9月1日は「防災の日」。1923年のこの日に「関東大震災」が発生したことから名づけられ、この1週間は「防災週間」として、各地で避難訓練・防災訓練が実施されています。今日は、東日本大震災の被災地・石巻、中心市街地の防災への取り組みを紹介します。
「ピースボートセンターいしのまき」があるのは、石巻の中心市街地といわれるエリア。旧北上川から石巻駅までの約56.4haがこれに当たります。震災前から中心市街地の商店街は、シャッターを閉めたままのお店が多くあったそうです。この課題は、震災を契機により深刻化し、先鋭化していきました。
(震災後の「ピースボートセンターいしのまき」前の様子、2011年4月撮影)
「そんな中心市街地を立て直したい!」「次世代が可能性を見出せる街にしたい!」と立ち上がったのが、「コンパクトシティいしのまき・街なか創生協議会」。街の商店主さん、地主さん、建築や都市計画の専門家やNPO/NGO職員など、それぞれに想いを持った人たちが集まり、これからの街の再開発に対する羅針盤として「石巻 街なか復興ビジョン」がつくられました。
「石巻 街なか復興ビジョン」が掲げる7つの柱の一つが「一人一人がつくる安全安心のまちづくり」。大津波で被災した場所だからこそ、住民が主体となって自分たちの安全を守ろうという「自主防災」の強化がコンセプトです。この自主防災の分野を担うため、2013年7月には「防災まちづくり会議」が発足し、行政や住民、専門家の垣根を越えて議論を重ねています。
「防災まちづくり会議」では、今後“災害”に対する地域住民の意識調査を行ったり、10月の石巻市の大規模避難訓練にも協力する予定です。訓練でも、単に「逃げる」ことの訓練ではなく、避難先の備蓄物資や地域住民への配布・活用方法など、住民や商店主だからこその目線での市役所に意見を提出していきたいと考えています。「安全安心」を誰か任せにするのではなく、「公助」を担う行政と「共助」を担うコミュニティが融合する「自主防災」の在り方を模索し始めています。
「防災まちづくり会議」のリーダーを務める阿部紀代子さんは、100年続く料亭の女将さん。
PBVが石巻で最もお世話になってきた一人です。阿部さんは、「この中心市街地は、来街者の方々を迎え入れる場所。お客様の安全をどう守るのか。商売を営む者として、真剣に考えていく必要がある」と言います。
震災から2年半が経つ宮城県石巻市。被災した建物の取り壊しが進み、至るところに空き地ができ、一面夏草に覆われています。そんな中、「復興が遅れている」とか「変化の兆しが見えない」という言葉をよく耳にします。確かに、傍目には、目に見える変化が少ないのかもしれません。ただ、こうやって「震災前よりもいい街にしよう!」という人たちの中にいると、着実に歩みを進めている姿も見えてきます。スピードよりもプロセスを大切にすることで、根付く防災文化もあるんだろうと思っています。
大きな犠牲を払ったからこそ、次の犠牲を減らしたいと、石巻の人々は真剣です。
PBVも、微力ながらこの「防災まちづくり会議」の一員として、石巻の防災・減災に役立ちたいと考えています。そして、改めて東北被災地の復興に向けた努力、防災・減災に向けたチャレンジから学び、それを全国各地での取り組みにつなげていくこと。今日は、そんな気持ちを確かめる「防災の日」を迎えようと思います。
Photo by:Yoshinori Ueno, 37framesphotography Tracy Taylor & Dee Green