激しさをます災害と気候変動 ~一人ひとりができること~

 

「今年はいつも以上に暑い日々が続きますね」
そんな会話が、毎年のようにニュースやご近所で話されるようになった気がしています。

災害支援に携わる私たちも、「今年は台風がよく来るね」「最近水害が多いなぁ」という声を昨今よく耳にします。

2020年7月豪雨災害で被災した熊本県球磨村の様子 @Social Good Photography,Inc.

世界各地で懸念される気温・海温上昇や異常気象、森林火災、日本ではとりわけ台風被害や水害などが、年々その脅威を増しています。この状況は、世界では「気候変動」という言葉からすでに「気候危機」や「気候非常事態」という言葉に取って変わり始めています。

気象科学データによると、地球規模での平均気温は年々上がり続け、日本国内でも既に基準値より約1度上昇しています。このペースで気温が上昇すると、今世紀中にさらに5.4度上昇する可能性があるという研究結果も報告されています。たかが、5.4度と思われるかもしれませんが、地球の温暖化は海水温も上昇させていきます。海水温が高まると、台風は多くのエネルギーを得て、強力になります。また、大量の水蒸気は大雨を降らす原因になっていきます。

 

地球環境への負荷によって気候変動が激化し、新たな災害や異常気象が頻発してしまうのを防ぐためにも、社会のあらゆるレベルで対策を取り、気候変動の問題解決のために協力していく必要があります。

災害支援の現場においても、近年気候変動問題と自然災害との関連性を重要視する気運が年々高まってきています。災害の被害を減らすために日頃から準備したり、流域の水循環に即した「水災害適応型都市」づくりの推進など、深刻化する局地的な豪雨や洪水、渇水・土砂災害に対して、被害を軽減する方策はもちろん重要です。同時に、大量の温室効果ガスを排出する化石燃料に依存した経済活動や消費行動など、わたしたちの日々の生活行動を見直し、根本的な気候変動対策への緊急性が注目されるようになってきました。

 

そんななか、先日ピースボートグループでは「気候変動問題フォト・アクション週間」を実施しました。

国際NGOピースボートは、気候変動問題の解決のための具体的な取り組みの一つとして、アル・ゴア元米国副大統領主催のクライメート・リアリティ・プロジェクト(Climate Reality Project: CRP)を後援しています。

CRPは、教育や草の根のリーダー育成を通して、気候の危機に対して声を上げていける人材を一人でも多く増やそうと、これまで150ヵ国以上の国・地域から27,000名を超える人々にトレーニングプログラムを行っています。昨年10月、このプログラムにピースボートグループより十数名が参加し、ピースボート災害支援センターからもスタッフ3名がトレーニングを修了しました。

CRPのリーダーシップ・トレーニング(左) トレーニングを受けたピースボートグループのメンバー(右)

 

CRPが毎年開催している、世界各国で気候変動のキャンペーンを同時多発的に行う「クライメート・リアリティ世界同時アクション(24 Hours of Reality)」が、10月10日と11日に実施されました。CRPのトレーニングプログラムに参加したメンバーが中心となり、このプロジェクトの一環として「気候変動問題フォト・アクション週間」を行いました。

気候変動問題の解決へのアクション写真が沢山集まりました

 

エコバックやマイボトルの持ち運び。
移動にはできるだけ徒歩や自転車を使用したり、二酸化炭素の排出を抑える電気自動車(EV)を選んだりする。
地域のリサイクル回収やコンポストでゴミを削減。
合成洗剤を使わない洗濯。
カーボンフットプリントを考え、環境負荷を減らした食事に工夫する・・・

気軽に参加できる「気候変動問題フォト・アクション週間」では、日頃の生活の中で取り組んでいる温室効果ガス排出削減のための行動を、スマホのカメラなどで撮影して報告し合いました。1週間の開催期間中に、数十名から沢山のアクション写真や気候変動問題への取り組みに対する想いが寄せられました。

「こんなに多様な方法があることに驚いた」
「こういう機会がある事で、改めて一人ひとりがちゃんと行動できる事を体感できた」
「自分ひとりでは到底変えられないかもしれなけれど、みんなで意識を変えていけば気候変動を止められるかもしれない、と希望を持てた」

このアクション週間を通して、「みんなで気候変動問題への解決に取り組んでいる」という共通認識や共通の目標を持つきっかけをつくる事ができました。なによりも、ひごろ身近なことからできるアイディアが共有できました。

 

球磨村で活動する避難所支援のスタッフたち @Social Good Photography,Inc.

災害支援の現場でも、一人ひとりの具体的な行動が重なって繋がっていくことで、被災地がまた復旧・復興をしていくとても大きな力となっていきます。一人では全てを変えていく事は難しいかもしれないけれど、志と力を合わせればより良い方向に向かっていくことができます。

 

災害が起こってしまったらどうしよう。

災害が起こる前にできることは何だろう。

 

気候変動に対する小さな取り組みも災害の被害を軽減していくことに繋がっています。具体的に考え行動する一人ひとりが集まり繋がることで、地域でも地球全体でも自然や人と共生しやすい社会をつくっていけると思います。