約1年前の2020年7月、日本企業が所有・運航するばら積み貨物船「M/V わかしお」がモーリシャス南東部の海岸で座礁しました。その約10日後、同船からの重油の流出が確認されたことから、モーリシャス政府から環境非常事態宣言が出されました。
ピースボート災害支援センター(PBV)では緊急支援基金を立ち上げ、地域住民への支援活動を実施しているモーリシャスのNGO「モーリシャス環境保護・保全機構(EPCO)」との協働を続けています。今回は、7月上旬に実施したEPCOの副代表兼プロジェクトリーダーのDaksh Beeharry Panrayさんとのオンライン・インタビューの後編をお届けします。
Q: 現在実施している住民支援のプロジェクトに関する課題や進捗について教えてください。
Dakshさん: COVID-19がモーリシャス経済に与える影響は、当初想像していたよりも長く続いています。特に、海外からの観光客の入国が禁止されたことで、小型船の操縦士など、観光業に携わる人たちが大きな打撃を受けています。今回のプロジェクトに先立って実施した調査を通じて、経済的な収入を観光業に完全に依存しているコミュニティもあることが分かりました。
EPCOのプロジェクトでは、観光業や漁業に関わる住民に、狭い土地でも設置できる様々な収入手段を提供することを目指しています。COVID-19の影響が長期化していることから、住民への十分な支援を行うためには、より多くの資金が必要となります。わかしおの事故直後には、海外からの注目度も高く、多くの地元団体が環境や経済の復興プロジェクトに取り組んでいましたが、EPCOのように現在も長期的な復興プログラムを実施しているNGOは数えるほどしかありません。
幸いなことに、モーリシャス政府からの支援も得ることができ、養蜂や水耕栽培などのトレーニングの機会を無償で提供してくれることになっています。また、地元企業がコミュニティ支援事業の一環として、このプロジェクトへの出資に関心を示してくれています。このような形で地元からも支援が得られるようになったことはとても心強い変化です。
Q: PBVへのメッセージをお願いします。
Dakshさん: このプロジェクトには長期的な支援が必要になると思っていたので、最初にPBVから「プロジェクトをサポートしたい」という連絡を受けた際には安心しました。EPCOもPBVも、地球市民社会の防災ネットワーク(GNDR)のメンバーであり、災害に強い社会を構築するという、同じ目標に向かって活動しています。
わかしおの事故はモーリシャスの人々にとって未曾有の出来事でしたが、近年のモーリシャス周辺の海上交通量の増加を考えると、今後も同様の事故が発生する可能性があります。今回は海外から提供された専門知識や技術の支援を受けて環境危機を乗り越えることができましたが、今後も起こりうる事故に備えて、専門家の育成などを通じたモーリシャス国内の対応能力を高めていく必要があります。日本の人々の過去の災害経験から、私たちが得られる教訓もあるでしょう。
PBVとの協働は今回が初めてでしたが、今後も協力できる分野があると思いますし、他のプロジェクトでもPBVと一緒に事業を実施できるのを楽しみにしています。
インタビューを終えて
わかしおの事故を受けて、昨年8月に立ち上げたPBVのモーリシャス緊急支援基金には、個人・団体の方々から8,500件以上のご寄付のご協力をいただきました。この場をお借りして、PBV一同より心からの感謝を申し上げます。なお、EPCOの住民支援プロジェクトについては、今後もPBVのウェブサイトやFacebookページでご紹介していく予定です。
PBVでは、日本国内の災害支援に加え、今回のプロジェクトのような海外の災害被災地支援活動も実施しています。皆様の引き続きのご支援、ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。