震災から2ヶ月以上がたち、石巻の状況も大きく変わってきました。ボランティア・コーディネーターを務める上島安裕は、「東北で起きていることを、自分の身に起きた事だと想像して、少しずつでいいから協力して欲しいです。」と語ります。
5月後半、支援開始から二ヶ月以上経った現在、ピースボートのボランティアは、毎日約1,000~2,000食の炊き出しを提供しています。石巻市で は、避難所だけでなく在宅避難者の方々も多く、民間の炊き出しがストップするということは、配給でもらえるおにぎりやパン以外の温かい食事を一切口にでき なくなってしまうというケースが多数あります。
避難所は、生活している人数や炊き出しの有無などの情報が分かるので、担当の自衛隊やNGO、地元行政による炊き出しが行われている場所が多いです。し かし、半壊した友人の家の2階部分に暮らしているなど、在宅避難者の方々の人数や住所などの情報は把握できておらず、食事の提供が行き届かない所がありま す。一部スーパーやコンビニが復旧して開店してきているところもありますが、そこに行く事のできない高齢者の方もまだまだいらっしゃいます。ピースボート はそんな地域を探して、毎日約10カ所へ食事や日用品のデリバリーを続けています。
震災から2ヶ月たち、ある程度安定して食事を提供できるようになってきたのも束の間、上島は今度は別の課題に直面しています。
「春になって学校が再開されることで、避難所だった場所が統廃合されてなくなってしまったりということが増えています。被災地にとっては日常が戻るという ことで良い面もありますが、やはり高齢者や足の悪い人などは、在宅避難に切り替えても買出しに行けない人もいます。だから避難所がなくなる度にまた新しく 調査をして、どこにどんな人が戻っているのか、炊き出しやデリバリーはどれくらい必要かといった情報を調べなおしているんです。」
上島は、その調査のための人手も含めて、今の規模の炊き出しとデリバリーを維持するためには、ボランティアは常時150人が必要だと言う。5月末現在は、 企業の社会貢献のプログラムで来てくれているグループもいるのでなんとか回っているけれど、この先、6月に入った頃にさらにボランティアが減少するのでは と心配しています。
「今後は他の団体も徐々に活動を縮小したり撤退していく可能性があるので、そうなるとよけいにピースボートに任される仕事が増えてくるはずです。ピースボートでも2日間の短期ボランティアの受け入れを始めたので、できるかぎり現場に足を運んで欲しいと思います。」
一方で泥かきや清掃作業も日々進めています。はじめに手をつけた中央町は、だいぶきれいすることができたと上島は言います。
「中央町の場合は、特に地元のリーダーの方がうまくまとめてくれたので、進めやすかったですね。そうした情報や合意がないと、優先順位を僕らがつけられな いですから。まだまだ被災地全体で見ると、本当にいつまで続くんだろうというくらい終わりが見えません。でも中央町を見ると、地元の人とボランティアがみ んなで力を合わせることで、この町ひとつをキレイにすることができたと実感します。僕らが石巻に最初に来たときとはまったく違う状態になりました。そんな ふうに変わっていく町の様子を見て、お店をたたもうかと思っていたご主人がやる気になってくれたり、絶望が希望に変わっていく場面に何度も出会いました。 一人では絶望しかないかもしれないけれど、一人ひとりが力を合わせれば希望が生まれる。僕はそう信じています。
泥を出したり片付けたりしてきれいにすれば使える家はまだまだあります。一人でも多くの被災者に、きれいになった家に早く住んでもらえたらと思います。そのために僕らも頑張っていきたいですね。」