大規模攻撃開始1年のこれまでとこれから ~ウクライナ支援における現地5団体との協働の記録~

2022年2月24日に開始したロシア軍によるウクライナ大規模攻撃から1年。ピースボート災害支援センター(PBV)はこれまで、支援現場の最前線で活動している5つの現地NGOとともに支援活動を実施し続けています。また現在は、PBV職員が現地に入り、支援内容の更新を行っております。

 

大規模攻撃開始時の動きと、現地最新情報

2022年2月:大規模攻撃開始直後
PBVでは国際機関やウクライナ、そして周辺国のNGOからの情報収集を開始しました。

2022年3月:スタッフ派遣・調査・報告
事務局長を含む3名のスタッフをルーマニアに派遣し、避難民からの聞き取り、国連機関や支援団体との協議、調整を実施しました。また現地滞在中に実施した緊急報告会「3/29 ウクライナ人道支援:現地からの緊急リポート」はオンラインで配信され、日本のNGOの中でもいち早くウクライナと周辺国の状況を伝えました。

 

最新情報(2023年2月時点)

PBVはルーマニアに職員を派遣しています。モニタリングとパートナー団体および避難民からの聞き取りを実施し、それぞれの支援事業を振り返り、支援内容の更新を行ってまいります。

●現地のようす(2023年2月時点)

UNOCHA報告より:2月10日付
「ロシアの侵攻により8年間の紛争が本格的な戦争へと劇的にエスカレートした2022年、ウクライナの人道的状況は劇的かつ急速に悪化しました。
この
1年を通じて、激しい敵対行為によって広範囲な破壊が起こり、数千人が死傷し、数百万人が家を追われ、仕事と生計が破壊されました。人道的支援と保護を必要とする人々の数は、年初の約300万人から、数ヵ月後には約1,800万人に増加しています。
人道支援組織は、計り知れない困難にもかかわらず、急速に活動を拡大し、2022年には1600万人近くの人々に重要な支援を提供することができました」

UNHCR報告より:2月10日付
「ウクライナ東部と南部で戦闘が激しく続いています。
ドネツク、ハリコフ、ザポリジヤ、ドニプロペトロフスク、ケルソン、ミコライフ、スミ、ザポリジヤの各州の住宅地では砲撃があり、市民の死傷が発生しました。1月26日にウクライナ全土で発生した新たな攻撃の後、主にキエフスカ州、オデスカ州、ヴィニツカ州で、数百万人がさらなる停電に直面しました。オデッサでは、人口約100万人の都市全体が一時的に断水となりました。

発電所の攻撃により2月4日から停電していたオデッサ州では、重要インフラへの電力供給が再開された。2月5日現在、オデッサ市では約40%の世帯で停電が続いています。

2023年2月5日現在、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)はウクライナで18,817人の民間人の犠牲者を記録し、そのうち7,155人が死亡、11,262人が負傷しています」

 

現地5団体とPBVの協働の記録

2022年2月現地調査の後、ルーマニア等に拠点を置くNGOらとの協働により、ウクライナ国内、そしてルーマニア等周辺国に暮らす避難民の支援活動を開始しました。


変化するニーズに対応するため、寄付者や助成元の理解を得ながら、支援から取り残される人の無いよう、また困難を抱える人々に寄り添った支援をするような柔軟な支援を心がけています。2023年2月までに、ウクライナ国内への食料、日用品、医薬品の配布、一時避難所の整備、炊き出し支援、ルーマニアでの法律支援、避難民支援センターの運営支援、ルーマニアを含むヨーロッパ各地の病院へのウクライナ人がん患者の転院および生活支援などの活動を継続しています。

 

 

Youth Cancer Europe (YCE)

2015年に設立されたルーマニアのクルージュ・ナポカに拠点を置くNGO。今回の軍事侵攻を受け、ウクライナ国内でがんの治療を受けられなくなったがん患者が継続的な治療を受けられるよう、ウクライナ国内の比較的安全な地域の病院や、ヨーロッパ各地の病院への転院を支援しています。病院の転院手続きだけでなく、避難の手配、患者さんがご家族とともに暮らせる安全な住まいの手配、食料支援や、継続的なケアなどを提供する活動を続けています。
2023年2月までに240名以上の患者さんとその家族、合計約700名を支援しました。夏にはクルージュ・ナポカで開催された音楽フェスティバルに患者さんとご家族を招待したり、年末にも支援者と患者さんとの食事会を開催するなど、新しい環境で暮らす患者さんとその家族が地元の人々と交流する機会も提供しています。

この事業は、真如苑様、大塚商会ハートフル基金様を始めとした皆様からのご寄付により支えられています。

 

Romanian National Council for Refugees (CNRR)

ルーマニアにおいて、長年にわたって世界中からルーマニアに逃れてきた難民の支援を行っている難民支援のエキスパート団体。今回の戦争においては、それまでに培われた知識や経験に基づき、ルーマニア政府や国連機関、NGO等と連携し、ウクライナ国民のみならず、ウクライナに暮らしていた第三国の市民への支援も行ってきました。ウクライナ・ルーマニア国境地域での相談窓口の設置やコールセンター、法的支援や通訳翻訳サービスの提供や、支援の担い手の養成講座の実施など、多岐にわたる支援を実施しています。またCNRRでは、ルーマニアに逃れてきた避難民も多く雇用し、避難者自身が支援者として活躍しています。

PBVでは、CNRRの研修事業や避難民の交流事業、備品提供などの支援を行っています。

<実施内容>
・ 国境付近での避難民支援
・コールセンターの設置
・一時保護/難民申請の支援・書類翻訳
・支援スタッフの養成
・ルーマニア定住に必要な情報提供、説明会の開催
・交流イベントの実施 等

 

World Central Kitchen(WCK)

食料支援を専門的に行うNGO。各地で飲食業に関わる人々を中心に、2010年の設立以来、米国に拠点を置き、世界各国の被災地、紛争地に食事を届けます。今回の戦争では、開始直後にポーランドとの国境付近で入国手続きを待つウクライナ国民に温かい食事を提供し始め、ウクライナと周辺国の合計8カ国で、食料配布や炊き出しを実施しています。
2022年2月25日以来、WCKが8カ国で提供した食事は、1億7,900万食にのぼります。昨年10月以降相次いでいるインフラ設備への攻撃により、ウクライナの広い地域で、電気やガスが使えず、厳しい寒さの中で温かい食事を手にすることが非常に困難になりました。

PBVでは、2022年末~2023年の緊急越冬支援の一環として、WCKの行うウクライナ国内での食事・食品(約3,300食)の提供に協力しました。

 

Notorious Learning Projects

ルーマニアのクルージュ・ナポカで避難民の支援センター「ドブラ・ハタ」を運営しています。戦争開始直後の2月25日から避難民への直接の物資提供や生活面の支援を開始し、現在では毎日100~150家族が利用する支援拠点となっています。
クルージュ・ナポカには約 3,000 名の避難民が暮らしていますが、就職先の確保やルーマニア語の習得など、避難生活が長引くにつれて支援ニーズも変化しています。この「ドブラ・ハタ」は、寄付された食料や日用品、衣料品等を配布するだけでなく、避難民自身がボランティアとなって相談事に対応したり、子どもたちが安心して遊べるスペースの提供や、ウクライナ語、英語、ルーマニア語の教室、カウンセラーを招いての心のケア、職業訓練コースの実施など、ニーズに合わせて多岐にわたる活動を行っています。避難民自身の支え合いにより運営されているこのセンターは、何でも相談できる場所として、周辺地域に暮らす避難民に頼りにされています。
2022年12月には、センターに通う子どもたちと日本を繋ぎ、一緒に折り紙でサンタさんを作ったり、ウクライナと日本を紹介し合うオンライン交流会を行いました。

PBVでは、真如苑様を始めとした、皆様からのご寄付を活用し、センターの備品整備や支援物資、家賃等の支援を行っています。

 

Peace Action, Training and Research Institute of Romania (PATRIR:ルーマニア平和研究所) ※2023年3月まで協働

2001年に設立されルーマニアのクルージュ・ナポカに拠点を置くNGO。軍事侵攻開始直後から、クルージュ・ナポカ市役所やNGO等に呼び掛け、支援物資を集めてウクライナに運ぶ活動を開始しました。
PBVとの協働事業では、ジャパン・プラットフォーム様の助成金を受け、2023年2月までにウクライナ各地の病院のべ21カ所へ医薬品、衛生用品、医療機器等を届けました。

また、PBVでお預かりした、パルシステム生活協同組合連合会様を始めとした寄付金を活用し、キーウやウクライナ西部の都市に向けて、食料品や日用品の配布、および一時避難所の改装の支援も行いました。

・コシフ避難所:牛乳、小麦粉、食用油、パスタ等
・キーウと周辺地域:砂糖、塩、小麦粉、缶詰、ジャム、インスタントスープ等

 

※現地のニーズに応じて、パートナー団体を追加する可能性があります

 

ウクライナ支援のこれから

2023年2月にふたたびルーマニアに職員を派遣し、支援内容の更新を行っております。

新規事業として、戦争により負傷した人々に、日本の医療技術を活用した治療を提供するプロジェクトを開始しています。事業の本格的な開始は今春以降の予定で、現在ご寄付を受け付けています。

 

再生医療リハビリテーションプロジェクト

ジョージアで負傷者を受け入れ、治療を行っているM. Iashvili Children’s Central Hospitalによると、頭部外傷などによる歩行機能を取り戻すためのリハビリを必要とする人の数は2万人を超えています。 しかし、残念ながら多くの患者さんが完全な回復には至っていません。

この状況を踏まえ、広島大学大学院医系科学研究科の弓削 類教授と、M. Iashvili Children’s Central Hospitalの脳神経外科医Dr. Lika Khorbaladzeらは、ピースボート災害支援センター(PBV)と連携し、「ウクライナ人道支援 再生医療リハビリテーションプロジェクト」を立ち上げ、難渋している頭部外傷の患者の治療とリハビリテーションを行います。
 ⇒ 本プロジェクトの詳細はこちらから

 

あたたかいご支援をお願いいたします

現在、PBV職員が現地に入り、支援内容の更新を行ってまいります。
詳細や速報はPBVのブログやSNSで発信してまいります。
今後も、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

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