女性視点の防災講習レポート@静岡「避難所あるある~東日本大震災の避難所から学ぶ~」

2023年7月29日、静岡県駿河区にて、女性視点での防災講習をおこないました。

駿河区では、自治会や町内会などの地域コミュニティをリーダーとともに中堅となって支える人材、そして、駿河区を応援する志をもって活動する方々を「駿援隊(すんえんたい)」と銘打っています。主体的に地域活動を行える人材を増やすため駿河区主催の研修を実施しました。

その一環で、PBVでは「避難所あるある ~東日本大震災の避難所から学ぶ~ 」として、最適な選択肢は何かなどを考えるワークを講義を交えながらお話しました。主に被災地の避難所・避難生活の実態と、それぞれのテーマに合わせてメリット・デメリットを把握し、自分だったらどうするか、そして被災者だったらどう感じるか、支援者だったらどう対応するかと様々な立場で考えました。

はじめに、「防災・減災」や「災害対応」、また「災害支援」を考える上で、最も重要なのは、どれだけ ” 想像 ” ができるかです。

その想像力を働かせる際に、人間は誰しも少しやっかいな心理的な特徴を持っています。それは、自分は大丈夫だと思う「正常性バイアス」と、みんなと同じ行動をとってしまう「同調性バイアス」です。

例えば、「あなたは災害が起こってから、避難先にたどり着くまでに『ケガをした』という想定をしたことはありますか?」

日本赤十字社がとても分かりやすい動画「不安が見えなくなるメガネ」にまとめているので、ご紹介しました。

 

『不安が見えなくなるメガネ』。あなたもかけていませんか?
まずは、自身や大切な人が助かること、そしてその先の避難生活を想像をもって対応していくことが大切です。

 

次に抑えておきたいのが、避難所の仕組みや機能の基礎知識です。

「どんなことを準備している?」
「どこに避難する?」
「避難所ってどんなところ?」
「避難所の機能とは?」
「避難所は誰が運営するの?」
「食事って提供されるの?」
などなど。基本的な仕組みや機能、考え方の認識がずれてしまうと、被災者のために必要な支援が行き届かなくなってしまいます。

 

これらを踏まえた上で、今回は女性ならではの困りごとや疑問に焦点をあて、「衣食住」を中心に、過去の被災地で実際におこった具体的なエピソードや解決策、工夫事例などをあわせてご紹介しました。

たとえば、洗濯や物干し、着替えはどこでおこなうのか。

避難所の物資には、本当に必要なものがあるのか。ない場合はどうしたらいいのか。物資を配布するときに、防犯や重労働の観点から男性が担当につきやすいが、生理用品や下着のサイズなどの対応はどのようにするのか。

その他にも、トイレの問題や安全面についてなど、解説を交えて、クイズ形式のワークを取り入れ実施しました。

※「衣食住」にあわせて課題や取り組み事例を紹介。(PBV資料を一部抜粋)
※使用及び写真の無断転載、複製、転用等はご遠慮ください。

 

120分の講座を終え、アンケートでは「満足」「大満足」という声を多くいただきました。この講座をきっかけに、地域の方々がともに学び、話し合い、自分たちで何ができるかを考えるきっかけとなれば幸いです。

 

今回の、静岡県駿河区地域の人材育成事業「駿援隊(すいえんたい)」の防災企画では、いつ起こるとも知れない災害に備え、平時から地域の繋がりや人材を育む「防災」の機会として、駿河区住民の方々などが参加しました。

女性目線の避難所対策に重きを置きましたが、たとえば「授乳室や乳幼児の更衣室に男性の保護者が入りにくい」などの課題もあります。そのため、女性・男性という性別的な分け方だけでなく、広くジェンダーを意識し、また、国籍や出身に関わらず地域の繋がりや共助を大事にする、地域のネットワーク強化を目指しています。

参加者も女性だけでなく、自治会長や区の職員など性別に関係なく、年齢層も20~70代と幅広い方々が参加していました。また、子連れによる参加を推奨しキッズスペースを設けるなど、多様な方が気軽に参加できる素晴らしい工夫がたくさん取り入れられていました。

様々な立場の方が、女性ならではの困りごとを知り、ともに考えることでより良い避難生活の環境を整えることに繋がっていきます。

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PBVでは、全国で防災研修・講座を実施しています。
基礎からテーマ別の研修をはじめ、それぞれの自治体や地域の課題に合った様々な研修のサポートを行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
https://pbv.or.jp/seminar/