フィリピン地震に続き台風被害、少なくとも40万人が避難
2025年9月30日にセブ島沖で発生したマグニチュード6.9の地震からの復旧途上において、11月4日、フィリピン中部に大型台風25号(カルマエギ)が上陸し、フィリピン・セブ島では深刻な被害が続いています。
ピースボート災害支援センター(PBV)のスタッフは、10月の現地入りに続き、11月12日~16日にフィリピン・セブ島に再度入り、連携団体とともに状況把握と支援活動を進めました。

現地入り ── 地震と台風が連続し、生活に大打撃
大雨の影響でフィリピン各地で洪水や土砂崩れが発生し、フィリピン当局によると、少なくとも中部セブ州だけでも100名以上の方が亡くなり、40万人以上が避難を余儀なくされています。特にセブ州の被害は甚大で、市街地の水没や建物の流出・損壊、土砂の堆積が見られ、現在も多数の行方不明者の捜索・救助活動が続いています。
セブ島北部メデリン市では、地震発生後、多くの住民の方々が家を失い、テントでの避難生活を余儀なくされていました。
そして、その後立て続けに直撃した台風によって、せっかく避難していた地域も被害を受け、多くの方々が壊れかけた家屋に戻らざるを得ない状況です。
また、同市内を回ると、崩れた壁や倒壊した水道施設など、地震の爪痕があちこちに残っており、復旧にはまだまだ時間がかかることが一目で分かります。

セブ島中部タリセイ市のある避難所では、現在も188世帯・710名の方々が生活を続けており、帰宅のめどは立っていません。台風や地震で被害を受けた家屋が修復されておらず、多くの人々にとって避難所が「生活の場」となっている状況です。
その他の避難所でも、同様に生活環境が十分に整わず、長期化する避難生活の厳しさがうかがえます。

避難所内では、家族や親しい仲間と身を寄せ合いながら生活している方々が多く、限られた空間の中で共同生活を送っています。テントで寝泊まりしている方もいれば、十分な寝具もなく雑魚寝で過ごす方もいらっしゃいました。
狭いスペースに多くの人々が集まっているため、プライバシーはほとんどなく、生活の不便や不安が常に伴っています。
それでも、避難所の方々は互いに助け合いながら日々を過ごしており、その姿からはたくましさと同時に、長期にわたる支援の必要性が強く感じられます。

さらに、セブ島中部のリローン市では、川の氾濫によって多くの家屋が流され、生活の場を失った家庭が数多くありました。倒れた木々や横転した車がそのまま残る光景は、台風の爪痕の深刻さを物理的に、そして肌で感じさせるものでした。
洪水で荒れた地面や破壊された建物の間を歩くと、住民の方々の不安や困難がひしひしと伝わってきます。


失われた家や道路、流された家財は、日常生活を取り戻すための復旧の難しさを象徴しており、現地の方々の暮らしが一刻も早く安定することの重要性を改めて痛感しました。
出会った方々は表面上は穏やかに話してくださいますが、その裏には「家に戻れない」「生活再建のめどが立たない」という深い不安があります。避難所での生活や、復旧に長い時間がかかる現実が、日々の暮らしに影を落としています。
PBVが現地で行っている支援
① 安全な水を届ける給水支援
セブ島北部のメデリン市と中部のセブ市、タリセイ市では、現地団体 Balay Mindanaw Foundation, Inc.(BMFI)や Safe Water for Every Child と連携し、浄水器の設置を進めています。
メデリン市では、訪問時にBMFIのスタッフとともに、市の職員の皆さんへ浄水器の使い方をレクチャーしました。実際に浄水器を稼働させてテストしたところ、きれいな水が出た瞬間、職員の皆さんから喜びの声が上がり、現場には笑顔が広がりました。
一方、タリセイ市の避難所では、設置された浄水器の水を使って炊き出しが行われ、避難生活を送る住民の方々に安全な飲料水と食事が届けられています。

メデリン市職員とBMFIスタッフとともに
② 衛生用品や家屋修繕キットの配布
北部メデリン市では、地震や台風の影響で被災された方々の衛生環境が大きく悪化しています。そのため、現地団体 BMFI と連携し、衛生用品を必要な世帯に届ける活動を進めています。
また、家屋が損壊した住民の方々に対しては、生活の再建を支えるための家屋修繕キットの提供も行っています。これにより、少しでも安全な住まいを取り戻せるよう支援を強化しており、被災者の方々が安心して暮らせる環境づくりに努めています。
③ 支援体制の強化
現地での安全な活動を支えるため、BMFIには現場活動に必要なヘルメット10個を提供し、スタッフがより安全に、効果的に支援を行える体制を整えました。

さらに、セブ島北部メデリン市では市長への表敬訪問も行い、今後の連携や支援の方向性について意見交換を行いました。行政との協力関係を強化することで、被災者の方々により的確で持続的な支援を届ける基盤づくりを進めています。
メデリン市市長とBMFIスタッフとともに
皆さまのご支援が必要です
今回の地震と台風により、フィリピンでは多くの方々が厳しい状況に置かれ続けています。おもてなしの心を持ち、あたたかく接してくださるフィリピンの方々。私たちと接するときも、笑顔で迎えてくださることがありました。
「日本からわざわざ来てくれて、ありがとう」――そんな言葉をいただくこともありました。
しかし実際には、家が流され避難所で生活する方や、壊れた家のそばでテント暮らしを続ける方もいらっしゃいます。先の見えない状況の中で、表情には現れなくとも、深い不安を抱えながら日々を過ごされています。
そして、これまでPBVの活動にお力添えくださっている皆さまに、あらためて心より感謝申し上げます。皆さまのご支援があったからこそ、現地で必要な支援をすぐに届けることができました。
PBVは引き続き、これまでに協働したフィリピンの複数のパートナー団体とともに支援活動を行っていきます。現地の人々が安全な暮らしと笑顔を1日でも早く取り戻せるよう、皆さまのあたたかいご支援をお願いいたします。
※皆さまからのご寄付は、被災地のニーズに合わせて、緊急支援活動や生活再建、コミュニティ再建などに大切に活用させていただきます。なお、現地では被害の全容把握が進められている段階にあるため、状況に応じて活動内容を変更する場合があります。
