり推進協議会・岡野さん)
これからの課題、防災・減災啓発を河川敷から発信
災害に対する考えや感じ方が多様化しつつある中で、町内では地域コミュニティやまちづくりの活性化とともに、「防災・減災への意識を継続的に向上していく機会を作っていこう」という取り組みもなされています。
小田川の河川敷を活用した地区行事を多数開催している「箭田地区まちづくり推進協議会」では、発災当初背の高い草木がジャングルのように茂っていた河川敷を、2019年春から定期的に足や農機具などを使って芝生化し、次第に土が締まり堤防としての土壌の強化を図る取り組みを継続しています。整地だけでなく、ウォーキングやマレットゴルフ、防災訓練など、様々な河川敷イベントを企画してきた守屋さんは、今後の展望をわくわくした表情でお話してくれました。
【詳しくはブログ「西日本豪雨」中間報告会ご来場ありがとうございました】にて
「川に関わることで、水の流れや土砂の量の違いも次第によく分かってくるんです。今後、キャンプ場やスポーツができる場所など、若い人が遊べる場所へと改良していきたいと思っています。沢山の人が川に遊びに来て、川が身近になっていくことで、知らず知らず川の管理に繋がっていき、自然と防災や減災に繋がっていくサイクルを作るんです」
被災から3年が経ち、町外に避難されていた住民の9割程が真備町へまた戻ってきています。これまで地域の課題が被災状況への対応だったものから、住民一人ひとりそれぞれの速度で復興へと歩む中で、時には災害をもたらしてきた身近な川を理解し、その川とともに上手く暮らしていくにはどうするべきか、というまちづくりの課題へとフェーズが変わってきています。
「子どもたちや、町の就労支援の作業所に通う人たちも、河川敷の草踏みイベントに来てくれるんですよ」と笑顔で話す守屋さんが描く防災・減災活動の今後の展望にとても明るいものを感じました。
日本には数千数万の河川があり、水害時に決壊や氾濫をきたすものも少なくありません。過去の災害を教訓に、その土地や環境に沿った形で、今後この町で生きていく若い世代が楽しみながらまちづくりに関わり、命を守る意識を育てていく真備町の実践は、全国にどんどん広がっていってほしいなと大きな期待感を持ちました。
PBVでは、これからも真備町の住民さんと互いに学び合いながら、災害に強いまち、いざというときにも安心して暮らせるまちづくりを進めていきたいと思います。また、行政・自治体をはじめ、社会福祉協議会や西日本豪雨災害からの共に復興の道をたどる関係団体の皆さんと協働連携し、災害に強い社会作りに一緒に励んでいきます。