災害ボランティアインタビュー Vol.6

「日本も海外もいろんなところを旅してきました。でもやっぱり、日本が一番ですね」

旅行好きな大学生、済川尚孝さん21歳は、日本の魅力を話しはじめると、どうにも止まりません。日本全国あちこちを回ってきたけれど、東北には来た事がありませんでした。だから今年の3月に、開通した新幹線で新青森まで行くことを楽しみにしていたといいます。震災が起きたのはその矢先のことでした。

済川尚孝さん、大学生

4/29 石巻でのボランティアに参加

済川さんは自称「活字症候群」というほど、新聞や本をよく読んでいます。だから石巻の状況も、知識としてはかなり知っているつもりでした。ボランティアとしてここに来たときも、はじめは新聞やテレビの報道とのズレはあまり感じなかったといいます。

ところが滞在3日目に、壊れた街並みの中で、泥かきと腐敗した魚の回収の仕事をしたときに気持ちが変わりました。

「壊れているけれど、住宅がまだたくさん残っていました。そして、そこに住んでいた人がずっと何かを探し続けているんですよ。それを見て、ただ街が壊れただけじゃない、津波で流されてしまっただけじゃないって思いました」

済川さんは、被災者の方の気持ちに触れて初めて、どんなに辛い思いをしているかを実感したと言います。

「人間の強みは忘れることかもしれません。もちろん被災者の方の中には早く忘れたいという人もいるでしょう。でも、復興するまではここで起きたことを忘れちゃいけないと思うんです。ここで起こっていることを忘れないように伝えていく。それは、ぼくたちボランティアの仕事なんだと思います」

彼は、タクシーの運転手さんから聞いた言葉が忘れられません。

「震災後は、毎日辛かったよ。でも今は、ボランティアの人たちが来て、毎日作業してくれる。それを『今日はここがキレイになったなー』って清掃が終わった所を見つけるのが楽しみなんだ」

済川さんは、今回ボランティアに参加してみて、学生が少ないことに驚きました。

「大学の友達に、ボランティアに行くと言ったら、関心を持つ子はいるんですけど、自分も行こうという人はいなかったんです。僕は今4年生なので、忙しいのはよくわかるんです。友人には大学院に進む人もいるし、就活中の人もいます。でも、少しでも現場に来て、見て、感じるべきなんじゃないかと思うんですよ」

同じチームになったボランティア人のメンバーは、自分以外はみんな30代の社会人だった。

「家庭を持って生活がかかっている会社員が来ているのに、養われている学生が来ないという無関心さが悲しいっすよね。自分たちがこれから世の中しょって立つ世代じゃないですか」

5月半ばに東京に戻った彼は、周りの友人に現場で起きていることを伝えたり、学生をボランティアに誘う活動をはじめた。

「東京でも頑張れることがいっぱいあると思います。僕ができることは、一人でも多くの学生を、石巻に送ることですね」