報告が遅くなってしまいましたが、8月3日をもって、ピースボートでも長くお手伝いを続けた、木の屋石巻水産の『希望の缶詰』を拾い終えました!
木の屋さんは、石巻でも50年以上続く老舗のお店。三陸の海の幸を使い、一つひとつ手詰めした缶詰はたくさんの人に愛されてきました。
石巻魚市場からもほど近い通り沿いは、たくさんの工場が並ぶ水産加工業の中心でした。3月11日、辺り一帯は津波に襲われ、景色は一変しました。木の屋の缶詰工場も、そこにありました。
ピースボートが缶詰拾いのお手伝いを始めたのは、6月28日のこと。その日から、たくさんのメンバーを引き連れ、毎週5日間欠かさず工場に足を運んだのは、ボランティアの五百田紗枝(いおた・さえ)さん。破壊された工場に立ち、「これが全部片付いたら、きっと喜んでくれる」と作業を始めました。
ヘドロの中に、生き埋めになっている缶詰を一つひとつ助けていく作業。「無事な缶詰を見つけたら嬉しかったし、ダメになった缶詰を拾い上げた時は悲しかった。」 缶詰にありったけの愛情を注ぐ工場長の伊藤さんと仲良くなるにつれ、五百田さんにも彼の心が伝わります。「最後の1個を拾い上げるまで続ける。」 そんな強い気持ちが、彼女の中に生まれていました。そんな五百田さんについたニックネームは「Can(缶)ちゃん」(笑)でした。
この缶詰拾いが始まったのは、震災直後のある避難所での出来事がきっかけ。木の屋の従業員の方々も避難所での生活を続けていました。同じ避難所の方が、近くに流れ着いていた缶詰を見つけ、「これ、食べても良いですか?」と。その日から、従業員の方も避難所の方も貴重な食料源として缶詰を食べるようになりました。
缶詰の中身は、牡蠣、サバ、クジラ、イワシ、サンマ、マグロ、カレーのえんがわなど、全部で43種類もあるそうです。缶詰は強い。見た目は泥だらけ、ラベルは剥がれてしまっていても、中身にはまったく影響がない、生き残っている缶詰がたくさんあります。中身が無事であれば、買ってくれる人もいるかもしれない。そうすれば、缶詰を愛する従業員が仕事を続けれられるかもしれない。テレビや新聞でも特集され、木の屋の缶詰は、命と生活を救う『希望の缶詰』と呼ばれるようになりました。
缶詰拾いをするボランティアのお昼ご飯は、おにぎり2つ。「おかずにどうぞ」と、よく缶詰を差し入れしてもらったそうです。何度も口にした五百田さんのお勧めを聞くと、「サバの醤油。味噌煮もいいけど、私はこっちが好きですね」とのこと。
拾い上げた缶には、「出会いに感謝します」とプリントされているものも。工場長の伊藤さんからも、何度も何度も聞いた言葉です。
来る日も来る日も拾い上げた缶詰の数はおよそ80万個!半分くらいの缶詰が甦り、全国で応援してくれるお店に出荷されていきます。ピースボートでも、川開き祭りで行った「石巻復興市」など、販売のお手伝いをさせていただいています。
8月3日、ついに最後の一つ。
代表して拾い上げさせてもらった五百田さんの表情は、もちろん満面の笑み。
「この缶詰のおかげで、石巻の皆さん、木の屋の従業員の方々、そしてボランティアのみんなと出会うことができました。本当にありがとうございました!」
photo : Shoichi Suzuki
※『希望の缶詰』のお話は、ぜひ木の屋さんのブログもご覧ください。