2021年8月豪雨災害【インタビュー・一期一会⑦】 地元住民同士が支え合える近さを日常から ~高砂地区住民・村上隆則さん~

佐賀県大町町での出会いのインタビューシリーズ第7弾は、大町町の高砂(たかさご)地区にお住まいの村上隆則(むらかみたかのり)さんです。

村上さんは、2021年8月豪雨が発災して以来8月下旬から、指定避難所での配食や、町内の被災世帯の生活再建をサポートする支援交流拠点「Peri.(ペリドット)」の運営に、ボランティアとして携わっていらっしゃいます。
PBVもこの支援拠点の一つでもあるペリドットの運営を数ヶ月地元の方々と共に担ってきました。その中でも村上さんは、ほぼ毎日のように顔を出し、来訪する被災された住民さんお一人お一人が抱える悩みや困りごとへ寄り添うため、一緒になって支援活動に尽力してくださりとても心強い存在でした。

そんな村上さんに、ボランティア活動を始めるきっかけをお聞きしたたところ、
「私は、実は前回の水害のときは、災害をどこか他人事のように思っていたんです」
と打ち明けてくれました。
村上さんが住む高砂地区は町の中でも川から少し離れた比較的小高い土地にあり、2回の水害とも浸水の被害は発生しなかった地域です。2019年に水害が発生した際は、被災した住民と話す機会がほとんどありませんでした。しかし今回の発災後、地域に住んでいる私たちがちゃんと動かないで誰が動くんだと気付かされた出来事が2度あったそうです。

「一つは、手伝ってほしいと声を掛けてもらったので行くようになった、美郷の避難所(大町町総合福祉保健センター)*で配食サポートをするようになった時。高齢の人が多くて、プライバシーも完全には保たれない環境などを実際に目の当たりにして。避難所で色んな負担や苦労を感じながら生活する町の住民と話すようになって、“こんなにも困っているのだから、私にできることはやらなきゃ”と思うようになったんです。」

*今回の発災後、大町町のでは最長10月15日まで、最大6箇所の指定避難所が開設されました。PBVは、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた、避難所に関する環境整備や、改善のためのアセスメントとサポートを実施してきました。
連携団体の「災害支援団Gorilla」さんがペリドットにて炊き出し支援を実施。
(2021年9月7日撮影:PBV)

 

そして、もう一つの出来事は、「ペリドットに手伝いに来るようになってから、支援拠点としての運営に携わっていたPBVスタッフに出会ったから」だと言います。

「自分等の住んでいる場所ではない全国各地から支援団体が集まって、私たちの町の復旧のために一生懸命頑張ってくれている。落ち込んでいる住民に明るい声で話しかけて元気づけてくれたり、しっかり住民一人ひとりをよく見て支えてくれたり。
これまで色んな被災地を支えてきた支援団体のスタッフたちが、大町町のためにより良い支援をしたいと思ってくれている。彼らが知識や経験、能力を最大限発揮して被災者の元に駆けつける事ができるように、地元住民に出来ることは何かと考えて、ペリドットの運営サポートに積極的に関わるようになりました。」

ペリドットで炊き出し支援がある日は、被災し自宅の掃除や片付けに追われる数十世帯の住民さんへ、配食をサポートする村上さんの姿がいつもありました。
(撮影:Social Good Photography)

 

村上さんは、ご自身の友人・知人、近隣の方へ、町の復旧を支えるボランティアとして関わってくれる人を増やすために、積極的に声がけをしてくださっています。

「苦労は多いですよ。災害が起きてから支え合うための繋がりを作り始めるのでは遅いんだとつくづく感じました。“1日2時間でもいいから来てほしい、こんな活動内容だよ”と説明しても“ボランティアって大変なんじゃないの?”とイメージが伝わりきらず引かれてしまったり、それぞれの事情や都合があって多忙だったりと、なかなか簡単には来てくれません。取り組みが彼らにやっと浸透していくまでひと月以上はかかりましたね。」

村上さん達のおかげで、ペリドットの運営サポートに携わってくれる地元住民の方々が徐々に増えていきました。
ペリドットに来訪する被災世帯の方々は、村上さん達に出会うと、楽しそうに世間話に花を咲かせています。
(撮影:Social Good Photography)

 

地元が地元を支え、協力しあう好循環を積極的に作り出してこられた村上さんに、「全国のみなさん伝えたいメッセージは?」と聞いてみました。村上さんは、一緒に町を支え災害をともに乗り越える仲間を集めるために、とにかく時間を掛けて周囲に説明してまわってきた日々をしみじみと振り返りつつ、「常に万が一に備えて、日頃から声を掛け合って、信頼しあえる人間関係をつくっておくことだと思います。今回改めて、コミュニティに日頃から関わることが、災害への備えに繋がるんだと実感しました」と答えてくれました。

村上さんに出会い、ともに活動する日々から、ボランティア活動に対する姿勢や、日常の繋がりや信頼が有事の助け合いの広がりやスピードに直結することなど、大切な事を沢山教えていただきました。ひるがえって、自分が住む地域の人たちとの関わりの薄さにハッと気づいたり、有事に備えて平時のうちから地域の人たちと一緒に出来ることはもっとあるはずだと考えたりするようになりました。
誰しも、災害を一人では乗り越えることはできないからこそ、「大切なのは、声かけ、声かけの連続ですよ」という村上さんのアドバイスを、平時から意識していこうと思います。人が人に優しい町は、災害にも強い町なのかもしれません。