「仮設きずな新聞」「畑づくり」「ベンチ・プランターづくり」など、昨年10月から続けている石巻での仮設住宅入居者支援。そういったプロジェクトのニーズが尋ねるためにも、まず大切なのが住民の方々とのコミュニケーションです。今日は、市内の各団地を巡り、計600回を越えて実施してきたコミュニケーションの場「お茶っこ(お茶会)」のレポートです。
仮設チームの編成は、一週間ボランティアと長期滞在のスタッフやボランティア。1日の活動は朝の分科会から始まります。今日訪問する団地の基本的な特徴(入居者数、自治会の有無、他に支援に関わっている団体の情報、過去のお茶っこ参加人数や内容など)を頭に入れます。
「被災地の仮設住宅」と言っても、一言では括れません。石巻市内には全部で134の仮設団地がありますが、世帯数や周辺環境(お店や病院、学校が近くにあるないなど)といった物理的な違いはもちろん、入居までの経緯も違うので、コミュニティのつながりの度合いも様々です。
お茶っこは、なんといっても人と接する活動。「被災経験のない自分には、住民の方々と何を話していいか分からないし緊張する」という言葉は、参加するボランティアからもよく耳にします。だからこそ、朝の分科会を丁寧に行う中で、ボランティアに「一つひとつの団地、一人ひとりの仮設入居者によって状況や意見が違う」ということに気付いてもらえるよう心がけています。
団地に到着すると、さっそくお茶会の準備。
「一人ひとり違う」ということは、飲み物や食べ物の好き嫌いも違うということ。紅茶や緑茶、コーヒー、カフェオレなど、用意するドリンクも自ずと種類が増えます。
ちなみに、この辺りでは、お菓子だけでなくお漬物やサラダなどでお茶っこをするのが当たり前。
さあ、お茶っこの時間になりました。
コミュニケーションを図る上で、もうひとつ大事にしているのは、実際に手を動かしたり、身体を動かせる「何か」。「ご自由に、どうぞ話してください」と言われても、きっかけがないと困りますよね?折り紙や紙粘土、体操、絵本の読み聞かせなど、毎回違った「何か」があることで、ボランティアの緊張感を取り除き、住民の方々との距離を縮めていきます。
この日はお茶っこ+クッキー作り。最初は「ボランティアさんが作ってくれたら食べるわよ~」と言っていた住民の皆さんも、いざ始まると楽しそうにクッキー作りに加わってくれました。
現在、隔週での発行に切り替えた「仮設きずな新聞」もボランティアだけで全戸配布をするのは辞め、少しずつ住民さんの方々にも配布にご協力いただいています。お茶っこの際、その団地に必要な枚数をお渡しすることが多いのですが、次にどんな記事が必要とされるのかを伺う目的もあります。
「仮設きずな新聞」の発行は、現在エリアが増えて対象90団地。発行部数も5,000部を越えます。
お茶っこに全員が参加されるわけではなく、団地によっては圧倒的に少数だったりします。学校や仕事に出かけているという場合もありますが、もっと複雑な事情を抱えた方々も多くいらっしゃいます。お茶っこに参加していただける工夫もしますが、必ずしもそれが正解というわけではありません。「きずな新聞」の余白スペースに一言メッセージを副えたり、ちょっとした立ち話を大事にしたり。ボランティアが、こういった一人ひとりとのコミュニケーションを自主的に行っていくにも、朝の分科会やその後の反省会に意味があります。
コミュニティづくりが上手くいっても、そこは「仮」の住宅。団地によっては数年先にはまたそれぞれの土地に戻ってしまう方が正しいのかもしれません。一緒に活動してきたけれど、それぞれの判断で石巻を離れる支援団体ももちろんあります。仮設入居者支援は、結果が分かりやすい清掃作業などとは違い、ボランティアも日々できることを悩みながらの活動です。
それでも、現場で一つひとつ考えながら活動したからこそ、その難しさと大切さ、そして活動がこれからも続くことの必要性を身を持って理解してくれます。だからこそ、嬉しいことに、その後なかなか石巻に来れない過去の仮設チームのメンバーから、今もたくさんのお土産だったり手紙だったりが届くんだろうと思っています。
そういった小さな「嬉しい」がボランティアにとっても大きな励みになるのであれば、同じように、仮設に暮らす方々にだって小さな「嬉しい」が励みになっているのかもしれません。まだまだ創意工夫の毎日、頑張って続けていきたいと思います。