モーリシャス 船舶座礁・重油流出事故から1年 ~支援先NGOインタビュー~[前編]

2020年7月、日本企業が所有・運航するばら積み貨物船「M/V わかしお」がモーリシャス南東部の海岸で座礁しました。その約10日後、同船からの重油の流出が確認され、海と沿岸地域に環境汚染を引き起こしました。その環境への影響の懸念から、モーリシャス政府は環境緊急事態を宣言し、国際社会に支援を呼びかけました。

 

事故に関する一報を受け、ピースボート災害支援センター(PBV)は、この事故に関連した活動を実施しているモーリシャスのNGOに連絡を取り、彼らの活動を支援するための緊急基金を立ち上げました。

PBVが連絡を取り、支援を続けているNGOのひとつが「モーリシャス環境保護・保全機構(EPCO)」です。

今年7月上旬、EPCOの副代表兼プロジェクトリーダーの Daksh Beeharry Panrayさん(左写真)とのオンライン・インタビューを実施しました。事故の発生以来EPCOの実施してきた1年間の取り組みやモーリシャスの変化を振り返るとともに、PBVと共に進めているコミュニティ支援プロジェクトについてお話を伺いました。今回は、インタビューの前編をお送りします。

 

Q: わかしおの事故について、どのように知りましたか?当時の、住民の皆さんの反応はどうでしたか?

Dakshさん: このニュースを初めて知ったのは、島の南東部に位置する町マエブール(Mahebourg)沖に大型船が座礁しているというFacebookの投稿でした。この地域の住民や漁師たちが、どうしてこんな船が島に近づいてきたのかと不思議に思い、この座礁のニュースは政府からの公式発表よりもはるかに早くソーシャルメディアで広まりました。
その約10日後、船からの重油の流出が確認、報道されると、住民はパニック状態になりました。EPCOは以前から漁業支援プロジェクトに取り組んでいたこともあり、慌てた漁業関係者から、この事態を何とかして欲しいという電話がたくさんかかってきました。重油流出が確認された直後から、モーリシャスの人々やNGOは、自分たちの髪の毛を切り、その髪の毛など地元で手に入る限られた材料でオイルフェンスを作ったり、沿岸や自分たちの船から油を回収したりと、環境を守るための活動に参加しました。
その後も事故のニュースはSNSでも広く共有され、世界的に知られるようになりました。モーリシャス政府は、フランスや日本をはじめとする各国の支援を得て、環境回復のための対策を実施することができました。

Q: この1年で状況はどのように変化しましたか?

Dakshさん: 政府による重油の除去作業は完了し、現在では正式なライセンスを持つ漁師であれば、事故のあった南東部の海岸でも漁ができるようになりました。しかし、重油汚染による長期的な被害を評価するためには、継続的な環境モニタリングが必要です。EPCOは昨年8月にクラウドファンディングを開始し、漁業関係者や観光業関係者への迅速かつ長期的な支援を行っています。
事故当時、モーリシャスには新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染者がいなかったにもかかわらず、他国での感染拡大を受けて、すでに観光客が減少していました。重油の流出事故を受けて、観光業に従事する人々の生活はさらに厳しくなり、観光客の減少につながるのではないかと私たちは考えました。
そこで、EPCOでは島の南東部沿岸の17のコミュニティで、重油流出とCOVID-19による経済的な影響を受けた人々に、代替となる、農業や養蜂、養鶏などの生計手段を提供するプロジェクトを計画しました。しかし2021年3月以降、モーリシャスではCOVID-19の感染者が増加したため、政府の規制に従いプロジェクトの開始を遅らせざるを得ない状況でした。大人数での集会や、長距離移動などは、ロックダウンの下では認められていません。7月下旬までには徐々に規制が解除され、生産手段の紹介やワークショップを実施するために村々を訪れることができるようになる予定です。

 

インタビューは[後編]に続きます(2021年8月4日頃掲載予定です)

支援プロジェクトの詳細については、EPCO作成の動画をご覧ください。

(本動画は、2021年5月14日に開催した PBV10周年記念イベント「 You’ll never walk alone. 私たちは動き続けます。あなたと共に。」でも放映しました。)