ロシア軍によるウクライナへの大規模な攻撃が始まってから3年目。
PBVは隣国ルーマニアに拠点を置く複数のNGOと協力しながら、避難民の方々への支援を続けてきました。
今年3月、スタッフをルーマニアへ派遣しました。ルーマニアでは現在も約8万人が避難生活を送っています。今回の出張ではウクライナ出身の避難民の支援をするパートナー団体を訪問し、ウクライナ避難民と東京の若者とのオンライン交流イベントや、継続支援に向けた打ち合わせ、避難者からの聞き取りなどを行いました。その様子を報告します。
ウクライナ避難民、現在のようす
大規模攻撃から3年目をむかえる現在、戦争の長期化にともない、さまざまな変化が起きています。ウクライナからの避難民の方々にとっては、避難先で長く暮らしていくための生活手段を手に入れなければならない段階にきているというのが現在の状況です。また、避難民を受け入れている国の支援策にも変化があります。
2024年3月14日 資金提供や、日本とのオンライン交流会の実施
PBVのパートナー団体のひとつが、ルーマニアに避難してきた方たちをサポートするNGO「Notorious Learning Projects」です。彼らがルーマニア北西部のクルージュ=ナポカで運営している避難民支援センター「ドブラ・ハタ」では、2022年2月の攻撃開始直後から、避難民への直接の物資提供や生活面の支援をはじめ、以降は、毎日100~150家族が利用する支援拠点となっています。
3月14日、この「ドブラ・ハタ」を訪問し、避難民の方々を支援するための運営支援の継続における合意書の署名と、日本とのオンライン交流会を実施しました。
●活動資金の提供
この日、PBVはこれまで皆さまにいただいたご寄付や街頭募金などによる支援金を提供し、双方で寄付合意書に署名しました。名目は、2024年4月から3か月間の家賃と光熱費の一部です。
避難生活が長期化していることで、ルーマニアではウクライナからの避難民への公的支援が減少しています。大きなスポンサーを持たない「ドブラ・ハタ」の運営費用を捻出することは容易ではありません。避難民の方々が、安心して相談したり、支援物資を受け取ったり、他の避難民と交流できる場として維持するためには、安定的な予算確保が必要になっています。
●日本とのオンライン交流会
この日、PBVはNGOピースボートと協力し、ルーマニアで生活を送るウクライナ避難民と東京の若者をつなぐオンライン交流イベントを開催しました。
ルーマニア側では、スタッフのパトリシアさんが「ウクライナの方々に日本の文化も体験してほしい」という思いから、サプライズとしてお寿司をご用意。
作ってくださった地元のお寿司屋さんには、ウクライナ避難民の方も働いています。
また前日にはフードバンクから大量の靴やサンダルを受け取り、サイズ別に仕分けして、必要とするご家族に渡せるように準備しました。その他、ウクライナを含む旧ソ連地域で広く食べられているそばの実(グレーチカ)をパントリーに用意しました。そばの実はルーマニアではあまり売られていないので、見つけた方々はとても喜ばれていました。
現地時間13時、交流イベントがスタート。
ウクライナの避難民10名が集まりました。最初は少し緊張していた方々も、東京の若者たちが漢字で書いてくれた自分たちの名前がパソコンの画面に写されると、スマホで写真にとって喜びました。「今日ここに連れてこれなかった子どもの名前も漢字で書いてほしい」とのリクエストもありました。また、ルーマニア側でも分担して、東京からの参加者のお名前をキリル文字で書いてお見せしました。
和気あいあいとした雰囲気で進み、最後の質疑応答では、ルーマニア側から「(東京の)皆さんはとても若く見えるけれど、何歳くらいですか?」「みんな何歳ぐらいで結婚したいと思ってる?」というお話も。ほかにも「以前テレビ番組で日本のお年寄りがいろんな趣味の活動に参加しているのを見て、とても良いことだと思った。こういう活動は政府が支援しているの?」などの質問もありました。
やりとりの中で、「子どもたちの学校が休みの時には家族に会いにウクライナに帰っている」という説明があったり、「私は72歳だけど、この年齢になって自分の国が戦争になるとは思っていなかった」「帰れる家もなくなり、戦争が始まってすぐルーマニアに避難してから一度もウクライナに戻っていない。今後もずっとルーマニアで暮らしていくつもりだ」とおばあさんが涙ぐみながら話してくれたりと、戦争がまだ続いていることを改めて実感させられる発言もありました。
イベントに参加された避難者の皆さんはとても楽しんでくれ、終了間際には「今回で終わりじゃないよね?また皆さんに会える機会はありますよね?」という声もあがるほどでした。「ドブラ・ハタに来るといつも幸せな気分になれる」「とても楽しかった」「こんなに楽しんでいる自分に驚いている」など、とても前向きな声が聞かれ、一生懸命に英語で「楽しかった」と伝えてくれる方も。
これまで何度誘ってもなかなか「ドブラ・ハタ」へ来なかった若いお母さんも、「今後開催予定の子育て相談のセッションにも参加したい」と前向きになられていて、皆さんが笑顔で帰っていかれたのが印象的でした。パトリシアさんも「こういうイベントを定期的に開催していきたい」という提案をいただき、とても有意義な会となりました。
戦争がまだ続いていること、避難を続けざるを得ない人々がいること……そういったことを日本の方々に知っていただくためにも、今後も交流事業を続けていきたいと考えています。
これからの支援について
数週間前から、ルーマニア北西部のクルージュ=ナポカ市内ではバス代が有料になりました。これにより、経済的に苦しい避難民の方々は、PBVのパートナー団体「Notorious Learning Projects」の運営する避難民支援センター「ドブラ・ハタ」に頻繁に足を運ぶことが容易ではなくなってしまいました。とくに一人暮らしのお年寄りにとっては、社会とのつながりがなくなってしまう恐れがあります。
パトリシアさんは、今回のオンライン交流会のような楽しいイベントや、特別な食べ物などをきっかけに、避難民の皆さんが孤立しないように支援していきたいと考えています。
なお「ドブラ・ハタ」では、避難者の女性たちが編み物やビーズ細工のクラブ活動も始めています。定期的に集まって手を動かすことで、日頃の困りごとについても話すようになったり、心が落ち着く効果があるため、今後もクラブ活動を継続していく予定です。
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ウクライナ出身の避難民の数は約8万人にのぼります、その大半が女性、子ども、高齢者です。そのうちルーマニアで一時保護申請を行った避難民の数は152,342人・ルーマニアで暮らす避難民の数は78,743人となります(2023年末時点、UNCHR)
今なお続く激しい紛争に対し、PBVは支援活動を実施し続けていきます。
◆PBVのウクライナ人道支援はこちら
https://pbv.or.jp/donate/2022_ukraine