2022年のロシア軍による大規模軍事侵攻以来、ピースボート災害支援センター(PBV)はウクライナの病院への物資支援や、ウクライナから近隣諸国へ避難するがん患者の支援を行ってきました。
攻撃開始から3年が経過しましたが、残念ながら戦争はまだ続いており、多くのウクライナ国民がいまも非日常の中での生活を余儀なくされています。
リハビリ補助ロボットで支援
PBVが支援するウクライナの医療プロジェクト「UNBROKEN」は、リヴィウの病院群を拠点とし、裂傷や火傷を治療する外科病棟、リハビリテーションセンター、トラウマ克服のためのメンタルヘルスセンターなどを備えた複合医療施設で、負傷した市民の心と身体のケアをしてます。
PBVは、2024年11月からUNBROKENとオンラインのミーティングを重ね、患者の受入状況や医療設備について現地の状況を確認し、2025年4月にUNBROKENプロジェクトのメンバーで国立リハビリテーションセンターの現役医師であるリュボフ・コロシンスカ先生を日本に招へいしました。
今回の来日は、日本のリハビリ施設で活用されている最新のリハビリ治療の臨床現場を視察するとともに、ウクライナの病院での活用を視野に入れ、リハビリ補助ロボット「RE-Gait」の操作方法を理解するための研修を受けることが目的でした。
(リハビリ補助ロボット「RE-Gait」)
「リハビリ補助ロボット」というと大きな機械をイメージするかもしれませんが、「RE-Gait」はリハビリ時に足首や腰に装着する比較的コンパクトな装置です。脳の損傷などで歩行困難になった患者が、RE-Gaitを装着して1回20分程度の歩行訓練を繰り返し行うことで、歩行能力を回復させることができます。
研修を終えた後、PBVは「RE-Gait」2台をUNBROKENに贈呈しました。
2台のRE-Gaitは現在、コロシンスカ先生と共にウクライナの病院に到着しました。これから多くの人がRE-Gaitを活用したリハビリを経て歩行能力を取り戻し、元の生活に戻ることを願っています。
※これまでに企業や一般の方からお寄せいただいたウクライナ支援のご寄付を活用し、今回のプロジェクトを実施しています。
広島からウクライナのいまを想う
4月2日、コロシンスカ先生は広島市中心部にあるリハビリテーション・クリニックを訪れ、1日目の研修に参加しました。
このクリニックでは、リハビリ補助ロボットのRE-Gaitを活用し、ケガで歩行が不自由になった患者さんのリハビリ治療をしています。
クリニックでRE-Gaitの基本的な機能の説明を受けた後、コロシンスカ先生は自分の脚に実際に装着し、動作確認をおこないました。RE-Gaitは患者さんの状況にあわせて機能を選択したり調整したりすることが可能な装置で、研修を通してさまざまなモードを試し、リハビリ治療を受ける患者さんと同じ歩行訓練を体験しました。
また、ウクライナの病院で実際に使用することを想定するため、PBVのスタッフにRE-Gaitを装着し、タブレットを操作して効果的な使い方を検証しました。
すでにRE-Gaitを使用している日本のクリニックの理学療法士さんとの間で質疑応答の時間がとれたことは、今回の研修の大きな収穫となりました。研修を受け入れてくれたクリニックの協力のおかげで、限られた時間の中でロボットの使い方をマスターすることができました。
1日目の研修後、コロシンスカ先生とプロジェクト・メンバーは広島平和資料館と平和記念公園を訪れ、原爆の影響や被爆者の活動、日本と広島のこれまでの平和への取り組みについて学びました。
前日の夜には被爆者の方に直接会い、彼女とその家族の生い立ちや、平和へのメッセージを世界に伝える被爆者の証言の活動を学ぶ機会にも恵まれました。
研修の様子はNHKのインタビューでも取り上げていただきました。
※コロシンスカ先生の来日レポートは、本記事にて随時更新していきます。
ウクライナ支援【最新記事】はこちら
~ウクライナへの大規模な攻撃開始から3年(2025年)~
前編:未だ叶わない停戦
後編:ウクライナ国内での医療支援事業を準備中