西日本豪雨から4年
岡山、広島、愛媛の3県を中心とした14府県で300人以上(災害関連死を含む)の尊い命が犠牲となった西日本豪雨。「平成最悪の水害」と言われた災害から、ちょうど4年が経ちました。
PBVは、甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町にて、発災直後から多くのボランティア、そして地域の方々とともに支援活動を行ってきました。
フェーズが変わり復興期を迎えたいまも、自治体組織や民間支援団体等と連携し協力を得ながら、地域コミュニティの再建支援を継続しています*。被災により水没してしまった備品の提供や、地域の住民の方々が安心して暮らせるまちづくりのための防災・減災研修の実施を行っています。
* 本事業は、ジャパンプラットフォームからの助成金を活用して実施しています。
出水期に入り、地域住民の防災への意識が一層高まってきています。今回は、5月末から7月に行った、以下3つの研修についてご紹介します。
- 「防災・減災に繋げる重機ワークショップ」
- 「BCPセミナー – 地域で福祉・介護事業を支えるには?」
- 「楽しく防災を学べる!ecoサイエンスショー」
防災・減災に繋げる重機ワークショップ
5月末から6月上旬の週末4日間で、地縁組織や地元NPO、自治体などと共に「まび重機ワークショップ」を企画・開催。19名が一連の講座に参加しました。
内容は「地域住民の方々を対象に、被災地での重機作業の基礎を学び、小型車両系建設機械(整地等)操縦も実習して修了証を得られる」というもの。
西日本豪雨では、真備町内の約5,500棟の建物が全壊や半壊の被害にあいました。災害時、重機を使って土砂や漂流物の除去などができる地元の担い手が増えること。それは、地域の災害対応の大きな力となります。
また、河川敷の整備を重機で行えるようにすることも、このワークショップの大きな狙いの一つです。というのも、河川敷の状態が良好でないと河川氾濫に繋がるからです。
事実、災害時の高梁川・小田川の河川敷は、樹林が生い茂り草木が堆積していました。豪雨の前から河川氾濫の危険度が高まっている状態だったのです。
現在、国と倉敷市が提携し、地域が連携して河川を整備するプロジェクト*を積極的に進めています。近い将来、重機の修了証を受け取られた方が、平時は河川整備、災害時には重機で復旧活動。そのような持続可能な形で取り組むための方法が模索されています。
(*詳しくは、前掲ブログの「箭田地区まちづくり推進協議会」による河川整備の取組みをお読みください。)
「河川整備」と「災害への備え」を兼ねた重機の活用に今後も大きな期待が寄せられています。PBVは引き続き、地元団体やノウハウを持った支援団体などと連携しながら、真備町にて重機を活用した研修事業を継続していきます。
BCPセミナー – 地域で福祉・介護事業を支えるには?
6月29日には、磯打千雅子さん(香川大学 IECMS地域強靭化研究センター 特命准教授)を講師としてお招きし「事業継続計画(BCP)」の研修ワークショップを実施。主に介護・福祉事業者を対象とし、30名が参加しました。
「BCP」とは、災害などの緊急時に組織がその事業を継続できるように、具体的で実行性のある復旧方法や、手段を事前に取り決めておく計画のことです。介護・福祉事業所においては、2024年までに策定することが義務付けられました。
先の水害によって真備町で亡くなられた方51名のうち、その8割以上が要配慮者の方々でした。だからこそ、災害が発生したときに要配慮者の命や生活を支えるため、福祉や介護サービスを地域で協力して持続・復旧していくための備えや平時から横の繋がりがとても重要なのです。
しかし、実際の災害を想定することや、実効力のある復旧方法を作りこむには、机上の空論ではなく、行動に繋がるものでなくてはなりません。
被災を経験された方でも、いざ考えると「具体的にはどうやったらいいんだろう?」と多くの事業者が悩んできました。今回のBCPセミナーには、真備町で福祉・介護、または関連サービス業に携わる企業や自治体職員、地縁組織など多職種の方々が参加。ともに日常の動きの共有や水害時を振り返りながら、各所の事業継続や地域としての機能を継続していくための意見交換が積極的に行われました。
地域の災害対応の課題やお互いの強みや弱みを理解することで、個別ではなく地域全体で最適なBCPを考えるための貴重な機会となりました。
今回の場をきっかけに、PBVは今後も倉敷市真備町のBCP策定のサポートを続けていきます。
楽しく防災を学べる!ecoサイエンスショー
真備町では7月1〜4日の4日間、地域住民が中心となって創り上げたイベント「水害伝承の展示会」が開催されました。のべ1,820名もの方が参加するほど大盛況だったこの展示会には、地域住民や、発災後に復旧対応にあたった県内外の企業団体などから、1,000枚以上に及ぶ当時の写真が集められました。
「水害を次の世代に語り継いでいく」
被災した住民の想いが込められた行事となりました。
展示会の写真で当時を思い出し、涙する住民の姿もありました。
「あの時は片付けで精一杯だったので、やっと振り返ることができた気がする」
「他の地区であった出来事や物語を初めて知った」
などの声もありました。
このイベントでは展示会の他に、開会にあたって記念式典や合唱団による復興ソング、地元中学生たちが水害での歴史を紹介する朗読劇や語り部による講話もありました。
PBVは、展示会の3日目に、“らんま先生”という愛称で知られる環境パフォーマー・石渡学さんを招き「わくわくサイエンスショー」を企画・実施。
かねてより、まちづくりに関わる地域の役員や中心メンバーの方々などから
「水害から4年という時間が経つにつれて、住民の災害への危機意識の薄れが広がってきているのではないか?」という悩みの声を受けていました。
だからこそ、多くの地域住民が集まり、被災経験を振り返る「水害伝承の展示会」はとても貴重な機会でした。
また「大人だけでなく、若い世代や子どもたちにも防災・減災について学び伝えていきたい」。という地域の方々の思いを受け、次々に科学の力を使ったパフォーマンスを繰り出すらんま先生。防災をテーマとしたサイエンスショーは、80名以上もの参加者で大盛り上がり。家族連れで訪れた方々をはじめ、どの世代もわくわく楽しみながら防災について学ぶ機会を作ることができました。
参加者からは、
「写真だけだと見るのが辛かったけど、子どもと一緒にこれてよかった。楽しい思い出とともに豪雨災害のことも記憶してくれたら嬉しい」
「特に水の力について学べた。子どもたちが川と暮らす地域で育つ中で、川や水に興味をもったり、自分で考えるきっかけになる機会をいただけた」
「参加型で、子どもも私もとても楽しく学ぶことができて、面白かった!」
などの声をいただきました。
当日の運営には、地元の中学生も手伝ってくださいました。災害に強いまちづくりのためには「世代を超えて誰しもが少しずつ協力しあい支え合う、フラットな地域の繋がりづくり」が大切だと改めて学ばせていただきました。
災害の恐ろしさを忘れずに、今後も引き続き、防災・減災教育を通じて、真備町のコミュニティ形成をサポートしていきます。