輪島と姶良をつなぐ「おたがいさま」クリスマスプロジェクト

2024年能登半島地震、そして同年9月には奥能登豪雨災害と記録的な被害が二度も発生し大きな困難に直面した石川県輪島市。

今もなお多くの方々が仮設住宅での生活を余儀なくされ、復興への長い道のりの途上にあります。しかし、そんな厳しい状況の中にあっても、PBVが設置運営する地域の交流拠点「まちのの間」には、毎日約40名の住民の方々が集います。お茶を飲みながら、とりとめのない日常の話を交わす。特別なことはないけれど、確かにそこにある穏やかな時間が、少しずつ積み重なっています。

この冬、「まちのの間」に集ってくださる皆さんと一緒に、ある特別なプロジェクトを企画しました。それは、2025年8月の九州豪雨で被災した鹿児島県姶良市(あいらし)の子どもたちへ、心を込めたクリスマスプレゼントを届ける取り組みです。

 

震災を乗り越えた「おたがいさま募金」から

このプロジェクトのきっかけは、「まちのの間」で生まれた、素敵な動きでした。

「少しでも運営に協力させて」「毎日来たいからね。ほんの気持ちだけど置いていかせて」そんな声とともに、「まちのの間」を訪れる方々から、寄付金としてお気持ちをお預かりすることが少しずつ増えていきました。

PBVとしては、そのお気持ちをその場で受け取るだけでなく、「次に困難に直面する誰かへつなぐ」という無理のない形で生かしたいと考えました。

そうした中で発生してしまったのが、2025年8月の九州豪雨でした。鹿児島県姶良市の竜門小学校は、大雨により校内に土砂が流れ込み、学童施設「竜門児童クラブ」が浸水して使用不能となる大きな被害が出ました。

本来であれば、学校のすぐ脇を流れる川に架かる橋を渡れば、短い距離で通えるはずの小学校ですが、被災により通学路が寸断され、遠回りを余儀なくされています。
現在は、橋の修繕が完了するまでの数年間、市費によるタクシー通学が続いており、子どもたちにとって「日々の当たり前」が大きく揺らぐ状況が続いています。

そこで、皆さまから託された「お互いさま募金」を、同クラブの支援として届けることを決めました。

写真:竜門校区コミュニティ協議会

自分たちも決して平穏な状況にあるわけではない中で、輪島と姶良という遠く離れた場所であっても、被災のつらさを知っているからこそ、相手を自分ごととして想う気持ちが生まれました。その真っ直ぐな想いがきっかけとなり、今回のクリスマスギフトが実現しました。

 

能登の「復興の物語」を詰め込んで

今回お届けするプレゼントには、単なる「贈り物」という枠を超え、輪島で続いてきた日々の営みや、そこにある想いが込められています。

一つは、輪島の特産品セットです。 度重なる震災や豪雨という厳しい状況の中でも、少しずつ仕事を再開し、歩みを進めてきた地元の事業者の方々による品々を選びました。それぞれの品には、困難と向き合いながらもう一度立ちあがろうとする人たちの時間が重なっています。

もう一つは、手作りのクリスマスカードとツリーのプレゼントです。 「まちのの間」に集う住民の皆さんと、町野の子どもたちが、遠く鹿児島・竜門の子どもたちの笑顔を思い浮かべながら、一つひとつ、手を動かして作ってくださいました。

「輪島から竜門の子供たちへ」。 同じように災害のつらさを経験してきたからこそ通じ合う、あたたかなエールがこのプレゼントには込められています。

 

姶良の子どもたちへ届いた「お互いさま」の想い

プレゼントを届けたのは、「まちのの間」の立ち上げから支援に関わり、輪島では住民の皆さんと顔の見える関係を築いてきたPBVの技術スタッフです。鹿児島では、姶良市において被災家屋の技術支援にも携わってきました。この日は、いつものヘルメットと軍手を外し、サンタクロースとトナカイに扮して、輪島からお預かりしたプレゼントに加え、「2025年九州豪雨 緊急支援募金」にお寄せいただいたご寄付を活用して購入したアニメDVDを竜門児童クラブへ届けました。

プレゼントを手渡す前には、能登半島での被災の状況や、そこで暮らす人々のことについても伝えました。

その話を聞いていた竜門の子どもたちから、「こんなに離れていても、想い合えるってすごいことだね」という言葉が、思わずこぼれました。
その一言が、この取り組みを象徴する場面となりました。

竜門児童クラブの子供たちから、能登の皆さんへ向けたメッセージも寄せられました。ありがとう!

 

支え合いの循環が、明日への力に

クリスマスイブの12月24日、能登からの想いが詰まったプレゼントが、鹿児島・姶良の子供たちのもとへ届きました。

「まちのの間」では、「私たちのことを思ってくれて本当にありがたい」と住民の皆さんがよく仰います。被災のつらさを知っているからこそ、人知れず傷つき、耐えている一人ひとりに向けて、想いを形にすることが何よりの支えになっています。

お互いを思いやる中で生まれる「支え合いの循環」が、日々の困難を乗り越えていく力になっていくことを、私たちは信じています。

なお、本プロジェクトには、「2025年九州豪雨 緊急支援募金」でお寄せいただいたご寄付の一部を活用させていただきました。

皆さまの日頃のあたたかいご支援が、地域を越えた支え合いとして、こうして一つの形になっています。ご寄付をお寄せくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。

 

 

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