2025年8月8日未明以降、九州各地で激しい大雨となり、河川の氾濫などによる浸水被害や土砂災害などの被害が発生しました。
ピースボート災害支援センター(PBV)は、8月9日に先遣スタッフを現地へ派遣。その後は継続して、物資支援、食事支援をおこない、8月16日から鹿児島県姶良市(あいらし)で本格的に家屋対応を開始しました。
姶良市では、床上10センチから60センチ程度の浸水が発生し、生活用品が濡れたり、生活スペースを奪われてしまったご家庭が多くあります。PBVの家屋対応では、暮らしの再建を「ともに考える」ことを大切にしています。物理的な応急復旧作業による「暮らし」の支援を入口に、住民一人ひとりの生活や思いに耳を傾け、その方に合った「安心」に繋がる支援活動を心がけています。
鹿児島県姶良市における家屋対応のニーズ
一般的に、水害が起こるとまず避難所に避難しますが、姶良市ではホテルや知人宅など、身近な場所へ自主的に避難された方が目立ちました。その後、市営住宅への一時入居や、申請にもとづく「みなし仮設」への仮住まいが進みましたが、そこに入れたからといって生活が落ち着くわけではありません。
また、冬を前に、いまだ床が無い家で在宅避難を続ける方や、みなし仮設から自宅に戻る見通しがたたない方もおり、生活が一変した被災者の方々は心の整理が追いつかない日々を過ごしています。
姶良市では200件以上の床上浸水が確認されていますが、そのうちPBVに寄せられた家屋対応ニーズは約50件にとどまりました。
技術ニーズが相対的に少なく見える背景には、鹿児島ならではの事情があります。桜島の降灰に日常的に向き合ってきた地域では、降ってきた火山灰を「自分たちで片づける」文化が根付いており、水害による泥も自力で片づけた方が多かったこと。また、鹿児島では大きな水害は30年以上ぶりのため、現在整備されている制度や支援の仕組みが十分に周知されておらず、どこまで相談できるのか分からないままご自身で作業を進めた方も多くいました。災害ボランティアセンターには「濡れた家財を出したい」といったお困りごとが寄せられていましたが、一方で、住民の方が泥出しを“ご自身で頑張ってしまった”ことによって、見えにくい被害が残ったままになっている家屋も少なくありませんでした。
見た目には乾いた家屋でも、床下や構造部分などに目に見えないダメージが残ることがあります。私たちはそうした“見えにくい困りごと”を住民の方と一緒に確認し、次の生活に安心してつなげていけるよう無理のない選択肢をともに考えています。

活用できる制度を使い家屋を修繕できれば、今後の生活再建に向けて、少しでもご負担を軽減できるはずです。PBVは、そのためのサポートを心がけながら、家屋対応をおこなっています。
PBVの家屋対応とは
家屋対応では、被災状況をふまえて床下からの水抜きや泥の撤去をはじめ、屋根の応急対応など被災状況に合わせた対応をおこないます。
それだけではなく、家の状況を一緒に確かめながら、どこに費用がかかりそうか、制度でどこまで補えるかなど、今できる現実的な方法を住民の方と話し合っていきます。
今回は鹿児島が激甚災害に指定され、災害救助法が適用されたことに基づく応急修理制度や、被災者生活再建支援法に基づく支援金が利用できる状況でした。けれども、そういった情報を得る機会が限られているだけでなく、知ったとしても実際の利用までには様々なハードルがあります。
PBVでは、被災状況をふまえて、「どんな選択肢があるのか」「今できることは何か」を住民の方と一緒に整理し、制度や保険を活用しながら、無理のない再建の道を一緒に考えています。

たとえば、水害が起こるととにかく床を剥いで泥を出す流れになりがちですが、剥いだ床や床組を直すのに200万円以上かかるのに、保険や制度により補償される金額お金を合計しても100万円程度で、残り100万円が持ち出しになってしまうということがあります。
そのような持ち出しが今後の生活再建を圧迫しないよう、家屋対応の際には「床を本当に剥がす必要があるのか」「制度や保険で補える部分と補えない部分はどこか」「再建の可能性を残すために、床板を剥がさずに床下にもぐって泥の搬出や断熱材の撤去をおこなうのがよいのではないか?」など、その方に合った実施内容を見きわめていきます。

