【台風15・19号 千葉支援】耐久性が求められる屋根補修の手順

 

災害後の屋根補修と聞くと、一般的には「ブルーシートを張る」ことを連想すると思いますが、千葉県鋸南町(きょなん)で行われている補修は少し違います。発災直後は、家屋で起きている雨漏りや屋根材の飛散を防ぐためにスピードと作業工程の容易さが重視されます。また、発災直後の段階では屋根養生の知識や技術を持ったボランティアなどもいないため、お家の方や地域の消防団や有志の方などが「とりあえず」の形でブルーシートをかけます。

 

 

 

 

その際、用いれられるのは、ブルーシートを屋根にかけ土のう袋やロープなどで固定する工法ですが、屋根全体を覆う工法は風の影響を受けやすいため耐久性が低く、その後、強風が続くなど環境の変化によってほとんどが1ヶ月から数ヶ月の間に剥がれ、破れなどが発生し機能を失います。

 

 

 

 

しかし、家屋を修繕する業者不足や経済的な理由などから、屋根工事をすぐに行うことが難しいケースが多々あるため、中長期的に保護できるシートの張り直しが必要になります。今回は、PBVが鋸南町で行っている耐久性の高い工法を、写真でご紹介します。

※以下の例はあくまでも一つのケースです。現場の状態や条件、住民さんの意向や今後の予定などによって変わります。

 

(工程例)和瓦屋根、全体的に瓦の割れ、飛散が確認され雨漏りしている。住民さんは生活を続けているが工事の見通しはたっていない。

 

1、屋根の損傷を確認

雨漏りがしているとのこと。ブルーシートに覆われていてわからないので、これをすべて取り除く。

 

 

 

2、割れた瓦のガラを土嚢袋に集める

ブルーシートを剥がすと、瓦がまばらに散在している。使える瓦を集めて、割れた瓦はガラ袋に入れて降ろす。

 

 

 

3、瓦を差替え損傷個所を一か所にまとめる

スポットで補修するため、瓦を差し替えて、むき出し部分を一か所にする。

 

 

 

4、構造材の垂木位置を確認
5、瓦をかけている桟(瓦桟)を取る
6、下の下葺き材(ルーフィング/防水シート・トントン)を剥がす
7、土などのゴミを清掃

写真縦に通っている細い木を瓦桟と呼ぶ。その下の防水シートが劣化して破れているため、桟を取り除いてシートも取る。その後、土ぼこりなどを箒で履いてきれいにする。

 

 

 

8、屋根用下葺き材(ルーフィング)を貼る

新しくルーフィングを貼る、雨の流れを考えて下から貼る。

 

 

9、構造材の垂木に沿って下地木材(垂木及び胴縁)を設置

この後、シルバーシートを貼るためその下地になる木を入れる。使う材料は胴縁や垂木(野縁)と呼ばれるものが適当。胴縁1.5cm×4.5cm、垂木3cm×4cmの材料

 

 

10、シルバーシートを展張

11、シートを押さえる木材(垂木及び胴縁)を付ける
12、棟の補修・固定

地上で寸法に切ったシルバーシートをピンと張りながら木で下地と挟んでとめていく。使っているシルバーシートは、国産の紫外線に強い長寿命タイプのもの。ブルーシート(#3000)に比べ厚手(#4000)で2~3倍の長期使用に耐える。風雨に強いが高価格。ビスの穴からの雨水の侵入を防ぐために、シリコンコーキングというジェル状のシリコンを塗る。屋根のてっぺんの棟部分が損傷していたため、厚みを出すためブルーシートの廃材をクッション材として入れる。シルバーシートを棟を越えてかけ、粘着ルーフィングでしっかりととめる。軒先にもバタつきを止めるために木をとめる。完成。

 

 

発災から現在まで、すでに何度もブルーシートを貼り直しているお宅がたくさんあり、未だ雨漏りのする家で生活されている方もいらっしゃいます。

 

PBVでは、他の災害支援団体や地元で立ち上がったグループなどと協力しながら、より耐久性が高く、安全性の高い方法を試行錯誤しながら作業を続けてきました。どの方法が一番ということはありませんが、私たちが手がけたお宅約110件の中で、上記工法で行ったシートがはがれたという報告は今までありません。また日々の活動の中で過去にシートを展張したお宅の屋根を継続的に観察していますが、強風の後でも大きな変化は見られず、雨漏りの確認もないことから一定の強度を保っていることが推察されます。

 

 

そして現地では、まだまだ屋根の補修・シートのかけなおしは求められています。現在は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染予防対策として、県外・市外からのボランティアの受入は休止をしており、不特定多数との無用な接触を極力避け、地元に住み活動を続ける同じメンバーのみで、困窮世帯など緊急性の高い活動しています。次の台風の季節の前までに一軒でも多くの屋根を安心できる工法で収めたい、との想いで活動を続けています。

 

 

しかしながら、時間の経過や現在の新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、千葉の被災地への関心が薄れていることも否めません。そして、必要な資材の費用も不安を感じるようになってきているのが実情です。どうか引き続きご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 

 

 

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