九州北部豪雨の被災地となった福岡県東峰村では、応急仮設住宅が8月中旬に建てられ、22世帯46人が新たな生活を始めています。住み慣れた自宅やコミュニティから離れ、仮設住宅での新しい生活には、様々な戸惑いや不安はつきものです。
どうやったら住民みんなが積極的に関わるような運営になるのだろうか?
外部からの支援をどのように活かして、いつ頃終えてくのだろうか?
集会所をどのように活用したらいいのだろうか?
スペースが限られる仮設住宅のなかで、荷物を上手に収納できる工夫はあるだろうか?
などなど、様々な疑問や課題が浮かんできます。
東峰村では、仮設入居を終えてまもなく、地域住民も含めた地域会が開かれました。その会の中では、仮設団地の自治会長から「住民の声を拾ったり、課題を解決していくのに、他の被災地を参考にしたい」という声があがりました。村役場も住民からの要望を真摯に受け止め、他の被災地への視察を前向きに検討し始めました。今回の豪雨災害で東峰村は、熊本地震で被災地となった西原村からの支援を受けていた繋がりもあり、地震被害から1年7ヶ月が経過した西原村への視察が決まりました。また、PBVも熊本地震への支援を実施していた関係で、訪問場所や話を伺う方の紹介、当日のアテンドなど、繋ぎ役を担いました。
ついに11月3日に視察が実現し、東峰村の仮設住民や村役場職員、保健師、社協職員など9人が参加しました。今回の視察では、熊本県益城町と西原村にある仮設団地や支援組織を4箇所訪れることができました。
まず訪れたのは、益城町で仮設団地の見守り活動やコミュニティ形成を行っている地域の支援団体「くまもと友救の会」と「キャンナス熊本」です。
益城町では、自治会の連合会が立ち上がり情報共有を図ろうとしている一方で、自治会長の経験の差や行政と地域組織との連携の問題などの課題も聞く事ができました。話しを伺った「くまもと友救の会」代表の松岡さんからは、「それぞれ地域差もあるので、住民主体で時間をかけて、その地域に一番合った方法を探していくのがよい」と教えて頂きました。
466世帯が暮らす県下最大の仮設団地で活動する「キャンナス熊本」は、集会所の活用方法を紹介してくれました。定期的に集会所で実施しているお茶会(おちゃっこ)では、仮設団地に暮らす住民をアルバイトとして雇い、住民が参加して運営することで、支援団体にはなかなか上がってきにくい声を知ることができるそうです。また、男性の孤立を防ぐためにお酒を住民同士で飲む場を設けて、お茶会にはちょっと参加しづらい男性たちも参加しやすい工夫をしていました。その後、住民が自発的に会を設けることもあるそうです。
次に向かったのは、益城町のはずれにある小池島田仮設団地。仮設団地の自治会長のお話を伺うことができました。支援の手がなかなか届きにくい場所にあるため、発災直後から地域住民で力を合わせて復旧活動を行っていました。自治会長が住民のニーズを集め、情報発信などを行う中で支援団体の協力も得ながら、運営を進めています。仮設住宅では、自作の倉庫や屋根の作り方など、生活する上での工夫も見せてもらえました。
最後に訪れたのは、西原村社会福祉協議会が運営する「地域支え合いセンター」です。地域支え合いセンターでは、仮設住宅の訪問を通じた見守り活動や外部支援の受入れやイベントの企画の調整などを行っていました。また、相談窓口を設置し、自宅再建に向けた法律相談を専門家に繋ぐことも行っています。
熊本地震の被災地では、仮設住宅での暮らしが1年以上経過して、団地団地の片隅に庭が出来ていたり、季節のイベントを楽しもうとハロウィンの飾りつけがあったりと、仮住まいであるものの前向きに生活を彩る姿勢が感じられ、嬉しく思いました。
仮設入居直後は、慣れないことも沢山あり、すぐには前向きになれないこともあるかもしれません。住民のみなさんが、少しずつ暮らし方の工夫をしていく中で、行政や支援団体の力も活用しつつ、お互いが住みやすい空間や時間を過ごしていけるようになるといいですね。
今回の視察が、東峰村の方達にとってそんなきっかけの一つになればと思います。