定期、短期で募集する一般ボランティアに加え、ピースボートでは企業や学校など、グループでの災害ボランティア派遣のお手伝いを行っています。もちろん寄付や自社製品の提供による支援の形もありますが、社員自らが被災地を訪れ、汗を流してボランティアに参加、会社がそれをバックアップする新しい企業CSRの動きが広がっています。
今日は、ピースボートでお手伝いさせていただいている企業ボランティアの中でも、いち早く、そして大規模に継続した派遣を続ける(株)ブリヂストンの皆さんの活動現場をレポートします。
この日の活動場所は石巻市の中心街から車で約1時間。 牡鹿半島の福貴浦から鹿立屋敷へ続く場所です。 ここ福貴浦は震災の影響で約1m~2mの地盤沈下が起きています。 その為、満潮時にはこのようにいつもの陸地が海にのみこまれていくそうです。
そこへ登場したのが、赤と白のユニフォームを着た人々。
彼らこそ 「支えよう東北 ブリヂストン復興支援ボランティアチーム」
(株)ブリヂストンがグループ会社も含め、 全社員から募った特別ボランティアチームです。 同社は、震災直後に被災地に対する支援金、そして同社グループ製品の自転車や寝具も寄贈しています。 しかし、それだけには留まらず、自社をあげて社員をボランティア派遣しよう という動きが始まり、結成されたのがこちらのチーム。ピースボートでは、石巻での活動現場をコーディネートなど、5月の第2班の活動からお手伝いさせていただいています。
社員ボランティアの皆さんも、特にたくさんの従業員を抱える大きな企業になればなるほど、普段の仕事場や部署はバラバラ。 この場で初めて顔を合わすなんて方々も。 しかしながら、そこは企業ボランティアの強みが発揮されます。同じ会社に属しているということで、 その理念やノウハウには共通のものを持っており、チームワークは抜群です!
この日の活動内容は、道路の側溝清掃。 津波発生時に泥やヘドロが道路脇の溝に運ばれ溜まってしまっています。以前も活動をレポートしましたが、これがまたヘビーな仕事。泥が詰まったままだと、生活排水がつまったり、雨の時には溢れ出てしまい、 それが悪臭にもなり、衛生的にも良くありません。 更にはそれらが乾き、粉塵となり、吸引してしまうと健康被害にもつながりかねません。
では、ここからは、ブリヂストンの皆さんによる側溝清掃の様子、ご覧ください。
その量、半端ではありません。
みんなで一生懸命、側溝の泥をかきだしながら土嚢袋に詰めていきます。
ここで発揮されるのがそのチームワーク力! ほとんどが初めてのボランティア参加とは思えない手さばきで、作業がどんどん進んでいきます。
時にはこんな笑顔も。
側溝の泥の中にはこのように帆立貝の殻もたくさん。。。 実はこれ、地元の漁師さんたちにとっては牡蠣の養殖に必要な道具なんです。 なので、痛んでいないものは再利用すべく、別で回収しています。
最終的に側溝はこんなにも綺麗に。
最後はきちんと蓋をして。とはいえども、その蓋が重い・・・!
これで、晴れて任務完了。 側溝は蓋に隠れて見えませんが、こういった目立たない作業一つひとつがとても大切なことなんです。
「さあ、終わり!」と思いきや、ここで地元の漁師さんから嬉しいプレゼントが! なんと実際に牡蠣の養殖現場を見せてくれるということに!
日常ではなかなか体験できないことに、皆意気揚々と船に乗り込みます。
船出を見送ってくれる漁師さんに手を振り… 船は沖に出て行きます。
と、突然、船が傾くくらいに皆さんが集まり始めました。 その視線の先は・・・
これがまさに牡蠣の養殖中の現場!
社員の皆さんも、ピースボートのボランティアも、真剣に漁師さんの話に耳を傾けます。
そして牡蠣を切り出す瞬間!歓声が上がります。
中にはこんな風に社是を掲げて記念撮影をする方も。
すっかり2日間でピースボートのボランティアとも仲良く打ち解けていました。
普段の業務ではなかなか体験することのできない、 ボランティアを終え、更には地元の人たちとの交流も終え、 帰路のバスに乗り込んでいきます。
「大変お世話になりました」 「本当にありがとうございました!」「また来てください」 お互いに声を掛け合いながら見送りの時を迎えます。 企業ボランティアの有難みをしみじみと感じさせて頂いた2日間でした。
と作業レポートはここまでですが、
実は作業の合い間をぬって、2人の社員ボランティアの方にインタビューをさせていただきました。
お一人目はこちら。 写真右の方で髙橋朗さん(42歳)
今回このボランティアツアーに参加するのは4回目という強者です。 5月の連休後の初めての参加を皮切りに6月7月、 そして今回と毎月参加されています。 普段は株式会社ブリヂストンの化工品の法人営業担当をされているということ。 株式会社ブリヂストンがグループ全体でボランティアの募集を募った時に 真っ先に参加を希望。 (ちなみにこの時、第2班から第5班までの同時募集だったそうですが、たった2日であっという間に定員が埋まったそうです)
「なぜ何回もボランティアに参加したのですか?」という質問に対しては、
「上司の理解と妻の理解があったからです」と爽やかに一言。
また、ご本人曰く、
「実際に、もし自分ひとりで個人ボランティアに参加しようと思っても、 仕事が忙しかったり、休みを取ることが難しかったりと、ハードルが高かったと思います。 しかしながら今回のように企業の後押しがあることによって、 ボランティアに参加するというハードルがかなり低くなったことも事実です。」
「実際に参加してみて、僕でも十分力になれるな。と思いました。 一人でも多ければ1mでも2mでも長い距離の清掃ができる。 そして喜んでもらえる人がいる。と感じました。 また、テレビで見る映像よりも、 こうやって自分の足を運んで現地を見ることがどれだけ大切かということも 感じました。」と。
「これからは、実際に会社がお金を出してくれたので 自分の見たこと、聞いたこと、そして体験したことを 一人でも多くの人に伝えていかなければならないと感じています。 少なからず、伝える説得力のある自分には成れつつあるのではないかと思います。 実は、妻も連れてきて見せたことがあるんですよ。」 と笑顔で答えてくれました。
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そしてもうお一人は齋藤景介さん(36歳)、今回のボランティアグループのリーダーでもあります。 普段はブリヂストンのブランド推進部社会活動課に従事されています。
「そもそも、このプロジェクトの始まりは震災から1週間後、社員のほうから ボランティアに行けませんか?という声が上がってきたからなんです。」 と齋藤さん。
「主には2泊3日で月に2回実施しています。 木曜日15時に、石巻市へ出発。金曜日は有給休暇もしくはボランティア休暇を取り1日活動、 土曜日に半日活動後、同日中に東京へ戻る、というスケジュールです。企業がボランティアの枠組みを後押しすることで、社員が参加するハードルはかなり下がりました」 と。
「石巻でのボランティアに参加してみてどうでしたか?」という質問には、
「やっている時は、本当に一生懸命。 5月に来た時は人気(ひとけ)がなかったのに、 来る度に生活が戻ってきていますね。まさに復興しているという実感がします。 しかしながら一方でまだまだ足りないとも感じています。」と答えてくれました。
また、「このような活動が企業にとってはどのようなメリットなのですか?」 という問いには、
「メリットどうのこうのという以前に、これこそが企業活動の一環、 そして経営の一つでもありますから。ブリヂストンには、CSRを高めていく22つの項目があります。 そのうちの4つに社会活動の安定というものがあり、 例えば、交通事故のない社会をつくろうというような。 会社の中で仕事ばかりしているのではなく、 もっと社会と関わりを持っていくことがとても大切なんです。従業員の社会への後押しをすること、これが長い目で見た時、 人材育成につながり、各事業所では地域とのつながりになり、 本当の意味での企業の役割になってくることなんだと思います。」と。
「これからも刻一刻と変化していく被災地の状況。 それにあわせてニーズを探り、対応していきたい」と締めてくださった齋藤さんの言葉にこれからの企業のあり方を考えさせられ、また、企業やNGO/NPOがお互いの長所を活かしながら協力していくことの意義を感じました。
photo:Kazushi Kataoka