2022年2月24日にはじまったロシア軍によるウクライナへの大規模な攻撃から、2年。ウクライナ出身の避難民の数は6,444,800人にのぼり、その大半が女性、子供、高齢者です(2023年末時点、UNCHR)。今なお続く激しい紛争に対し、ピースボート災害支援センター(PBV)は現地NGOとともに支援活動を実施し続けています
大規模攻撃開始時の動き
2022年2月:大規模攻撃開始直後
PBVでは国際機関やウクライナ、そして周辺国のNGOからの情報収集を開始しました。
2022年3月:スタッフ派遣・調査・報告
事務局長を含む3名のスタッフをルーマニアに派遣し、避難民からの聞き取り、国連機関や支援団体との協議、調整を実施しました。また現地滞在中に実施した緊急報告会「3/29 ウクライナ人道支援:現地からの緊急リポート」はオンラインで配信され、日本のNGOの中でもいち早くウクライナと周辺国の状況を伝えました。
>2023年2月「ウクライナ大規模攻撃開始から1年」のブログはこちら
この1年で起きた、避難民の大きな変化 ── 隣国ルーマニア
ウクライナ出身の難民/国内避難民の人口のうち、
・ルーマニアで一時保護申請を行った避難民の数は152,342人
・ルーマニアで暮らす避難民の数は78,743人
となります(2023年末時点、UNCHR)
(写真:PATRIR)
この1年のもっとも大きな変化として、避難者の方々が、避難先の地域で今後も暮らしていくための具体的な行動を起こしてきたということがあります。
1年前の段階で、隣国ルーマニアでは約11万人のウクライナ避難民が暮らしていました。当初から避難者の方々の多くは、「戦争が終わったらすぐにウクライナへ帰る」「ルーマニアにいるのは短期間」という前提で避難をしていました。
また、「生活面でのチャンスが多いドイツやポーランドに避難したいけれど、ルーマニアなら近いので戦争が終わればすぐに帰ることができる」というのも、ルーマニアに避難民が多い理由のひとつです。実際に、週末には今もウクライナで戦う父親に会いに行ったり、ウクライナからのお取り寄せ便が届いたりと、祖国と関わりながら、「いつかウクライナに帰る」という前提で暮らし続けていました。
しかし2年目をむかえる現在では、戦争の長期化にともない、避難先で長く暮らしていくための生活手段を手に入れなければならない段階にきています。その手段として「ルーマニア語を勉強しようか」「ルーマニアで事業を立ち上げようか」といった方々が増え、現地NGOにも相談が寄せられています。
このような変化の原因のひとつに、避難生活が長期化したことで受入国の支援の方法が変わったことがあります。
ルーマニアの場合は、昨年5月に政府からの支援金を受け取るための条件が変更され、避難してきた子ども達をルーマニアの学校へ通わせることなどが条件に追加されました。それまでは子ども達は、自分の通っていたウクライナの学校でのオンライン授業を受けていました。そこは、各国へ散り散りとなったクラスメイトとも画面越しに顔を合わせられる、大事な時間でした。しかし、ルーマニアの施策が変わったことにより、ウクライナとルーマニアどちらの授業も受けるようになった子どもが大半となります。
一方で、支援をもらうだけでなく「ほかの避難民や避難コミュニティの役に立ちたい」と考える人が増えてきており、独自の助け合いがうまれています。
避難者に寄り添える支援団体が減ってきている
2年前のウクライナ大規模攻撃開始当時、さまざまな国のたくさんの支援団体が活動をしていました。多くの寄付も集まりました。しかし、いま、活動を継続できている団体はとても少なくなってしまいました。
PBVは複数の現地パートナー団体とともに支援をおこなっていましたが、長期化するほど、資金や寄付などが少なくなり、活動が先細っていくことは大きな課題です。引き続きゆうちょ財団「避難民支援特別枠の助成事業」などのサポートを受けながら、今も積極的に支援を行っている団体と手をとり合って活動を継続していきたいと考えています。
パートナー団体のひとつ Notorious Learning Projects は、一昨年2月の軍事侵攻開始の直後より、ルーマニア北西部のクルージュ・ナポカに避難民支援センター「ドブラ・ハタ」を開設。現在はルーマニアでの開業の相談にも対応しており、美容院を開業したり、建設会社を立ち上げた避難者もいます。支援団体としても学びを続けながら、より避難者の方々に寄り添えるよう活動を続けています。
また、ウクライナ国内でがんの治療を受けられなくなったがん患者が継続的な治療を受けられるよう支援する Youth Cancer Europe (YCE) では、この1年の間にひとりの患者が亡くなってしまいました。お別れの会を開催し、ご家族からは「いい人生の終わり方だったと思います」との言葉もいただきましたが、「もし戦争がなかったら」と思わずにはいられません。お骨は、お葬式に出られなかったウクライナの親族のもとへと届けられました。
(YCEが支援するがん患者さんたちと)
ウクライナ避難民の方々のために、わたしたちができること
ウクライナ侵攻は今も続いています。
大規模攻撃の開始から2年。避難者の方々は「忘れられているのではないか」という不安を強く抱えています。PBVは継続的に訪問と支援を続け、「忘れていない」と発信することで、彼らの支えとなれるよう努めます。
3月にはスタッフをルーマニアに派遣し、活動の進捗や課題についてモニタリングを実施予定です。
今後も、ウクライナの人々への支援を続けてまいります。
皆さまからの引き続きのご支援、どうぞよろしくお願いいたします。