2024年7月東北大雨、活動レポート

2024年7月25日からの記録的な大雨の影響で、山形県や秋田県などに土砂崩れや床上浸水などの被害が発生しました。
 
ピースボート災害支援センター(PBV)は、発災直後の7月28日にスタッフ2名を現地に派遣し、また、7月29日には緊急支援募金を立ち上げました。
 
 
 

発災1週間後(8月上旬)

発災後から現地入りしているスタッフは、避難所や社会福祉協議会、災害VC(災害ボランティアセンター)などからニーズを聞き取り、物資支援を実施しました。物資支援は100以上もの企業が加盟している「SEMA(シーマ)」からのもの。SEMAは、自然災害の発生時に物資・サービスをスピーディーに提供いただけるとても心強い緊急対応アライアンスです。
 
多くの方々は、避難を終えたら家に戻る予定で着のみ着のまま、しかし想像以上の被害で着替えなどができなくなってしまっています。
そのため、物資支援は
・衣類
・履物(サンダル)
・洗面用具(歯ブラシなど)
・寝具(備蓄が冬用の毛布のため)
などを中心に行ないました。
また、これまで水害対応にあたってきた経験をお伝えするため、情報共有も同時並行で行ないます。「床上・床下浸水した場合、どのような手順で復旧させるのか?」「復旧にあたり、こういった機材があると便利」などをお伝えし続けました。
他の支援団体とも情報共有しながら、支援にあたります。
 
 
 

発災2週間後

山形県酒田市

酒田市北青沢は、発災後、孤立していた集落のひとつです。住宅の1階がほぼ埋まるほどに、そして元の道がまったくわからないほどに土砂が堆積していました。
 
大雨発生時、住民の方々は近くの川の氾濫を注視していましたが、気づけば裏手の山から大量に土砂が流れこんできたとのことです。
「小さな山の小川だったのに。どこにこんなに土砂があったのか」​と今でも不思議に思うほど、一気に流れ込んできました。​この影響で数十世帯が被害に遭われました。
住民の方々の中には、さまざまな理由から避難所へは行かず、このような環境であっても自宅の2階で生活を続けている人がいます。しかし​断水のため、小川の水でトイレを流したりなど、不便な生活が続いています。​被害がほとんど報道されていない山間部ですが、住民の方に「被害をもっと知ってほしい、広めてほしい」とご案内いただき、この場所を調査することができました。
​緊急期におけるひと通りの物資は揃い始めましたが、避難所や在宅避難など、長期的な避難生活に合わせた物資は現在も十分ではありません。
 

山形県戸沢村

戸沢村にて、家屋対応の支援を開始しました。なかには3メートルもの水に浸かった地区もあり、ボランティアや支援団体が懸命な復旧活動に取り組んでいました。
 
 
この水害では、最大150人ほどの避難者が避難所で生活していましたが、大雨から2週間が経過した現在、避難生活者は100人弱まで減少しました。しかし、その減った50人の住民全てが、復旧した家に帰れたわけではありません。親戚を頼って避難所を出た方、生活スペースに泥が残る家に戻り、在宅避難を続けている方など、不自由な生活を強いられている住民がたくさんいる状況です。
実際、被災した地区を歩いていると、家の前で呆然と立ち尽くす高齢の方を見かけました。家に戻ってみたものの、一階の床上には泥が残り、腰を下ろす場所すらないのが現状です。また、水害後、悲しいことに土足で家に上がることが当たり前になっています。まずは、土足で家に上らなくてもよいように、その当たり前の前の状態にまで戻さなくてはなりません。
 
 
戸沢村役場で行われた危機管理室との会議では、社会福祉協議会、そして早くから戸沢村に支援に入られて主に重機対応を行っているDRT山形さんとともに出席し、村民の疲弊した状況、生活再建に向けて制度を最大限活用できるようなアプローチが必要であることなどをお話ししました。
さらに、豪雪地帯である戸沢村特有の家屋の構造(一階部分が車庫や納屋のようになっている)が、罹災証明書の判定に不利に働く可能性があることなどを課題として共有させていただきました。
 
 
家屋対応は、その場の作業だけでなく、被災者の方々が生活再建に向かって歩めるように、制度などの情報を的確にお伝えすることが重要です。そして、おざなりにされがちな在宅避難者の生活環境改善も忘れず、これから来る冬に向けた寒さ対策も視野に入れた包括的な対応が必要です。
これらのことは、行政や社会福祉協議会、民間団体との連携がなくては成り立ちません。
 
 

発災3週間後(8月中旬)

水害の被害を受けた家屋は「カビ」との戦いでもあります。濡れてしまった床下、床、壁、天井など、何も対応しなければ、状況によってはカビが蔓延し、健康被害に繋がる可能性があるからです。
山形県戸沢村で実施している「家屋対応支援」では、まずは被害にあわれたお宅を訪問。被災状況を確認し、今後うけられる制度などを含めどのような対応が効果的なのかを検討します。
その後は、段階を追って床下にもぐりこんだり。床下にサーキュレーターを設置し乾燥を促進したり。やむを得ない場合は天井や壁をはがして濡れたままの断熱材を撤去したり。必要に応じて消毒なども行うことがあります。
 
暑い日が続いていますが、あっという間に厳しい寒さがやってきます。断熱材を撤去するということは、逆に言えば寒さ対策も撤去していると言えます。
現地担当者はこう言います。
「濡れた断熱材をとって、はい終わり。ではなく、住民の方が置かれた状況に合わせた対応を選択し、間近に迫った越冬対策も同時に見据える必要があります。その辺も住民の方とお話ししたうえで、今、何ができるのか。をお伝えしています」
 
 
 

発災4週間後

引き続き、床下の乾燥確認など、家屋対応支援を継続しています。
発災後「り災判定」の結果や利用できる制度がわからない間は、家屋の修繕の方向性を決められません。そのため、できる限り床板を外さず、最小限の開口口から道具と共にほふく前進で潜っていきます。
 
 
 
限られたスペースに加えて、厳しい暑さです。あまり長居したくはありませんが、的確な目線で作業をしないと意味がありません。
​たとえば、住家ではなく、制度の対象にならない商店から消毒のニーズがあった場合などは、建物再生にむけて致命的な見落としがないよう、消毒を進めるケースもあります。
 
一通り作業が終わって、床下から上がってきたとき。「ついに戻ってきたぞ!」というような、なんともいえない安堵感があります。
 
 

発災1ヶ月後(8月25日)

大雨から1ヶ月。
日テレNEWSで、なかなか報道されない発災からしばらく経った現地の様子が丁寧に紹介されました。
​その中で「全然復旧とか復興とかそういった話ではなく、まだ被災直後という感じだと思う」と、現地滞在中のPBVスタッフ・川村がコメントをしています。
 
▼日テレNEWS1 リンクはこちらから
 
 

発災1ヶ月半後(9月中旬)

山形県戸沢村では一階が浸水し、床を剥がしたまま厳しい冬を迎えなければならない住民の方々がいます。そのため、私たちは合板で仮床を張るなどの越冬に向けた支援を急務として、社会福祉協議会や村役場をはじめとする関係各所と調整し家屋対応の内容を検討しました。
 
そして今回、コネクトさんの調整のもと、男鹿フェスさんから戸沢村への支援として、仮床張りに必要な構造用合板を200枚ご提供いただきました。
 
 
さらに、この合板の製造元は、2023年の秋田市大雨災害でも多大なご支援をいただいた秋田プライウッド株式会社さんです。
皆さまのお力をお借りし、私たちは戸沢村の皆さんと共に力を合わせ、この困難を乗り越えようとしています。
 
 
また、SEMAを通じてJackery Japanより「Jackery ポータブル電源 2000 Pro」×3台を寄贈いただきました。支援継続の中とても心強いです。
 
▼記事リンクはこちらから
 

発災2か月後(9月25日)

大雨災害から2ヶ月が経過した、山形県戸沢村。その間、避難所での生活を余儀なくされてきた被災者の皆さんも、ようやく応急仮設住宅への入居が始まろうという頃です。
しかし、新しい仮設住宅が用意されているものの、住み慣れた自宅と比べれば明らかに狭く、不便を感じることも多いことでしょう。また、被災された方の中には、「みなし仮設」を選ばれる方もいらっしゃいますが、いずれにしても、最上川と共に生きてきた戸沢村の人々にとって、新しい環境での生活に慣れるのは大変なご苦労があるかもしれません。
 
そんな中、村では「支え合いセンター」の設立に向けた動きが進んでいました。このセンターはただの窓口ではなく、被災者一人ひとりの状況に寄り添い、新たな環境での不安や悩みを丁寧に伺い、適切な支援策や制度をご案内する役割も担います。
また、自宅に住み続けることを選択された方も、仮設住宅にお住まいになる方も、誰一人取り残されることなく、安心して新しい生活を始められるようなサポートが求められています。
これまで私たちPBVは、家屋の調査や応急対応を通じて、被災者の皆さんの声を聞き続けてきました。その大切な声を村と共有し、被災された皆さんが安心して新たな未来を築けるよう、「支え合いセンター」の設立に協力しています。
 
 

発災3か月後(10月25日)

急に冬の気配を感じるようになった山形県戸沢村。肌寒さが増す中で、PBVは『床を剥がしたままの家屋に仮床を張る対応』を進めました。
あるエリアでは防災集団移転の計画が先行し、家屋再生に踏み切れない方々も少なくありません。​
結果として、最低限の修繕で済ませたり、災害救助法に基づく応急修理の制度を使わず、被災直後から何も変わらないまま冬を迎える家も多いです。
​そんな中、少しでも生活環境を改善するために、この仮床張りが必要不可欠な支援になっています。
特別豪雪地帯の戸沢村。厳しい冬を前に、私たちは被災された方々の生活環境改善に向けたお手伝いを続けています。
 
 
また、私たちが支援の現場で日々直面する課題のひとつに「意思決定が困難な方の意思を尊重する」ことの難しさがあります。

災害に見舞われることで、それまでの環境や日常が大きく変わることがあります。被災後の変化に伴い、新たな人生の選択を迫られる中でも、私たちはその方がこれからの人生をどう生きたいかを大切にし、共に歩む支援を目指しています。
これまで関わりを持ち続け、見守ってくださった地域の皆さんの思いを大切にしつつも、私たちは本人の安全や健康を最優先に考えながら、それでも意思決定を奪わず、応急修理制度などの住まいへの支援や、災害で適用された制度をはじめとして、できる限り自ら選べる選択肢を提供したいと考えています。
私たちの支援は、本人の尊厳を守りながら、共に未来を築いていくものでありたいと願っています。
 
 
 

戸沢村の災害ボランティアセンター閉所(10月31日

2024年7月25日の大雨による被害から、約3ヶ月にわたり地域を支えてきた戸沢村の災害ボランティアセンターは、10月31日をもって閉所となりました。これまで支援に携わってくださった皆さま、本当にお疲れさまでした。
その後は通常のボランティアセンターとして、被災した住民の皆さまの相談を引き続き受け付けるとともに、11月からは「地域支えあいセンター」が始動して生活再建を目指す皆さまのサポートが始まります。
 
 
「災害」という言葉は、時に人々の心に重い影を落とし、被災した方とそうでない方や、被災の度合いにより、見えない境界を作ってしまうことがあります。しかし、少しずつ日常を取り戻しつつある地域の中で、戸沢村の社会福祉協議会の皆さまはその狭間に立ち、被災した方々の心が取り残されることのないよう、懸命に支えてくださいました。今後も、「地域ささえあいセンター」の運営を通じて、住民の皆様を支え続けていかれることと思います。
 
 
戸沢村社会福祉協議会への道すがら、季節の移ろいを感じています。木々は鮮やかに紅葉し、山はうっすらと雪に覆われ始め、村では雪がこいや風除室の準備が進み、戸沢村らしい冬の風景が少しずつ顔をのぞかせています。
大雨の日から3ヶ月が経ち、被災された方々もそれぞれの選択のもとで、新しい環境での生活を始めています。しかしながら、私たちが日々訪問させていただく中で目にする、家の隅に今も残る泥に、心の中で決めかねている思いや葛藤が重なって見えることもあります。
そんな皆さんの心の隙間に寄り添いながら、村の未来が健やかであることを願って、戸沢村の皆さんとの時間を大切に過ごしています。
 
 

発災4ヶ月後(11月25日)

災害からの復興が進む中、住民の生活にはさまざまな影響が現れています。
たとえば、訪れるたびに増える家屋の壁の穴、濡れたまま放置された衣類、修理されないボイラー。これらの状況により、入浴ができずに困っている子供や高齢者、障害のある方も少なくありません。
自宅の損壊は、物理的な被害だけでなく、住み慣れた環境の変化を通じて、コミュニティや家族関係、日常生活のさまざまな側面として課題を浮き彫りにします。特に、社会的に弱い立場にある方々は、従来から抱えていた問題がさらに重荷となる傾向があります。
 
 
大雨の発生から4ヶ月が経ち、少しずつ日常が戻りつつある一方で、人々の表情にはまだ疲れが残っています。
 
「すぐ疲れる」「熟睡できない」「食べ物の味がしない」「気がつくと涙が出る」——被災の傷跡は目に見えるものだけではありません。心の中に深く刻まれた痛みや疲労は、時間が経つにつれて外からは見えにくくなります。そしていつしか、被災者自身も「前からこうだった」「我慢できるだろう」と自分の苦しさを飲み込んでしまうことがあります。
 
さらに、周囲から「もう普通の生活に戻れたのでは?」「それぐらい大丈夫だろう」「前からそうだったじゃないか」といった偏見や誤解が生じることもあります。私たち外部支援者の役割は、そんな見えない苦しみに気づきし、「そうじゃない、まだ疲れているんだ」「まだ傷ついているんだ」と言葉にして伝え続けることかもしれません。
 
しかし、地域を本当の意味で支えるのは地元の皆さまです。地元だからこそ分かるしがらみや土地の特性、地域への愛情があるからこそ、そこでの支援は外部からのものとは違った力を持ちます。私たち外部支援者は、いつかはその地を離れることになりますが、離れた場所からでも、皆さまの生活や復興をずっと見守り、支え続けることがてきればと思っています。
 
どうか皆さまがこれからもお元気で、少しずつ穏やかな日々を取り戻せますように。
 
※「東北大雨 緊急支援」は皆さまからのご寄付、日本財団の助成金を活用して実施してまいりました。心から感謝申し上げます。
 

 

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