千葉の今をお届けする連載企画の2回目は、ブルーシート展張の担い手育成のための現場講習(OJT)プログラムをご紹介します。
このOJTは、発災から8ヶ月が経過した2020年5月よりジャパン・プラットフォーム(JPF)およびCenter for Disaster Philanthropy(CDP)の協力を得て、千葉南部災害支援センター主催のもと、新型コロナウイルス感染症の影響を考えながら月に4回程度実施しています。PBVは運営団体として活動を行っています。
2019年の台風15号・19号から2年以上が経過しましたが、現在もブルーシート展張のニーズはあります。ニーズが継続している理由としては、対応できる工務店の不足や、被災者の経済的な事情だけではありません。被災してから生活再建に至ることができない問題はさまざまあり、寒空の下で現在も擦り切れたブルーシートで覆われた屋根の家の中で生活をしている被災者の方々が多くいらっしゃいます。甚大な台風被害をうけた房総半島の地域は海に囲まれており、日常的に海から強い風が吹き続ける季節があります。台風以前から、風に対する備えの意識はありましたが2019年の台風15号・19号は地元住民の予想を遥かに超えるものでした。
残念ながら、毎年必ず自然災害が発生している現状があります。被災した地域の中で応急対応が少しでもできれば、被災した地域の復旧のスピードも上がるかもしれません。迅速に的確な応急対応ができるようになれば、被災家屋で不自由な生活を強いられる被災者の方々がひと時でも安心することができます。
そのためには、平時から適切な知識や経験の備えが必要となります。最も身近な存在であり、日頃より地域の防災のために尽力をつくし、様々な場面での専門的な知識と体力がある消防士の方々を対象に、災害対応の担い手としてOJTを開催しシート展張の知識の共有を行っています。
今回取材したOJTでは、3名の消防士さんが、ご参加くださいました。講師は、災害救援レスキューアシストの川島さんと災害支援団体Reviveの植田さんが務めてくださいました。PBVは屋根に登るための装備の説明やロープの結び方、命を守るためのメインロープの張り方などをお伝えしました。さすがは消防士のみなさん、装備の説明も1回で理解して下さり、ロープなどの結び方もばっちりでした。消火活動や救助活動を行うときと屋根に登るときの装備は共通するものもありますが、屋根作業ならではの装備もあるので、「こういう使い方もあるのか」と関心を持って聞いてくださいました。
今回のOJTでは、破損した屋根にかけてある劣化してしまったブルーシートを、かけ直すという作業を体験してもらいました。実際に屋根に登り、損傷箇所の採寸から、使用するブルーシートと木材のカッティングをお任せしました。3人で話し合いながら、ときに講師の方々がアドバイスを行い、スムーズに必要な資材を完成させることができました。
屋根の上の作業も身体が安定していて、迅速に行っていました。今回、当直明けの非番にも関わらず参加してくださったので、その理由と感想を聞いてみると「(消防職員の訓練や指導を行っている)警防課から通知がきたので、是非みんなで経験しに行ってみようと思ったんです。資材の説明も丁寧で、消防の技術にも活かせることもありました。和やかなムードで行えたので、また参加したいと思います。」と前向きなコメントをしてくださいました。
実際に屋根に登って作業を行うということもあり、なかなか大人数で実施することが難しいOJTですが、地域での担い手を増やし、住民さんの安心感につなげるために、今後も1回1回を積み重ねていきたいと思います。
なお、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)が作成した「被災家屋への対応事例_屋根の対処編」の冊子の作成にPBVも関わっております。この冊子では、ブルーシート展張の工法を写真とともにご紹介しています。各支援団体の知恵や工夫例がつまった一冊です。こちらも合わせてご覧ください。
「被災家屋への対応事例_屋根の対処編」(作成:JVOAD/主管:PBV)
※画像をクリックすると冊子をご覧いただけます。