【フィリピン台風】 活動レポート vol.3

台風30号(アジア名:ハイエン)活動現場から3回目のレポートです。ようやく全体像が見えてきました。今回は、レイテ島の被害や国際支援の状況を中心に報告します。

レイテ島の中心都市タクロバン市内には、至るところに「I Love TACLOBAN」の応援メッセージが。

 

フィリピンに到着してから、2週間が過ぎました。レイテ島東部は、秒速90m以上という猛烈な風に加え、建物の2階部分まで高潮の被害があった場所。最近の日本で言えば、竜巻と津波が同時に襲ってきたという状況に近いのかもしれません。

 

 

26日、新しいPBVのスタッフが合流しました。石巻市で現在も続ける「仮設きずな新聞」の立ち上げメンバーでもある小鍋匠(こなべ・たくみ)です。セーフティーオフィサーのサイモンとともに、今日もレイテ島に残り活動を続けています。

 

フィリピンはたくさんの島々で構成される国。レイテ島やサマール島など、ライフラインそのものが破壊されてしまった地域では、別の島で物資や燃料を調達する必要があります。被害がとにかく広範囲で複数の島々に分かれるため、PBVの救援ボランティアの活動現場としては、今のところ主にセブ島・レイテ島を対象となりますが、状況に応じてはほかの島々への支援も視野に入れて動く必要があると思っています。

 

活動レポート vol.1で紹介した「PGX(The Peoples’ Global Exchange)」らマニラのパートナーたちは、サマール島やパナイ島での物資配布や炊き出しのボランティアを行っています。今週は、被災した女性たちに向けた物資とボランティアをマニラから船で出発させるとのこと。長年フィリピン国内で活動する団体なのでマンパワーはなんとか賄っているとのことで、PBVとして現状、4つの島を同時に現場にするのは困難なため、物資や輸送にかかるコストの一部を支援金として託しました。サマール島やパナイ島での状況については、彼らからのレポートが届き次第、またお知らせしたいと思います。

PGXのVimさん(写真中央)らとマニラで再び合流。支援金の受け渡しに合わせて、現状の情報交換を行いました。

 

さて、レイテ島の被害状況ですが、レイテの中心都市タクロバンは日本でもたくさん報道され、耳にした方も多いと思います。空路でタクロバンに入りましたが、ターミナルの建物はボロボロで電気もありません。ただ、滑走路は使えるということで、いまも各国の軍や国連、国際NGOの多くが物資の輸送に使っています。

雨が降る(そもそも雨季は11月で終わるはずですが、まだ毎日スコールがやってきます)と、空港の出発ゲートは水浸し。民間機も臨時便で運行していますが、電気とインターネット環境がないため、手続きはすべて手書き。ダイヤもなかなか予定通りには動きません。

 

1週間ほど前は、タクロバンでは市民による物資の略奪事件も報道されていました。もちろん「仕方がない」と片付けるべきではないことですが、物資も情報も届かない周辺の村から「タクロバンに行けばなんとかなるはず!」と、昼夜を問わず歩いてきた人たちが、ようやくたどり着いた先で十分な食料や物資が確保できなかった場面を考えると、簡単な言葉では言い表せない気持ちもあります。

現在のタクロバン市内は、通電していないため夜間は外出禁止、大量の軍や警察による警備によって、治安面では落ち着き始めています。一時まったく調達できなかったガソリンや灯油も、先週からタクロバン市内で入手できるようになました。平均1リットル50ペソ程度がフィリピンの相場ですが、先週は約4倍の200ペソ、今週には55~60ペソ程度で購入できるようになっていました。治安の回復には、こういった輸送手段の改善によって、周辺の町や村にも物資が届き始めたことも大きく影響していると思います。

 

日が沈むと街中は真っ暗。たまに走る車のライトの明かり程度です。壊れた家財道具やガラスもあちこちに落ちているため、ライト(写真のヘッドライトは、今回の支援に合わせてアウトドアメーカーのモンベルからご提供いただきました)が手放せません。夕方8時以降は、外出禁止。

 

 

そして、ここはタクロバンから南に1時間ほど行ったところにあるDulagという自治体。

名古屋に本部(フィリピン現地法人も取得)があり、20年以上フィリピンにこだわりを持って活動してきた「ICAN」という日本のNGOが活動しているとのことで車で向かいました。台風直後からミンダナオ島にある事務所で準備を始め、現在は周辺の10以上のバランガイ(日本での町や村)で物資配布を大規模に展開しています。

視察は「CWS(Church World Service)」に同行。「ICAN」の井川事務局長は、忙しい中にも関わらず、詳しく状況を教えてくださいました。

 

フィリピン全土には、日本のNGOだけでなく海外も合わせて数百の国際NGOが支援に入っていると思いますが、大きなNGOは「物資配布」「避難所」「医療」などの国連が主導する活動分野ごとにクラスターミーティング(分科会)に参加し、活動エリアが重なってしまわないように調整しています。ただ、これだけの数のNGOが入っても、マッチングできない地域が生まれるほど被災地区が多く、そこから漏れた自治体や村もありそうです。そういった地域は、国連の動きとは別にPGXのような国内のNGOがカバーしていたり、村の住民同士でなんとか助け合いながら生活しています。

もともと簡素な造りではありますが、フィリピンでの村では材料さえあれば、自分たちで家を建て直してしまいます。この辺りの逞しさには、脱帽です。

 

ただ、もともと経済状態の厳しい村なので、まったく支援の届かないままでは遠くない将来、体力の限界が来ます。緊急支援から復旧支援に移行するなかで、国際NGOの活動エリアの見直しが必要だろうという声も上がってきています。これらの状況を受け、PBVでは、海外での災害救援の経験、また同じようにたくさんのボランティア団体が集まった石巻市での団体間連携・調整に尽力した代表理事の山本隆も本日から合流しました。

次回は、セブやレイテ島での物資配布や家屋などのプロジェクト、国際NGO間のコーディネーションサポートなどの活動レポートをお伝えできればと思っています。

 

● フィリピン台風30号緊急支援募金に、ぜひご協力お願いします。 コチラ