国連防災世界会議に向けて [その2] HFA(兵庫行動枠組)とポスト2015防災枠組

現在の国連加盟国は「193」。これらの国々からの代表団、国際機関、国連認定NGOなどが仙台に集うのは、お互いの学び合いのためだけでなく、2015年以降の国際的な防災の指針「兵庫行動枠組2」を策定するためです。

国際的な議論は、どうやって進んでいるのか?
今回は、少し難しいですが、この「兵庫行動枠組2」についてご紹介します。

 

国連防災世界会議の第1回は1994年の横浜。第2回は、阪神・淡路大震災から10年目の兵庫・神戸。この第2回会議で策定され、その後、国連総会で正式に採択されたのが「兵庫行動枠組2005-2015」です。Hyogo Framework for Action の頭文字をとって、「HFA(エイチエフエー)」と呼ばれています。こういった国際会議で決められた文書などには開催都市の名前が付けられることが一般的で、気候変動に関する「京都議定書」なども1997年の会議開催都市が京都だったことによります。


2005年兵庫・神戸で行われた第2回会議関連事業のパンフレット。

 

ただ、同じように日本がホストした会議にも関わらず、HFAは京都議定書と比べると日本での認知度はまだまだ低いのが現状です。世界に一つしかない国際的な防災の指針で、「災害による人命および社会的・経済的・環境的資産の損失が大幅に削減される」ことが目的なので、災害に遭う可能性のある人にとってはやはり大切なものです。国連総会で採択される文書なので、実行するのは加盟国。強制力や罰則はありませんが、もちろん非常に大きな影響力を持つものです。

HFAでは、実行する上で優先順位の高い行動5つが書いてあります。

1)防災を国、地方の優先課題に位置づけ、実行のための強力な制度基盤を確保する
2)災害リスクを特定、評価、観測し、早期警報を向上する
3)全てのレベルで防災文化を構築するため、知識、技術、教育を活用する
4)潜在的なリスク要因を軽減する
5)効果的な応急対応のための事前準備を強化する

一つひとつの解説は省略しますが、例えば5)は「災害が起きてからの対応には限界がある。防災・減災の努力こそが被害を少なくする」という、平時の取り組みを強化するよう訴えているものですね。

 

HFAは発表されてから、この10年間で、特に日本のように独自の防災・減災の仕組みを持たない国にとっては、その国の防災に関する法律や政策をつくる動機付けになるなど、一定の成果をあげました。ただ、気候変動による災害発生のリスクが高まってきた時代性、防災インフラを整える経済力のない国で起こる洪水などの日常的な災害を予防する具体的な項目が少ない、要援護者などへの配慮や記載が十分ではない、などの課題も言われています。


HFAの評価やその後の取り組みについてまとめられたブックレット
(防災NGOの国際ネットワークである「GNDR」が発行)

 

これらの議論をまとめる中心は「UNISDR(国連国際防災世界戦略)」ですが、基本的には「自然災害」を扱う機関なので「人災」への準備もありませんでした。しかし、東日本大震災を考えれば、現実的には自然災害と人災が一緒に発生することもあります。縦割りではなく、現実に即して人災への対応にもしっかりと言及するべきだという意見も出ています。ここは、特にふくしまの経験が世界に活かされるべきでしょう。

 

「国連会議」と言われると、私たちには手の届かないもののような気がするかもしれません。ただ、国連側は、国という大きな動きだけではなく、地域で草の根で活動する団体にも積極的にパートナーシップを呼びかけています。国連経済社会理事会に登録している「認定NGO」は、それぞれの現場での活動を基に、こういった国連会議への参加や国際的な指針づくりに取り組んでいて、ピースボートもそのひとつです。さらに今回は「防災」というずっと力を入れてきたテーマということもあり、UNISDRからは「第3回国連防災世界会議」の公式パートナー(Organizing partners)の一団体にもなりました。確かに一個人ではなかなか難しいかもしれませんが、同じ志を持つ団体と協力しきちんと準備や対話を進めれば、国連会議に市民の声を反映させることは十分できる、と思えるようになってきました。


2013年5月に参加したUNISDR主催の「防災グローバルプラットフォーム会合」の様子。

 

来月には、「2015防災世界会議日本CSOネットワーク(JCC2015)」の一員として、第6回アジア防災閣僚級会議にも参加します。7月と11月には、ジュネーブのUNISDRで開催される来年3月の会議に向けた準備会にも参加する予定です。東日本大震災の現場で活動を続ける団体として、そこからの教訓を世界をきちんと共有することが私たちの宿題だと思っています。また後日、これらの会議の報告もお伝えします。

 

(その3.に続く)