【台風15号・19号 千葉支援】被災から1年、被災者がPBVと歩んだ軌跡 前編

2019年に猛威を振るった台風15号と19号の被害から1年が経過しました。被害が大きかった千葉県の南房総では、未だにもとの生活を取り戻せないままに、今年の台風シーズンに突入している住民さんも少なくありません。この災害で被災し、自身の家の屋根も飛ばされたPBV現地スタッフがそのときの様子を振り返ります。

 

台風が過ぎ去った次の日の朝。外に出て見たものは屋根が飛んでいるたくさんの家屋でした。この災害で最も必要とされた支援が屋根の修繕でしたが、救援物資として配られたブルーシートを素人の住民さんが屋根に上って掛けることはあまりにも難しいことでした。この状況を目の当たりにしたPBVスタッフは、以後、屋根の専門知識があるスタッフと一緒に被災地の支援活動を始めることになりました。

 

 

 

被災直後、工務店などの専門業者には屋根の修繕の依頼が殺到し、対応までには長い時間が必要でした。多くの高齢者が屋根に上り、100件を超える転落事故が発生してしまいました。屋根の高さは平家でも2メートル以上はあり、2階建なら7メートル以上になります。住民さんは決死の覚悟で毎日屋根に上り、自身の力でブルーシートを張っていました。

PBVでは屋根職人の経験のあるスタッフと協力し、はしごのかける場所や登り方、的確なブルーシートの張り方、土嚢袋の置き方など、ボランティア活動の中で実践を交えて知識と技術を習得できるように環境を整え、ブルーシートを張る担い手の育成を始めていました。この支援の形は、今回の災害支援だけにとどまらず、今後台風シーズンに毎年起こりうる災害で再び屋根が飛んでいってしまっても、「自分たちで修繕できる力」を身に着けることに繋がり、地域の防災力を高めることになります。

 

 

 

さらに台風15号から行き着く暇もなく、1カ月後には台風19号が襲い掛かり、記録的な大雨の影響で甚大な被害をもたらしました。台風15号発災直後に房総半島全体で連日急ピッチに進めていたブルーシート展張でしたが、台風19号のもたらした強風・大雨により、張ったブルーシートの殆どは飛んでなくなり、剥がれ、穴あきなどが発生する事態になりました。度重なる台風に対応できるブルーシート張りの工夫が必要だと実感させられ、地域の復興までの長い道のりを感じました。

また、台風19号は広範囲で甚大な被害をもたらしたため、ボランティアが各地域へ分散しました。その影響もあり南房総でのボランティアの数が減っていきました。PBVでは、台風19号の影響によって河川が氾濫した福島県いわき市への支援を開始しながら、千葉県も災害対応が長期化することを見込み、南房総での継続的な支援をしていくことを決めました。

 

 

 

房総半島は太平洋にむけて突出した地形のため、春から秋にかけては温暖な気候ですが、台風以前から冬季には「西風」と呼ばれる強風が吹きます。ところが、台風15号・19号が上陸して以降、冬季に限らず強風が吹き荒れる日が増えました。房総半島の風は、これまで被災地で蓄積されたブルーシート展張工法では対応しきれないほどのものでした。より強固なシート展張について試行錯誤する日々が続きました。

そこで、屋根被害の面積が大きい場合は、被害箇所を集約したあと、ブルーシートのおさえを土嚢のかわりに木材を使って屋根に直接固定するようにしました。屋根の斜面部分もこの方法であれば土嚢を使用しないでシートを固定できます。この工夫により、土嚢を自力であげる手間や落下する危険性が回避できました。また、本来は屋根の下地材として使用される粘着ルーフィング材を応用して利用することにしました。これにより、手間がかかる棟部分の施工をより簡単で強固に防水できるようになりました。その後も進化を続け、屋根の本施工まで時間が要する場合などは、粘着ルーフィング材の上に、シルバーシートを張る特別な工法を使って工夫し続けてきました。

 

 

 

その地域の状況や、住民さんの要望に寄り添い続けながら現在も支援活動を継続しています。

後編では住民さんの苦悩や長期化する支援活動の様子をお伝えします。

 

つづく、

【台風15号・19号 千葉支援】被災から1年、被災者がPBVと歩んだ軌跡 後編

 

◆台風15号・19号 緊急支援募金

台風15号・19号被害 緊急支援募金