【台風19号支援 福島】避難所は、安心して「生活」をおくるための場所

災害が発生した時に、多くの皆さんのより所となるのが「避難所」。
一般的に、行政が指定した小中学校や公共の施設(例えば、公民館やコミュニティセンターなど)が、避難所として開放されます。

 

水害では、一時的に災害の危険性から退避するために、数時間から数日避難所に身を寄せることがあります。ただ、浸水や倒壊などによって自宅に住むことが難しくなるような大きな災害では、数カ月以上、避難所での生活が続いてしまうこともあります。多くの自治体では、避難所の開設訓練は行われていますが、数カ月におよぶ避難生活を想定した避難所運営の訓練は、あまり行われていないようです。

 

そもそも、避難所として指定されている学校の体育館や公民館などの公共施設は、「生活の場」として設計された施設ではありません。そのため、避難生活が長期化するにつれて様々な生活課題が顕在化していきます。

 

例えば、床にシートを敷いて毛布だけの寝具では、安眠することは難しいです。行政から提供されるパン、おにぎり、お弁当だけは栄養が偏ったり、数カ月も同じものを食べ続けることが困難です。着替えや授乳、洗濯などプライバシーはどのように確保したらよいでしょうか。衛生状態を良くしていくために、土足禁止や入浴、トイレ設置、定期的な掃除なども必要になってきます。つまり、私たちが日常で生活を送るために必要な営みが、避難所だからこそ必要になってきます。

 

 

これまでの大きな災害では、災害の当日を生き延びたにも関わらず、避難生活によって命を落としてしまう「災害関連死」が、残念ながら発生しています。東日本大震災では、3,739名(2019年9月時点)。熊本地震では、直接死の4倍以上の214名(2018年10月時点)になっています。

 

避難生活の状況は、特に弱い立場に置かれてしまう高齢者や子ども、乳幼児、妊産婦、障がい者などに大きな影響をもたらしてしまいます。避難所での体調悪化や最悪の場合、災害関連死に至る事態を防ぐためにも、安心して健康的に生活できる場としての避難所を考えていく必要があります。助かった命を、失わないために・・・。

 

台風19号の被害に遭った福島県いわき市では、最大で57カ所の避難所が開設されました。PBVでは、その1つであるいわき市内郷コミュニティセンターで、避難所の運営サポートや生活環境を整えるための支援活動を行ってきました。

 

 

 

 

避難されている方の多くは、朝早くから夕方暗くなるまで、お仕事や浸水したお宅の片づけに追われながら避難生活を送っていました。いわき市の職員さんや応援職員さんと一緒に協力しながら、少しでも皆さんがほっと安心して生活できる環境をつくるための環境を整えていきました。

 

はじめに取り組んだのが、「クリーン大作戦!」。住民さんの希望を確認しながら、大掃除と段ボールベット・パーテーションの設置を行いました。床に直接、寝具を敷いて寝ていると、埃などを吸い込み体調を崩す原因になります。そこで、段ボールベットで寝る高さを上げることによって、それを防ぐことができます。

 

 

 

 

プライベートな空間を確保することこも安心して生活できる大きな要素です。一方で、今まで顔が見えていた環境から顔が見えない環境になる懸念もあります。また、皆さんで、食事をしたりお茶を飲める共有のスペースもコミュニケーションをとるうえで大切です。住民さんの知恵を借りながら、ボランティアと共に作業をしてきました。

住民さんと話していると、「これから家の物を全部揃えるの…。」「避難所を出ると一人になるから不安だわ」という声も聴くことがあります。時には、クリスマス会などのイベントを通じで、一緒に楽しんだり、笑顔を浮かべる機会も大切です。

 

 

 

「こういう小さなことが明日につながるよ。ありがとう。」

 

避難所は、一時的に避難する場所でもありますが、一つのコミュニティーの場にもなっていると実感します。生活の場を整えながら新たな生活を準備する場でもあります。

 

1月25日。いわき市で唯一残っていた内郷コミュニティセンター避難所が閉所しました。発災から4ヶ月が過ぎたこの時期まで避難所での生活を余儀なくされていた理由は様々でとても簡単には説明しきれません。様々な不安を抱えて生活されていた方が避難所から退所したからといって全ての不安が解消されたわけではありません。避難所が閉所したことは一つの区切りのように語られるかもしれませんが、それは決してゴールではなく、生活再建へ向けた新たな一歩なのです。

 

 

PBVはこの間少しでも不安が和らぐように寄り添いながら避難所での生活をサポートさせていただいてきました。最後までこの避難所に身を寄せ生活を送られていた方々にとって大きなコミュニティが形成されていました。そのコミュニティが閉所とともにバラバラになってしまうのではなく、また顔を合わせて集えるようなきっかけ作りのお手伝いをしようと考えています。

 

 

 

 

 

 

◆台風19号 福島県いわき市災害ボランティア募集 
https://pbv.or.jp/volunteer/2019typhoon_02