ボランティア・インタビュー -つながること・つなげること-

牡鹿半島の浜で暮らしを体験しながら、漁業ボランティアとして活動する「イマ、ココ プロジェクト」。今日は、その番外編「Links(リンクス)プロジェクト」に参加した二人の若者のインタビューをご紹介します。


2人が活動した石巻市牡鹿半島の福貴浦

 

インタビュー1人目は、名古屋出身の大石夕貴(おおいしゆき)さん。
2年程前、友人から紹介されたのがきっかけで、ピースボートが行う地球一周の船旅に興味を持ち、名古屋にあるピースボートセンターに通い始めました。

同時期に参加したボランティアのメンバーと。写真左が大石さん。

 

「私なんかが行っても迷惑になるかも」と、これまでは災害ボランティアの経験はありませんでしたが、ピースボートのスタッフから「Linksプロジェクト」のことを聞き、すぐに参加を決めたそうです。

「Linksプロジェクト」は、石巻港にも寄港が決まった「第80回ピースボート 地球一周の船旅」に合わせて、今年2月から始めたもの。震災後2年経った石巻のいま、そしてお世話になった漁師さんたちとの出会いを、自分の経験としてだけでなく、参加者自身が暮らす地域やピースボートの旅を通じて世界にシェアしようとする目的です。「Link=つながる・つなげる」というプロジェクトには、ボランティア一人ひとりが媒体となって、東北の現状を各地につないでいって欲しいという想いを込めました。

大石さんの活動場所は、牡鹿半島の福貴浦。牡蠣養殖の収穫のお手伝いで、殻にこびり付いたムール貝などを剥いで出荷できるようキレイにしていく作業。地道で大変な仕事ではありましたが、冗談好きな漁師さんに囲まれ、獲れた牡蠣をご馳走になったりと、楽しく一週間が過ぎました。

 

大石さんに印象に残っていることを尋ねると、最終日に特別に乗せてもらった漁船の上で聞いた言葉だと言います。それは、冗談ばかりだった漁師さんが「俺、これからちょっと格好いいこと言うから」と前置きして話してくれたこと。「これから先、色んな人に出会っていくんだと思う。そのうち俺の顔は忘れていくかもしれん。でも、この海の姿だけは忘れんといてな」。

帰宅後も、牡蠣やワカメを送ってくれたり、交流は続いているようです。「ずっと大事にしてきた漁業を、ずっと育んできた生活を一瞬の津波で奪っていった海。本当は憎いはずなのに・・・。」大石さんは、あの漁船の上で聞いた言葉を伝えていくこと、それと世界で色んな人と出会いながらもっと自分にできることを探していきたいと話してくれました。

 

 

2人目は、福岡に住む福司山昂良(ふくしやまこうすけ)くん。実家近くの居酒屋に貼ってあったポスターを見て、世界一周に興味を持ちました。旅行代金の割引制度もあると聞き、今年1月から福岡に住み込んで、ピースボートのボランティアスタッフとアルバイトの毎日を送っていました。


福岡のピースボートセンターで。右端が福司山くん。

 

東北と九州の距離は、情報の距離にもつながります。自分自身も東北に足を運んだこともなく、九州在住で東北ボランティアに参加した知人もいません。「いつかは」と思っていたところに、「Linksプロジェクト」の存在を知りました。

初めての東北は、驚きの連続でした。「被災地だから食事や買い物ができる場所もないかも」と思いながら、到着した石巻駅の周辺では再開したお店などがあったことが驚き。その後、市内を見学しながら見たのは、津波で全壊した地域。その景色に言葉がありませんでした。

活動時期は違いますが、場所は大石さんと同じ牡鹿半島の福貴浦。漁師の阿部信彦さんのお手伝いです。阿部さんからは、震災当時の生々しい話も聞きました。船も、家も、命もギリギリのところで助かったけれど、養殖もやられ、道具も流され、借金も抱えた。2年経った今でも牡蠣養殖の復活は、震災前の6~7割が限界。それを補うためのワカメ養殖も始めたが、やっぱり牡蠣を大事にしたい。福司山くんは、そんな話を聞きながら、初めての漁業を体験しながら、阿部さんのこの2年間を想像していきます。

 

「浜に親戚のおじちゃんができたと思って、また遊びにおいで。まだ時間はかかるけど、復興した浜の姿も見てほしいから」と阿部さんが声をかけてくれたことが、いまも忘れられないそうです。東北に知り合いもいなかった福司山くんにとって、本当に嬉しかったんだと思います。少し照れながら、「僕自身もまだ先のことかもしれないけど、新しい家族ができたら遊びに行ったり、ずっと関係を続けていけたらと思っています」と話してくれました。

 

 

 

二人が次に漁師さんらと会うのは、ピースボートクルーズが石巻に寄港する10月9日。
石巻で活動した仲間たちとともに世界一周し、船に集まる全国からの乗船者や寄港地で出会う人々に経験を伝え、またその出会いを持ち帰るまでが「Linksプロジェクト」です。どんな新しい「Links=つながり」が生まれるか、楽しみにしています。