【PBV設立から9周年】 新型コロナウイルスとどう向き合うのか

一般社団法人ピースボート災害支援センター(PBV)は、4月で設立から9周年を迎えました。これまで私たちの活動を支えてくださったボランティア、サポート会員、企業、助成団体、協同組合、宗教法人、学校法人の皆さまに改めて感謝申し上げます。

 

災害は、まさに想定を超えた出来事をもたらします。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)は発見されて以来、瞬く間に世界中に広がりました。現在も感染者の数は増え続けています。日本でも感染が拡大し、私たちの健康や社会・経済の生活に甚大な影響をもたらしています。この感染症拡大は、既存の社会システムを危機的な状況に追いやっている世界規模の「災害」だと言えます。

 

そして、この新型コロナウイルスが存在する中で、毎年発生する気象災害や、時として起こる震災が同時に発生し、複合災害となることを懸念しています。日本で発生する災害の頻度を考えると、残念ながらその可能性は高いと言わざるを得ません。また、海外では各国へ渡航する際の制限が続く可能性があります。この状況は、被災された方にとっても、その方達を支える組織や個人にとっても、大変な困難をもたらすとが想定されます。

 

例えば、日本では指定避難所の多くは学校や公共施設です。体育館などの集団での避難生活は、「密閉」「密集」「密接」の環境に置かれやすく、感染拡大が懸念されます。一方で、感染を懸念して、被災家屋での在宅避難や車中避難なども増加し、健康被害が多く発生する可能性もあります。これまでに運用されてきた災害対応のシステムを変更していく必要が出てくるでしょう。また、支援者も、多くのボランティアが被災地に集まることによって、感染を広げてしまう懸念もあります。これまでPBVが大切にしてきた、「人と人が出会うこと」によって成立していた支援活動を見つめ直す必要があるのかもしれません。

 

日本赤十字社は、新型コロナウイルス感染症には、3つの顔があると言います。第1の感染症は「病気」そのもの、第2は「不安」、第3は「差別」です。目に見えないウイルスは、人から人へと移るため、不安や恐れを生み出します。そして、不安は時として「嫌悪」や「偏見」、「差別」をもたらし、社会を分断していきます。感染の有無や国籍、地域、職業、世代といった属性によって分断を助長する言動には注意が必要です。分断が生まれた社会では、苦しい状況にある時、お互いに助け合うことが難しくなります。

 

PBVでは、この9年間で多くの被災地域を訪れました。その被災地では、たくさんの悲しい出来事を見聞きしましたが、一方で、人と人の繋がりから、希望を感じる場面にも出会いました。私たちは、社会的な分断を乗り越えて、一人ひとりが協力できる支援の輪を繋ぎ広げていきたいと思います。新型コロナウイルスの状況は日々変化していきますので、感染防止に努めながら臨機応変に状況に合わせてこれまでの知恵や経験、ネットワークを駆使して、被災地域を支えていきます。

 

人こそが人を支援できることを信じて。

 

 

 

 

一般社団法人 ピースボート災害支援センター
事務局長 上島安裕