被災地の現場での学びを、将来の災害対応や防災・減災に活かすため、これまでもレベルや対象に合わせた研修内容を考えて開発・実施してきましたが、この度、新しく『災害VCマッチング体験カードゲーム』のメニューが増えました。災害ボランティアセンター(災害VC)の運営者を対象とした、グループディスカッション形式のワークショップです。
災害時に被災された方々のニーズ(困りごと)とボランティアをつなぐのが災害VCの役割。災害VCには、毎日被災者からのニーズが寄せられます。多くの個人ボランティアは、災害VCで受付けをすることで作業を割り振られ、被災者宅や避難所などの現場に向かいます。ニーズとボランティアのマッチングという機能です。災害VCの運営がスムーズであれば、現場でのボランティア活動もスムーズになります。
各市区町村で異なることがありますが、災害VCは社会福祉協議会(社協)が設置・運営を担うことが一般的です。被災規模によっては、かなり大掛かりかつ中長期でセンターの運営が必要になるため、社協職員の災害VC担当者はもちろんですが、担当以外の職員、地域のボランティア、遠方の社協職員・NPOや支援団体が応援として運営に加わることもあります。
熊本市社会福祉協議会が運営した熊本市災害ボランティアセンター(2016年5月)
ただ、全国に約1,900ある市区町村社協に、被災地での経験やノウハウを持った職員が揃っていることはむしろ稀なこと。実際には、手探りで災害VCを立ち上げ、毎日発生する目の前の出来事に追われながら運営しています。PBVも、避難所サポート、炊き出し、泥かき・清掃といった直接的な支援活動のほか、各地で災害VCの運営サポートにも関わってきました。
熊本県西原村災害ボランティアセンターでのサポート活動(2016年6月)
災害VCに関する研修は、運営主体となる社協職員の立場を持つ講師が務めるべきなのかもしれませんが、PBVで行ってきた経験が役立つならと、これまでも全国各地の社協から職員やボランティア向けに研修をさせていただくことがありました。今年度からは「赤い羽根福祉基金」の助成金を活用し、全国の市区町村社協からの講師派遣依頼に対して、講師の交通・宿泊費を一部免除できることになったこともあり、これを機に災害VCの運営者に向けた新しい研修ツールを開発した、という流れです。
先日は、「東京ボランティア・市民活動センター(TVAC)」との共催で、この「災害VCマッチング体験カードゲーム」を実施。東京都内はもちろん、関東近県の社会福祉協議会(社協)やボランティアセンターの職員、NPO/NGO関係者など約70人が参加してくれました。
ゲームは、進行役から渡される被災者からのニーズカードの内容を把握し、机に並んだたくさんのボランティアカードを選んで貼り付けていくというもの。途中で、クレームを受けたり、ケガ人が発生したなどのハプニングも起こり、その対応方法なども考えてもらいます。
また、災害VCを立ち上げた当初、大人数のボランティアがやってくる大型連休、数ヶ月が経ち災害VCの閉鎖も視野に入れる時期などのフェーズの移り変わりも体験してもらいます。
アンケートからは、「頭ではわかっていたけれど、具体的に次から次に判断を求められるのだと実感できた」「・具体的な事項に関する内容だったので、実際の訓練等にとても役立つと思った」などのご意見をいただきました。ゲームの改善点に関するコメントも反映しながら、もっと充実して分かりやすいツールに落とし込んでいきたいと思っていますが、そのためにもご依頼に応じて、各地で実践していくことが大切だと考えています。
PBVでは、災害VC運営予定者を対象には、この「災害VCマッチング体験カードゲーム」だけでなく、災害VCの設置・運営訓練での講評などに講師派遣も行っています。また、地域住民や個人を対象にした「わが家の災害対応ワークショップ」「災害ボランティア入門」「リーダートレーニング」、自主防災組織や地域NPOなどのグループを対象にした「支援を活かす地域力ワークショップ」などの既存の研修メニューも引き続き実施していきます。
全国の社会福祉協議会の災害VCご担当者の皆様、“被災者中心” “地元主体” “協働” を実現する災害VCの運営に向けて、ぜひ「赤い羽根福祉基金」を活用できる研修・人材育成事業の実施をご検討ください。
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