【支援継続中】トルコ・シリア大地震:スタッフを派遣しました

 

PBVが継続している、昨年2月に発生した「トルコ・シリア大地震」の被災者支援。

支援活動は、現地パートナー団体「Nirengi Association」を通じて行なっています。

 

4月末からPBVスタッフ2名をトルコに派遣し、現状を確認してきましたのでご紹介します。

 

 

「ニレンギ・ポイントにて行う、子ども支援」

 

特に被害が大きいトルコ南部ハタイ県アンタキヤ郊外。この地域は、もともと幼稚園や保育園が十分に整備されていませんでした。

 

そこに複数のコンテナを設置。子どもたちが安心して遊び、学べる場所「ニレンギ・ポイント」の運営を支援しています。

 

 

現在は100名以上の子ども達が毎月このニレンギ・ポイントに通っています。教育や心理学の専門家であるNirengi Associationのスタッフと共に、子どもたちが図画工作や、ダンス、音楽などを楽しみながら学んでいます。

 

 

 

今回の訪問時に、保護者の方々からもお話を伺いました。

 

地震直後の子どもたちは、大きな音や雷などをとても怖がったり、家の中でふさぎ込んでいたそうです。しかしニレンギ・ポイントでのプログラムに参加するようになって、

 

  • 安心している様子が見られるようになった
  • 正しい言葉遣いができるようになった
  • 社交的になった
  • 語彙力がつき、自分の考えを他の人に伝えられるようになった
  • 良いことと悪いことの区別がつくようになった

 

など、皆さん笑顔で生き生きとお話しされていたことがとても印象的でした。

 

また子どもだけでなく、被災した住民さん向けの個別の育児相談や、心のケアのグループセッションなども実施しています。

 

 

「現地の様子と被災地の暮らし、大人への支援」

 

 

ハタイ県の県庁所在地「アンタキヤ」は紀元前に建設された古い町。考古学的にも重要な町のひとつでしたが、昨年2月の地震で壊滅的な被害を受けてしまいました。

 

数万件にも及ぶ住宅とともに、歴史的建造物の多くも倒壊、破損。町の主要産業であった観光業にも大きな影響が出ました。

 

昨年7月の訪問時には、人影はまばらでタクシーなどもほぼ見つからない。営業しているホテルや商店を探すのも困難という状況でした。

 

しかし4月の訪問時には、アンタキヤ中心地のマーケットには活気が戻っていました。仮設商店街も各地につくられ、人々が徐々にアンタキヤに戻っている様子を目にすることができました。

 

 

昨年の地震後から、被災した人々の多くは今もコンテナ型の仮設住宅で生活を送っています。その広さは約21平米。日本に比べ1世帯あたりの人数の多いこの地域の住民さんにとって、決して十分な広さではありません。

 

子どもたちが遊べるスペースやくつろげる場所も不足しているので、家族全員がこのコンテナに長期に渡って暮らすことは、物理的にも精神的にも困難です。

 

また、地震が起こるまで暮らしていた自宅の被害認定のやり直しや、土地の権利に関する書類の再発行など、今後の生活を考えるうえで必要な法的手続きも多く発生しています。

 

Nirengi Associationでは、子ども向けプログラムと並行して、大人への支援も実施しています。

 

住民さんの必要に応じて、心理士や弁護士、ソーシャルワーカーなど、専門的知識を持つスタッフが個別相談を受けたり、相談会を開催するなどしながら、住民さんの不安を少しでも減らすために活動しています。

 

 

 

「地震国トルコでの防災事業」

 

 

Nirengi AssociationとPBVはともに、防災・減災に取り組む市民団体のネットワークであるGNDR(Global Network of Civil Society Organisations for Disaster Reduction)のメンバーとして、それぞれトルコと日本で防災・減災に関する事業を推進してきました。

 

現在ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成を受けて実施している協働事業では、防災研修にも取り組んでいます。

 

トルコは日本と同様に地震国であり、また近年は水害も頻発しています。そのため本事業の計画段階から、未来の被害を減らすための研修も被災者支援の一環として実施したいという共通した思いが両団体の中にありました。

 

トルコでも雨季の訪れが近づいているため、地震だけでなく水害対策も含めた防災研修プログラムを開発。ハタイ県にて、ニレンギ・ポイントに通う子ども達、その親族を中心とした被災した住民さん、そして自治体職員やボランティアに向けて、防災研修の実施を進めています。

 

4月にはアンタキヤ近郊のデフネ地区の役場で行われた、防災研修の様子を見学。役場の環境課、住宅課、公園課など各部署の職員のほか、警察や地元住民など、12名が出席しての講座となりました。

 

 

講座では、

 

・地震が起こる仕組みやハタイ県の地形

・どうして昨年2月の地震で大きな被害が出たのか

・地震に関する迷信や誤情報などについて

・消火器の使い方

 

など、多岐にわたって防災に関するものになりました。

 

行政職員が対象ということもあり、人道支援の国際基準である「スフィア基準」についても触れ、トルコでの支援の際にスフィア基準がどのように活用されたかの事例も紹介されました。

 

最後にPBVスタッフから「PBVのトルコでの支援事業」と「能登半島地震」についてもお話しする時間をいただきました。

 

 

 

能登半島地震での倒壊家屋の写真を紹介すると、皆さん真剣な表情で耳を傾けてくださりました。また日本での公的支援の制度や避難されている方々の生活の状況などについて多くの質問をいただきました。

 

PBVスタッフにとっても、トルコで支援にあたっている行政の方々、被災された方々から直接お話を伺い、貴重な学びの機会をいただきました。

 

トルコも日本も地震国であり、最大都市のイスタンブールは、東京と同様に「いつ大きな地震が起きてもおかしくない」と言われており、市民レベルでの防災・減災の取組みの重要性が叫ばれています。

 

PBVは今後も現地パートナー団体と協働しながら、互いに学び合う関係構築を続けていきます。

 

 

「今後も活動を継続していきます」

 

PBVによるアンタキヤでの「ニレンギ・ポイント」の支援事業は、当初は5月末で終了の予定でした。しかし、住民の皆さんからの継続を願う声を鑑みて、支援者の皆さまからのご寄付を活用して9月の学校の新年度まで活動を継続することになりました。

 

皆さまからのあたたかいご支援に心より感謝申し上げます。引き続きのご支援、どうぞよろしくお願いいたします。