災害に強い都市「レジリエント・シティ」の構築キャンペーン

2014年、ピースボートは、国連国際防災戦略事務局(以下、UNISDR)が進める災害に強い都市づくりに向けた「世界防災キャンペーン」の公式パートナーになりました。このキャンペーンは2010年にスタート。災害の被害を最小限に抑えるための、各国の地方自治体における防災・減災対策の促進を呼びかけています。

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キャンペーンのタイトルは”Making Cities Resilient”。「Resilient(レジリエント)」とは災害に耐え、乗り越える力を指します。災害リスクを減らすために地方自治体が取り組むべき「災害に強い都市構築のための必須10項目」を挙げて、1つでも多くの市町村や自治体に導入を呼びかけています。2014年8月現在までに、世界各国2,000以上の都市が署名しています。

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ピースボートは、年間3回の地球一周の船旅を通して、約60の港町を訪れます。メッセンジャーとなって訪れる都市にキャンペーンを紹介するだけでなく、専門家や関係者の移動手段、トレーニングや議論を実施する「場」として船を活用することもできます。

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これらの特徴を活かし、今年7月に横浜を出航した第84回クルーズでは、寄港先のエルサルバドルからパナマまでの8日間、コスタリカ、ニカラグア、パナマ、そしてエルサルバドルから2名ずつ、災害関連の分野に携わる8名のユースを船に迎え、それぞれの国や地域の経験した津波、地震、洪水などの災害から学んだ教訓を元に、トレーニングやディスカッションを行いました。

※キャンペーンの様子は、UNISDR中南米事務所のホームページ(スペイン語)でも紹介されています。コチラ

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船内では、ユースから船の参加者向けに、中央アメリカの地域が抱える共通の自然災害のリスクについてのプレゼンテーションと、船内の「災害ボランティア・リーダートレーニング」の受講者らによる意見交換が行われました。トレーニング受講者らの中には、東北でのボランティア経験を持つメンバーもあり、東日本大震災の被災地での経験や洋上のトレーニングで学んだ防災・減災プログラムを経て学んだことを発表しました。

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寄港地でのプログラムを実施した、エルサルバドルのサンタテクラ市は、2001年に2度に渡る大きな地震を経験。その後、防災・減災に力を入れ、「災害に強い都市構築のための必須10項目」を全て満たし、このキャンペーンのモデル都市に認定されました。ユースたちは、サンタテクラ市の担当者から「世界防災キャンペーン」に署名した経緯を学び、災害時には避難場所となる公園で実際に行われた避難訓練にも参加。防災の担当者だけでなく、日頃から地域住民とともに活動することの大切さを感じました。

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ニカラグアでは、外務大臣代理、国会議員や外交官ミゲル・デスコト・ブロックマン氏も出席した記者会見。続いて、UNISDRからマルガレータ・ヴィラロボス氏(上の写真)らも参加したシンポジウムを実施。ニカラグアのキャンペーン担当者の「災害に強い街づくりのためには、市長や民間セクターだけでなく、ボランティアも巻き込み、全員で目標を目指すことが不可欠」という言葉は、船内で出会った日本人の「災害ボランティア・リーダートレーニング」の受講者や東北でのボランティア経験者との学び合いにも通じるものでした。

また、パナマ運河をピースボートが通過した後、ユースたちはUNISDRのパナマ支部を訪問。パナマの政府関係者や市民団体と面会する機会もあったりと、船内、寄港地とも充実した8日間を過ごしました。

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プログラムに参加したユースの感想です。

“ニカラグアの災害対応とは全く違う日本の政策を学び、それをどのように自分の国に反映できるかを考えるきっかけをもらえたことが一番の収穫だった”
- Walkiri Jadima Lovoさん/ニカラグア

“ニカラグアが防災教育に力を入れていたり、エルサルバドルが災害への備えに注力していたり、各国の災害に対するアプローチが異なることを知りました。自国に戻ってからは、限りある時間と資源をどこにフォーカスするのか、しっかりと検討したい”
- Bernardo Merayo Millerさん、コスタリカ

“船を離れ、それぞれの国に帰っても、これからも情報や知識を共有し合いたい。私たちのように小さな国々は大きな災害が起きたときに、隣国としてお互いを支え合うことが重要なんだ”
- Luis Villamonteさん、パナマ

 

 

ユース達の下船後の8月15日、ピースボートはブラジルのベレン市に到着。

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ブラジルは土砂崩れや洪水などの豪雨災害がある一方で、干ばつなどの被害にも見舞われるなど、広く国土ゆえに様々な気候に関わる問題を抱えています。ベレンではUNISDRの担当者とともに、ブラジル政府・防災関係者19名を船に迎え、「世界防災キャンペーン」を紹介しました。意見交換やネットワーク構築としても非常に有意義な時間となっただけでなく、ピースボートの入港がきっかけで、キャンペーン署名に向けて担当者らが前向きな姿勢になったのは一つの大きな成果と言えるでしょう。

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この「世界防災キャンペーン」は、国連防災世界会議とも関わりの深いもの。そもそも、2005年に行われた第2回会議で採択された「兵庫行動枠組み(HFA)」を各自治体が具体的に実行していくための取り組みでした。来年3月に仙台で行われる第3回会議では、災害に強い都市の構築には、自治体だけでなく、地域住民、市民団体、専門家、民間企業などのマルチセクターとの連携が大切だと議論が広がりそうです。今後は、それらの国際的な議論も踏まえ、キャンペーンの普及に努めていきたいと思います。

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