「私たちのような貧しい家庭も、支援を受けられる基準にしてくれたことが良かったです。子どもの数も多く、家族全員を毎日ちゃんと食べさせていける仕事も 定まっていません。(プロジェクトの)前に各家庭で行ったインタビューで、私たち家族が対象として認めてもらったことを知りました。感謝しています」
これは、台風被害を受けた家の修繕キットを渡したGaryさん(青いTシャツを着ているご主人)の言葉です。ビリラン島Busali村で、6人の子ども養っています。
昨年11月から始めたフィリピンでの災害救援。現場で難しさを感じるのは、誰に何を支援するのか?ということ。「支援を必要としている人に、必要とされている支援をする」わけですが、単に“家が全壊した”というだけではなく、障害を持った子どもや病気の高齢者を抱えていたり、その家庭事情によって「支援を必要とする」理由が変わります。限られた予算や人材のなか、ここフィリピンでは災害だけでなく、そもそもの貧困問題と向き合うことも求められています。
現地パートナー「PDRRN」と進めるのは、家の修繕キットとキッチン用品の配布による生活再建支援。対象は、ビリラン島南部4市15の村で約1,010世帯(※)です。
※Biliran市(Bato村×64、Busali村×68、Burabod村×94、San isidro村×125)、Cabucgayan市(Balaquid村×89、Looc村×88、Pawikan村×28)、Naval市(Atipolo村×92、Caraycaray×91、Sto nino村×65、Calumpang村×85)、Caibiran市(Victory村×67、Union村×26、Manlabang村×23、Cabibiran村×28)。数字は対象世帯数(実施時に多少前後することもあります)。Bato村、Busali村、Burabod村での物資購入・輸送にかかる費用はPBVに集まった募金で実施しています。
家の修繕キットを受け取った住民たちは、倒れたココナツの木や葉っぱを使って柱や壁を作ります。自分で造れない場合は大工に頼みますが、その大工たちもタクロバンなどの大都市の応援に行ってしまうため人手不足で順番待ちが続くこともあります。もちろん家族の人数などによって建てるべき家のサイズも違うので、「もっとたくさん釘や板が欲しかった」と言われることもあります。できる限りの対応はしますが、すべて完璧にできるわけではありません。だからこそ、「渡したら終わり」ではなく、その後のモニタリングを通じてコミュニケーションを続けています。
通常であれば、フィリピンの雨季は11月で終わります。ただ、今年は気候変動の影響か、12月,1月に入っても雨続き。天候によって、配布日を延期したり、実施する場合も合羽やブルーシートなどの追加の段取りが必要でした。
全15の村でのスケジュールは、まるでパズルのよう。ある村での配布と同時平行で次の村の準備を行い、その次の村の配布を行いながら前の村のモニタリングを行う。それでも、このモニタリングのおかげで、配布した修繕キットの90%以上がちゃんと活用されているという結果も見えてきました。
冒頭のGaryさんとは別に、モニタリングで聞いたもうひと家族の声も紹介します。
写真の4歳の男の子は、「台風で全部吹き飛ばされて屋根がなかった。今はあるからうれしい」と、とっても素直な感想。ご主人のSonnyさんは、「家を建て直す上での、災害に強い家の造り方10項目を、配布時のオリエンテーションでレクチャーしてくれたのが、とてもためになりました」と。
私たちが配布している家の修繕キット素材で、日本の民家ほど頑丈なものが造れるわけではありませんし、もともと暮らしていたのはもっと簡素な造りだったりします。ただ、今回の台風ほどではないとはいえ、来年もまた台風が通過するかもしれません。国連の防災機関(UNISDR)とフィリピン政府は、学校教育に新しく防災のプログラムを組み込みたいと発表しましたが、その子たちが大人になって日常レベルに防災意識が根付き、それが具体的に活かされるにはまだ何年もかかります。また、学校に行けない子どもたちもたくさんいます。
フィリピンは台風の多い国です。被災した住民一人ひとりに防災の意識を持ってもらうには、「こうした復旧期の活動に防災の内容を組み込んでしまった方が、早く意識が広がる」と思ったからこそ、オリエンテーションにひと手間かけて「災害に強い家の造り方10項目」の説明をしてきました。
今月からは、キッチン用品の配布も始まりました。
また、レポートします。