東日本大震災から11年 伝え、聞くこと

3月11日、東日本大震災から11年

 

亡くなった方たちの冥福を祈りながら、東北の方たちの歩んできた道のりを想像する日。この日に何かを書くことはとても難しいと感じてしまいます。

それは一日一日を積み重ねてきての今日で、明日もまた日常が続いていくから、「3月11日という日だけを切り取らないでね」と、長く付き合いのある石巻の人たちに言われてしまいそうな気がするからです。

 

11年前、何度も巨大な津波が押し寄せ石巻の中でも最も被害が大きかった南浜・門脇地区は綺麗に整地され復興祈念公園になっています。植えてまもない若い木々の中心には、立派な「みやぎ東日本大震災津波伝承館」ができていました。

 

「みやぎ東日本大震災津波伝承館」を背に、子どもたちを案内する藤間千尋さん。写真:3.11みらいサポート

 

公園から旧門脇小学校に向けて少し歩くと、3.11みらいサポートが運営する伝承交流施設「MEET門脇」があります。津波の教訓を小さな子どもたちにも分かりやすく伝える工夫が散りばめられていて、中にはご遺族が提供した遺品も展示されています。

 

 

 

ここまでたどり着くのに、地元の方たちにどんなに揺れ動く気持ちや葛藤があったのだろうかと想像します。住めなくなった自宅跡地への思い、被害の生々しさが残る門脇小を保存するのかしないのか、復興祈念公園はどんな場所になるのか…。簡単には答えの出ないものばかりだったはずです。

そんな思いを抱きながら、県外から石巻に移住し地元の方たちと震災の伝承活動を続けている3.11みらいサポートの藤間千尋(ふじま・ちひろ)さんにお話を伺いました。

 

お話のプロではない普通のおじさんやおばさん

 

「語り部さんとして話している地元の方たちは、お話のプロではない普通のおじさんやおばさんなんですよ」と藤間さんは言います。

2011年から石巻災害復興支援協議会(支援団体の受け入れ調整を行っていた3.11みらいサポートの前身)の地元スタッフは、県外からやってきた支援者などに被災地の視察や震災の体験を語る取り組みを始めました。語り手は、地元のネットワークで少しずつ輪を広げていきました。2013年から運営する小さな資料館では、展示を見ながら留めどなく話が溢れ出す方がいて、藤間さんから「一緒に、やりませんか?」と声をかけたこともありました。

 

語り部として、すぐにお話できる人はそうそういません。

語ることは、背筋が凍るような体験や思い出したくないような記憶、針のように刺さっている後悔を溶かしながら言葉にしていく作業なのかもしれません。藤間さんは語り部となる方の体験に、何時間も耳を傾けることからはじめます。一緒に考えながら体験や伝えたい想いを形にしていきます。そして、生々しい体験が教訓へと生まれ変わっていきます。

 

「なんで自分は、あの時、もどってしまったのか…。でも誰しもがもどってしまうかもしれない。川を見ている人も、海を見ている人もまだまだ沢山いて、もどっている人も家を整理している人も沢山いて、安心しちゃったんだよね」

「正しい情報を得ていれば、違う行動をしていたかもしれない。ラジオをずっと聞き続けていたわけじゃなくて、最初の一次情報だけで動いていたんだ。後追いで、津波の高さとかがどんどん膨らんでいくとは思ってもいないくて」

「両親をなくしてね。命はとっても大事なんだ、だから今を大事に生きてほしいんだ。家族と離れて住んでいるなら連絡をとって、大事な人に大事だって言ってほしいんだ」

 

語り部の話には「二度と同じ思いを味わせたくない。すごく知ってほしいことがある」そのことは共通してます。

 

コロナ禍でオンラインを利用した語り部活動にも力をいれいてる。写真:3.11みらいサポート

 

 

語ること、耳を傾けることは互いに影響し合っている

 

語り部の語りは、回数を重ね時間の経過とともに変化していきます。そして、聞き手の疑問や知りたい思いにも影響を受けます。

あるとき藤間さんのもとへ、こんなリクエストが寄せられました。

 

「あの震災を経て、自分たちはどう変わったのか?それを教えてほしい」

なかなか厳しい鋭い質問です。藤間さんと語り部たちは対話を続けながら考えました。

 

ある語り部さんが言います。

「あの時、自分が“逃げろっ!”と言っても信じてもらえなかった…。なぜ、声が響かなかったのかを考えています。あの時は、地域で信頼されるほど、地域に入り込んでいなかったのかもしれません。震災後、いちから町内会に入って、ゴミ拾いや花壇の整備、高齢者の送迎など地域活動を始めました。地域で信頼される人になって、“逃げましょう!”って伝えたときに信じてもらえる人間になれるように。」

 

聞き手のリクエストや質問に応えることで、語り部も藤間さん自身もいろんな考えを深めることになったと言います。語り部は、聞き手からも影響を受けながら言葉を紡いでいきます。

 

「震災の話を伝えることは、怖い話をしているわけじゃない。未来へのポジティブな話をしていると思っています。語り部さんの話を、怖いとか、重たいとか、構えて聞かなくてもいいんじゃないかな。日本に暮らしていれば災害が起こるのは仕方がない、でも、災害が起こったとしても、『みんな助かって良かったね』と話していたいです。

語り部さんに聞いちゃいけないことは、ない気がします。聞かずに遠慮したために、災害が起こった時に、その人の命が脅かされるのだとしたら、語り部さんの本望ではありません。

聞きに来た方には、いま聞けなくても、いつでも連絡してね、と伝えています。

語り手と聞き手、お互いが影響しあっていい連鎖があるからです。それがまた、その先の命を救うことに繋がる可能性がると信じています。」

 

 

語り手と聞き手を繋いできた藤間さんの言葉に励まされて、また石巻に足を運んでみようと強く思いました。

今日も明日も、「伝え、聞くこと」は続いていきます。

 

 

写真:3.11みらいサポート

 

 


 

震災伝承交流施設 MEET門脇

開館日時: 日曜日~土曜日 10:00~17:00(最終入館16:30)

 休館日 : 毎週水曜日

 料  金 : 1人300円(税込)※高校生以下は無料

 所在地 : 宮城県石巻市門脇5丁目1-1  震災遺構・門脇小学校前

詳細は、こちらから

 

 

 

 

 

明日は、「東日本大震災から11年、石巻の風景」をお届けします。