コロナ禍の災害支援のあり方を考える~JVOAD全国フォーラム➀~

5月26日と27日に開催された全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)主催の「第5回 災害時の連携を考える全国フォーラム」にPBVのスタッフが登壇しました。

毎年会場を借りて対面形式で行っていましたが、今年は新型コロナの影響で、初めてのオンラインの開催になりました。2日間で26の分科会が開催され、行政・企業・有識者・団体など災害支援に関わる様々な分野の人々が集まり、課題共有やコロナ禍の支援のあり方について議論を深めました。

今回は5月26日に行われたセッションについて報告します。26日は2つの分科会でPBVスタッフが登壇しました。

分科会セッション2-3:コロナ禍での支援について考える【地域】/上島安裕が登壇しました
分科会2-3では、コロナ禍の支援のあり方について、2020年7月豪雨災害を例に、支援を受ける側と支援をする側の視点から話をしました。7月豪雨で大きな被害を受けた熊本県では、2016年の熊本地震の際は、外部の350団体が支援に入りましたが、今回は特定の専門性のある団体のみを受け入れ、多くは県内での対応となりました。

 

 

 

コロナ禍での支援でよかった点は、コロナ禍でも専門性のある全国の団体が支援に入り、熊本県も熊本地震のノウハウを活かして支援を行えました。また、県内では大学生や高校生のボランティアが積極的に活動したり、社協が設置する災害ボランティアセンター(災害VC)以外にも民間の災害VCが立ち上がったことです。
課題として上がっていたのは、被災家屋の泥出しや清掃など、人手があればできるニーズが未だにあるということ。そのために例年なら支援の手を届けられたところを、助けることができなかったことが確実にあったということです。

 

 

 

上島からはPBVのコロナ禍の備えについてや、熊本県球磨村の避難所運営と人吉市災害VCへのスタッフ派遣についてを話しました。コロナ禍だからこそ、どうしたら支援を届けられるのか、どうしたら支援を受け入れられるのか、大きな視点で理解しあうことが大切です。

 

分科会セッション2-4:コロナ禍における避難所運営について考える Part2【分野】/辛嶋友香里がコーディネーターを務めました
分科会2-4では、同日午前中に実施した「コロナ禍における避難所運営について考える Part1」でJVOAD避難生活改善に関する専門委員会が制作・発行した「新型コロナウイルス 避難生活お役立ちサポートブック」の解説を受けて、実際の被災地ではどうだったのかを、2020年7月豪雨で被災した熊本県球磨村の村外避難所である「旧多良木高校避難所」を事例にして議論を行いました。

熊本県の中でも大きな被害を受けた球磨村では、村全域に被害が及んだため、村外避難所が多く設置されました。旧多良木高校避難所は球磨村から車で片道1時間もかかる場所にありました。
PBVは、2016年の熊本地震で連携した熊本YMCAから協力依頼があり、熊本県と球磨村からの支援要請を受けて、避難所の運営支援を行いました。協働運営団体のYMCAさんとは事前にオンライン会議を行い、新型コロナの感染者が出てしまった場合の対応やメディアに関する対応などを細かく協議をしたうえで、現地に入りました。

 

 

 

コロナ禍の支援となりましたが、感染をさせないということは、避難されてきた住民に何もさせないということではありません。感染症対策と共有をしっかり行い、避難所運営に住民も主体的に関われるよう話し合いの場を設けました。

また、食事についてはコロナ禍で炊き出しが中止になるなど、いつも以上に大きな課題となりました。被災者の健康状態や住民の声を受け、改善に関する提案書を作成し、栄養士や保健所、避難所運営班などと話し合いを重ね、改善を図りました。。食の課題に関してはコロナ禍以前から長年、避難所で提供される食事は油物の多いお弁当や菓子パン、おにぎりなどが中心となるのが現状です。保存は効きますが、長期間このような食事が続くと、体調を崩してしまう住民さんも少なくありません。最悪の場合、災害関連死に繋がるケースもあります。健康に大きく影響する日々の食事だからこそ、「食事を提供できているから=対応している」ではなく、きちんと目を向ける必要があります。様々な方の協力により旧多良木高校避難所では、最終的にお弁当の対応業者を1社から4社のに増やし、お米を温かい状態で提供したり、バリエーションを豊富にするなど工夫を凝らすことができました。また感染症対策を徹底することで炊き出しも可能となり、地元の団体や飲食店による炊き出しを実現することができました。

 

 

 

今年も、もし大きな災害が発生してしまった場合、コロナ禍で避難所や災害ボランティアセンターを開設・設置する可能性がおおいにあります。支援者側の感染症対策をしっかり行うのはもちろんですが、コロナ禍だからといって諦めることがないような取り組みを行っていく必要があります。被災した地元住民一人ひとりにも協力を呼びかけながら、被災者、支援者双方が、健康で安全な支援活動に取り組むことが求められています。

新型コロナウイルス 避難生活お役立ちサポートブック(第4版)
コロナ禍での避難所運営についてのポイントや、身近にあるものを使った複数の対応方法の提案を紹介する冊子です。知っていれば誰でもできる、具体的な情報が満載です。
第4版では、PBVの2020年7月豪雨での経験をもとにした、コロナ禍での避難所運営における工夫や事例をまとめた資料集も追加されています。ぜひご一読ください。