2019年に立て続いて台風被害を受けた千葉の房総半島、あれから2年が経ちました。被害の大きさを物語っていた屋根を覆うブルーシートの数々は、徐々に見当たらなくなってきました。しかし、現在もあの風災害の爪痕は残っており、未だにブルーシートをかぶせているお家も散見されます。住んでいる住民さんの多くは高齢独居や生活困窮世帯です。お風呂やトイレが十分ではないお家も多く、復興までの経済的格差を感じます。さまざまな方へのインタビューを通じて、全4回にわたって復興への地道な取り組みが続く千葉をお伝えします。
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最初にご紹介するのは南房総市社会福祉協議会・地域福祉班の平井良治さんです。平井さんは発災後、南房総市の災害ボランティアセンター(災害VC)の立ち上げに携わり、地域福祉班のときから繋がりを持っていた生活困窮世帯への支援を続けてこられました。
―2019年の台風が過ぎ去ったあと、町に出て何を思いましたか?
令和元年の9月9日ですよね。南房総市は面積が広いので、被害の大きい場所と小さい場所がありました。私は外房エリアの中でも被害が小さい場所に住んでいたので、瓦が数枚飛んだ程度で大きな被害はありませんでした。その日の夜は「風が強かったな」という印象です。ですが、外に出て見ると近くにある牛舎の屋根が飛ばされていたんです。今まで経験したことのない台風だとは思いましたが、まだそのときは実感がありませんでした。
―いつごろ被害の大きさを感じましたか?
地元の消防団に入っているのですが、そのときに訪問した家の倒木被害がものすごかったんです。アンテナが折れている家もちらほらあって、いたるところが停電していました。そういった状況から、徐々に危機感が迫ってくるものがありました。このときに「もしかしたら災害VCを立ち上げるんじゃないか」と思いました。
―当時の災害VCの様子はどうでしたか?
もともと南房総市は2006年3月に7つの町村が合併してできた比較的新しい市です。南房総市社協もその年に合併したのですが、合併以降南房総市社協で災害VCを立ち上げたことはありませんでした。しかし、災害VCの立ち上げ訓練はしていたので、千葉県社協のマニュアルを参考に南房総市用にアレンジし、市役所と調整しながら9月14日に災害VCを立ち上げました。発災後職員全員で立ち上げ準備を行っていたので、立ち上げ自体は比較的スムーズにできたと思います。
ー災害が発生した際、通常業務はどうしていましたか?
9月中は総務などを除いてほとんどの通常業務はできない状況でした。災害VCには多い時で500件以上のニーズが寄せられ、その対応に追われていました。発災後まもなく、千葉県内の被災してない社協や神奈川県域の社協からの応援職員が来てくれて、ようやく通常業務も並行してできるようになりました。私は生活困窮者自立支援制度を担当していましたが、すぐに対応することはできませんでした。
ー今回の支援で難しかったことはどんなことですか?
ボランティアとのマッチングが難しかったです。当初は瓦礫の撤去などのニーズが多いと思っていましたが、実際には屋根の養生や雨漏りのニーズが多くて、一般のボランティアに頼めるようなものではありませんでした。大工さんがいち早く入ってくれましたが、安全管理の統一を図るのも苦労しました。職人さんで慣れているとはいえ、安全管理を徹底してもらわないと不信感に繋がってしまいます。その徹底が難しかったです。また、今回の支援対象は「住家」としていたので、ビニールハウスの被害など、住家ではない建物の対応はできませんでした。余力があれば支援したかったですが、そこまで手が回らないのが現状でした。もどかしい思いでした。
―自立支援員としての葛藤はありました?
台風被害の前から繋がりのあった生活困窮の方には関わることができました。一方で、台風によって生活困窮状態になってしまった方にはなかなか繋がることができませんでした。特に高齢化率が46%台の南房総市では、独居高齢者が多いです。高齢の方には、支援制度を知らなかったり、相談することに抵抗を感じるといった自分から声を上げることが難しい方が多いです。そういったことから、平時から民生委員や区長のように、地域で気にかけられる人が増えることが重要です。そして、地域の方にもっと社協の役割を知ってもらい、相談しやすくならなければならないと思いました。
―災害VCを実際に立ち上げてみて、次の災害に活かせることはなんですか?
実際に立ち上げたのが初めてだったので、この経験は次に繋がります。台風は風の災害であるという認識も広がりました。実際に立ち上げを経験したことで、今後はより具体的な立ち上げ訓練を行うことができます。平時から行政・支援団体・社協・地域住民の連携(ネットワーク)が大切だということも感じました。平時にそれぞれの役割を知っておいて、顔の見える関係を作っておくことが重要です。また、災害時さまざまな団体が駆けつけてくれるのですが、それがどういった団体なのか把握するまでに時間がかかりました。効率的な支援を行うためにも中間支援組織のような災害の規模と団体のマッチングができる人が必要だと思います。
―今後南房総市でどんな防災に取り組んで行きたいですか?
今回の災害で発災から復興支援までの流れを経験することができました。災害を未然に防ぐことは難しいので、非常時に助けあえる地域づくりが必要だと思います。人と人が繋がりあっていく、そして必要な時に声を掛けあえることが取り残されない支援に繋がると思います。
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