第1部「東日本大震災 ボランティアの現場から」の後半は、ボランティアの多様化について。
まずは、インターナショナル(国際)・ボランティアとして石巻での活動に参加、その後、PBVのスタッフとして、海外への情報発信、海外からの寄付や支援を東北へつなげる業務を行うアリス・ブレナンからのプレゼンテーションが行われました。
英国出身の彼女は、英会話教師として三重県で英語を教えるため来日していました。3月末には、その仕事を終えて日本を離れる予定だったところに震災がありました。日本語は話せないけれど、これまで学んできたマーケティングのスキルなどを活かして、東北のために何かできることはないかと考えていたところ、Facebookを通じて、ピースボートの支援活動を知りました。
バイリンガル・リーダーがいることで、言語面でのサポートを受けられることが分かり、4月には、実際に石巻のボランティアに参加します。それから数ヶ月経 ち、再度石巻を訪問した際、自分が実際に泥かきを行ったブティックがオープンしたのを知り、ご主人と再会した時の感動は、人生で一番嬉しかった出来事だと言います。
「被災地に関する報道が減っていますが、海外ではもっと情報不足が深刻です。支援したくても、どこを頼っていいのか分からない財団、企業、大使館などへ情報を提供しながら、海外からも継続した支援が東北に届くよう、これからも活動していきたいと思います」。
3月からPBVが受け入れたインターナショナル・ボランティアは、以下52の国と地域から、700人以上に上ります。実に1割弱の参加となり、ボランティアのバイリンガル・リーダーを同時に募集する体制づくりができたことで、本当に大きな力となりました。
アイルランド/英国/イタリア/イラク/インド/ウェールズ(イギリス)/エクアドル/エジプト/オランダ/オーストラリア/オーストリア/カナダ/韓国/キプロス/キューバ/グアテマラ/コスタリカ/コロンビア/サウジアラビア/ジャマイカ/シンガポール/ジンバブエ/スイス/スウェーデン/スペイン/スリランカ/セルビア/台湾/タイ/中国/チリ/ドイツ/デンマーク/ニカラグア/ニュージーランド/パナマ/パキスタン/パラグアイ/パレスチナ/フィンランド/ブラジル/フランス/ブルガリア/米国/ベトナム/ベネズエラ/ベルギー/ペルー/ポーランド/マレーシア/マルタ/メキシコ/モロッコ
ボランティアだけでなく、物資や寄付など、本当に多くの具体的な応援を形にすることで、現地で活動する私たちにとっても、また被災地の方々にとっても大きな励みになっていると思います。
続いて、ご登壇いただいたのは、社員のボランティア派遣を含め、企業の持つ強みを活かした東北復興支援を続けるパルシステム神奈川ゆめコープ(以下、パルシステム)、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社(以下、ユニリーバ)のお二人。
マスコット「こんせんくん」でお馴染み?のパルシステムからは、渡辺たかしさんがご登壇。
渡辺さんは、3月、東北各地で被災した生協や組合員を支援するため、またパルシステムとしての独自支援を調査するための先遣スタッフとして宮城県南部から各都市を回っていました。
「当時、役所で物資提供など支援させてほしいと申し出ても、『まだうちは受け入れる余裕がありません』と何度も断られました。目の前に困っている人がいるのに、何もさせてもらえない歯がゆさを感じていた時に、石巻モデルに出会い、石巻での支援を決めました」と、渡辺さん。
その後、毎週3泊4日で石巻を訪れ、炊き出し支援を開始します。昨年11月までに1万6千色を直接提供したほか、ピースボートのセントラルキッチンへの安定した食材提供にもご協力いただきました。そして、震災前から取引のあった生産者への支援を検討し始めます。
「生産者の工場やお店を支援したいと、一軒一軒訪ねて回りました。が、契約を断れることを恐れてか、なかなか初めは支援要請が来ませんでした。今になってようやくゼロまで戻り始めたところから声をかけられるようになってきました。これからです。太くても、細くても、極細でもいいから、長くつながっていくことを心がけています」。
ユニリーバの伊藤さんからは、まず世界各国に拠点を持つ企業として、これまでもユニセフやセーブ・ザ・チルドレンなどと協力はしてきたものの、国内でNGO/NPOと連携して活動する初めてのケースだったとご紹介がありました。
「自社商品を無償提供する物資提供、義捐金の提供を行い、その後、社員のボランティア派遣を進めました。今までに社員の10人に1人が参加しています。その後、私のメールには『石巻で見た景色に唖然としましたが、現地で一所懸命活動する人たちの姿に、小さなことでも行動に移すことが大事だと思いました』『阪神淡路大震災の被災者として、あの時の恩返しがしたいとボランティアに参加しました』など、参加した社員から自主的にコメントが送られてきました」。
ユニリーバでは、そのほかクリック1回につき1円が支援になる「ユニリーバ東日本大震災募金」や製品1本ごとに1円が寄付になる「ユニリーバこども笑顔プロジェクト」などを続けています。「こども笑顔プロジェクト」では、集まった募金でこれから釜石や石巻などの5箇所で子どもたちが自由に遊べる公園の建設が始まるとのことです。
このように、インターナショナル・ボランティアや企業ボランティアの動きは、多様性をもたらしたとともに、「つながり」と「継続」をつくることにもなりました。これからの東北復興には、ボランティアだけでなく様々な角度からのサポートが必要です。
第1部の最後、山本隆が繰り返し強調た言葉は「一緒に」。
「東北沿岸部の地域は、シャッター街や過疎・高齢化の問題など、震災前からの課題を抱えていました。「ゼロ」に戻すことが復興ではなく、地元と一緒になって町を再生させていく。食べ物がないから炊き出しをする、泥を被ったから清掃するといったひと目で分かるニーズではなくなってきましたが、これからの東北支援に必要なのは、地元に任せるだけでもなく、支援するだけでもなく、「一緒にやっていく」という姿勢だと思っています。ピースボートは、まだまだ石巻での活動を辞めるつもりはありません」。
※Vol.3では、第2部「『多様なヒト』を動かせる若いリーダーの育成を!」の報告を行います。