【ネパール地震被害】現地レポート(3)~地元ボランティアの為の環境づくり~

前回のブログ(現地レポート(2)~子ども達の学びの場を取り戻す~)では、被災してしまった学校の仮設校舎の建設や学習用品の提供に関して、お伝えしました。今回は、PBVが行っているもう一つの支援プロジェクトをお伝えします。

 

PBVの先遣隊がネパールでの調査活動に入った当初、地元パートナー団体である「CWIN (Child Workers in Nepal)」には、若者を中心とした多くのボランティアが駆けつけていました。しかし、通常は子ども支援を行っているCWINとしては災害支援に関わるボランティアの受入れや運営、安全管理に苦慮していました。

これまでに、災害ボランティアセンターの運営サポートや災害ボランティアの育成を行ってきたPBVでは、そのノウハウを活かせるのではないかと考え、先遣スタッフの一人として現地入りしていたセイフティオフィサーを中心に、CWIN職員向けのレクチャーを行いました。CWINの事務所に集まっていた若いボランティアの力を活かしながら、スムーズにかつ安全に活動する為に行ったレクチャーは、職員からも良い評価を頂きました。その後は、CWINが独自に災害ボランティアセンターの立ち上げと円滑な運営ができるように、PBVとしては支援をする予定でした。

 

CWINボラ1 CWINボラ2

 

ちょうど同時期に、Ministry of Youth and Sports(青少年スポーツ省)が、甚大な被害を受けた14の郡に災害ボランティアを派遣する必要があると発表しました。現地で協働している日本の国際協力NGO「シャプラニール」からPBVに声がかかり、まさにボランティア派遣の仕組み作りを立ち上げようとしている青少年スポーツ省に対し、これまでボランティア・コーディネーションに従事してきたPBVからの助言を求められました。PBVは、過去に培ってきたボランティアセンターの運営のノウハウや具体的なガイドラインなどを提供しました。

ボランティア組織化のニーズがネパールで高まってきていることを再認識し、PBVが実施するトレーニング参加者をCWIN職員に限定せず、外部からも募ることにしました。CWIN、シャプラニール、さらに青少年スポーツ省と協働して、ネパールの現地事情に合わせた2日間に渡る災害ボランティア・コーディネーションのトレーニングを実施しました。

 

トレーニング1 トレーニング2
トレーニングには、ボランティアのコーディネーションに仕事として携わる、地元団体の職員約30名が参加しました。災害支援のユースボランティア派遣の必要性を提唱した、青少年スポーツ省の大臣も開会挨拶に駆けつけました。

普段からボランティアの力を借りて活動している団体は多い一方で、災害時の対応経験がない団体が多く、日本の災害ボランティアセンターの仕組みや、団体間の連携の事例が非常に参考になったようでした。ボランティアの活動に関して、安全管理やリスク管理、さらには心のケアなど、今までここまで多くを考えたことはなかったという声もありました。

 

トレーニング5 トレーニング6

 

 

トレーニングの最後には、参加者が各団体に持ち帰ってやるべきことを、具体的な行動計画に落とし込みました。安全・リスク管理の概念を個々の団体に持ち帰り、災害ボランティアの受け入れの体制を体系化することが期待されます。さらに、各団体職員がトレーニングに参加した成果として新しいネットワークが結成されました。今後も団体同士での情報交換や、それぞれの得意分野を活かした相互トレーニング、またリソースが不足した時の助け合いが期待できそうです。早速、6月11日にネパールの一番北東にあるタプレジャング郡で発生した土砂崩れ災害で、ネットワークのメンバーが連携して被災者を支援するために動き出しています。

トレーニング3トレーニング4

 

 

今後の課題は、今回のトレーニングに参加した支援団体の職員が、さらに普段から繋がっている団体も含めた、団体間のコーディネーションが大切になってきます。災害時に支援が重複するのを避け、団体の得意分野を活かすためには、団体同士が連携し、情報共有をおこなえるような仕組みづくりを平時から構築する必要があります。これは、ネパールに限らず日本でも抱えている大きな課題です。

 

トレーニング7
これから、この新しいネットワークの成長を見守りながら、国連のクラスターミーティングで、災害ボランティアとそのコーディネーションの重要性を働きかけていきたいと考えています。

 

※災害ボランティア・コーディネーション・トレーニングおよび災害ボランティアセンター運営サポートのプロジェクトは、CWS Japanとの協働で実施しています。