【2021年7月 熱海市土砂災害】 避難所支援調整・移行期課題への取り組みのサポート

(本ブログは、先日8/31に実施したオンライン報告会の抜粋です)

 

PBVは、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)の要請を受け、JVOAD避難生活改善に関する専門委員会の一員として、2021年7月13日から8月20日の間、スタッフを熱海市に現地派遣しました。静岡県災害ボランティア本部・情報センター、内閣府防災、熱海市、熱海市社会福祉協議会(災害ボランティアセンター)、地元NPO、外部支援者らと連携しながら、主に行政や社協との情報連携体制の構築のサポートや、避難生活の緊急期から移行期の課題整理のサポートを実施しました。

 

 

現地スタッフ派遣時の被害状況は、伊豆山地区で大規模な土砂災害が発生し、岸谷・浜・仲道の3地域にて、死者22名、行方不明者5名、被害棟数133棟、避難世帯146世帯、避難者数195名でした(熱海市:2021年8月10日時点)。

 

 熱海市では、今回の災害発生前からコロナ禍における自然災害などが発生した場合、観光地・熱海市ならではの地域性を活かして、ホテルを避難先として活用することが事前に検討されていました。そんな中で発生した伊豆山の土砂災害被害。地域住民のほとんどが市内の観光ホテルで避難生活を送ることとなりました。ホテルを活用した避難所は、新型コロナウイルス感染防止の取り組みとしてだけでなく、世帯毎に個別空間で避難生活を送ることができるメリットがある反面、避難住民となかなか対面でお会いするタイミングが少ないため、個々の状況が見え辛くニーズ把握がし難いなどのデメリットもありました。

 

 また、静岡県では南海トラフ地震などの想定から日頃から災害や防災への取り組みが多くなされています。その効果もあってか県の災害対応のスピードは比較的早く公表されましたが、一方で対応する被災自治体は対策の迅速さに反して、住民の方々のニーズ把握や情報整理、対応が追いついていない現状もありました。限られた人員の中で目の前の業務に追われていく中で、被災者支援の土台となる被災者台帳がなかなかできないことや、内外の関係各所と情報共有が図れないなど、支援のための連携に繋げる情報を一元化できていないという大きな課題がありました。情報の整理や共有が成されないことで、特に避難生活からそれぞれの生活再建に向けて退所していく移行期には、情報の錯綜や混乱が起きやすくなり、ニーズへの対応の遅れに繋がってしまいます。

 

 そこで、PBVでは避難生活の緊急期から移行期の課題整理のサポートとして、まずは被災者の方々のニーズを把握するため、生活再建に向けた意向調査を実施しました。熱海市社会福祉協議会(災害ボランティアセンター)が実施主体となり、熱海市、静岡県災害ボランティア本部・情報センターや、保健師、福祉専門職チームDWAT、社会福祉士会、茶の国会議など静岡県内のネットワークの強みを活かして様々な方々との連携、ご協力いただき実施に至りました。ヒアリングでは実際にお部屋にお伺いし、1世帯毎におよそ1時間以上かけて丁寧にお話を伺う中で会話から、世帯毎のニーズや困りごとを細やかに把握し、被災者台帳へ情報を一元化していけるように整理しました。また、意向調査に基づいた個別対応によって、孤独死や災害関連死の予防をはじめ、心身のケアや必要な公的支援などへスムーズに繋げるための流れを整理しました。

 

 意向調査からみえてきた課題は、フラッシュバック、不眠症といった心身の健康状態の悪化や、生活再建への不安や費用面の困難、初めての被災でそもそもどんな情報を頼りにしたらいいか分からない、これまで在宅勤務をしてきた方や授業をオンラインで受講してきた学生がホテル避難の中で集中して作業できる環境が欠けているなど、コロナ禍特有の課題も含め、避難生活での困りごとは多岐に渡っていました。

 

 

コロナ禍による影響で、そもそも被災前から休職や失業により収入原が途絶えてしまっている方も多く、被災によってより一層今後の経済面での困難が深まった世帯も少なくありません。また、初めて被災に遭われた住民の方々にとって、わかりやすい情報発信を求める声が非常に大きく、とくに観光地で働く方など多国籍なバックグラウンドを持つ住民の方々からは、生活再建を進めていく上での手続きなどの際に読み書きのサポートを求める声が多く寄せられました。

 

現在、熱海市では関係各所の連携のもと、意向調査から見えてきた課題に対して、必要な専門家の協力を仰ぎながら個別対応を進めています。JVOADやPBVとしても、被災者の生活復旧のための中長的視点を大切にしながら、被災して使えなくなってしまった家電などの物的支援などを継続していくとともに、今回の被災地での情報共有の流れや課題整理の取り組みの振り返りや検証を改めて行っていきます。

 

加えて、今回の熱海市に限らず、各被災地で毎回課題に上がる事例として、災害救助法の活用方法の理解をもっと深めていく取り組みの必要性が挙げられます。災害救助法を効果的に活用して、避難者への支援に繋げるために自治体が災害発生後に悩むケースも見受けられます。災害対応時によりスムーズに公的な制度を積極的に活用していくためにも、地域の中で平時から事前に取り組んでいく必要があると感じています。今後の全国各地での災害対応や防災・減災教育の取り組みへ、しっかり繋げていくよう展開していきたいと思います。

 

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