ピースボート災害支援センター（PBV）は、おかげさまで2021年4月19日をもって設立より10年を迎えることができました。この間、10万人を超えるボランティアやご寄付・ご支援をいただいた皆さま、1,000を超える企業・団体・行政の皆さまと一緒に多様な取り組みをさせていただき、被災された方々へのサポートをはじめとして、社会的な活動を創り出していくことができました。
あらためて心より感謝申し上げます。
10年前の今頃は、東日本大震災の被災地となった宮城県石巻市にある石巻専修大学のグラウンドにテントを張り、世界各地・日本全国から駆けつけたボランティアと共に活動する日々を過ごしていました。その後も国内外で起こり続ける災害の現場に足を運び、多くの皆さまからのサポートを受け、なんとか被災地での支援活動を続けることができました。
しかし、この10年でも気候変動の影響は非常に大きく、世界で起こる災害は年々増加し、日本でも10年前の1.5倍となりました。特に台風、豪雨、洪水の頻度と強度が増しています。2020年も九州地方を中心に各地で記録的な豪雨が続き、多くの尊い命が失われました。
多発する気象災害は、気候変動の要因となっている温室効果ガス排出による影響が大きく、市民一人ひとりの行動変容だけでなく、世界の政府レベルで具体的な対策をしなければ解決できません。このままいくと残念ながら100年後の未来には、数十年に一度といわれるレベルの台風や豪雨が、毎年発生すると予測されています。これは、もはや緊急事態として位置付け取り組んでいくことが重要です。
また日本は、地震大国でもあります。今後30年以内に70%以上の確率で、南海トラフ地震（被災想定：死者32万人）、首都直下地震（被災想定：死者2万3,000人）などの巨大な災害が発生します。他にも北海道沖、東北沖でも震度7クラスの地震が発生することが予測されており、災害が起こってから行動するのでは、対応ができません。
こうしたなか、セクターや組織の枠を越えたネットワークの役割に期待が寄せられています。その代表的なものが全国災害ボランティア支援団体ネットワーク（JVOAD）です。支援に関わるNPO・NGO、社会福祉協議会、協同組合、日本赤十字、企業等の組織が、地域・分野・セクターを越えて「連携の促進」および「支援環境の整備」をおこなっており、PBVもその運営に参画しています。2019年には内閣府（防災担当）とのタイアップ宣言も出され官民連携も進んでいます。
民間による取り組みが充実することで、民間支援セクターへの理解も深まり、様々な被災地で個々のNPOと行政との協働や公的機関からの支援依頼が増えるようになりました。PBVも、2020年に起こった「令和2年7月豪雨」では、熊本県・球磨村や人吉市から災害救助法の枠組みで支援要請を受け、避難所や災害ボランティアセンターの運営に対してスタッフを約20名を派遣しました。
2020年は、感染症対策やガイドラインの整備、人材育成などの準備をはじめ、当初よりコロナ過でも支援を実施できる体制を様々な関係者と構築しました。支援団体ができることを明確に公表し、現地との事前の信頼関係を築いておくことによって、現地からの支援要請がくる状況も生まれました。また、過去の被災地支援や平時の取り組みで繋がりのある地元NPOを通じた支援ができるなど、災害前の取り組みが活きる部分は多くありました。
一方で、コロナ禍で新たな課題も浮き彫りになりました。これまでは、支援要請の有無に限らず、独自に先遣チームを派遣し活動内容を決定してきました。しかしコロナ過では、地元自治体から発せられるメッセージの影響は大きく、独自の判断で先遣チームを派遣することを躊躇せざるを得ませんでした。
災害多発時代を乗り切るため、これからの10年も「人こそが人を支援できる」ということを掲げ、これまでの災害現場で築いてきた知見やノウハウと、皆さまからのアドバイスやご協力、ご支援を礎に活動を推進して参ります。
有難いことに、これまでに実施した研修プログラムは150を超える国や地域で、4万人を超える方に受講頂きました。また500を超える企業・団体・行政の皆さまと共に、被災地への支援活動や平時からの取り組みをおこなえる環境も整いました。
来月の5月14日（金）には、PBV設立10周年記念イベント「You’ll never walk alone. 私たちは動き続けます。あなたと共に。」をオンラインで開催予定です。詳細が決まりましたらご案内いたします。
これからも寄せられた信頼に応えられるPBVを目指して、皆さまと共に成長していけるよう尽力してまいります。
2021年4月19日
一般社団法人 ピースボート災害支援センター
事務局長 上島安裕
