9月9日、牡鹿半島の荻浜地区にある羽山媛神社で行われたお祭りに、ボランティア約30名が参加しました。その模様をレポートします。
そもそも、ボランティアメンバーがお祭りに参加したのは、荻浜地区の瓦礫撤去と漁業支援活動にずっと関わっていたほか、数日前からはこの日のお祭りに合わせて神社やその周辺の清掃作業のお手伝いもしていたことがきっかけです。
藻で滑りやすくなったために行われた階段の清掃の様子(9月7日撮影)。
清掃活動で繰り返し登った約200段の急な階段も今やいい思い出です。残念ながらお祭りには参加できなかった皆さん、無事怪我もなくこの日を終えることができました。お疲れ様でした!
地元の方と共に、ボランティアメンバーも神事と参拝に参加しました。
神社での参拝も終わり、今日のメインイベントともいえる御神輿が登場。
ボランティアも手伝って、男性陣が担ぎ手の大役を担います。数名いたインターナショナルボランティアのメンバーは、異国の地で人生初となる体験をすることに。
まだ生々しい津波の爪痕が残る浜辺の家々の間を、「ワッショイ ワッショイ」と威勢のいい掛け声と共に御神輿が駆け抜けていきます。
最初の目的地は近くの仮設住宅。ほとんどの皆さんがお祭りに参加していましたが、ご年配の方数名が窓から手を合わせていたり、お賽銭をあげに出てきたりしていました。
再び出発し、日陰で休憩をはさみながら次は港を目指します。
大きな被害を受けた港でも、牡蠣の養殖再開に向けての支援などをしています。
地震による地盤沈下の影響で、海面が岸壁から10cmほどまで迫っていました。
港では、数隻の船が海上での神事に向けて停泊していました。
漁船に乗せる時は足場の悪さと船の揺れで苦戦しました。
ボランティアもそれぞれの漁船に分かれて乗り込み、漁師さんをはじめとする住民の方々と穏やかな海を進みます。
港に戻り、無事御神輿を神社に戻して神事は終了。
達成感と大きな拍手に包まれて、大役を務めたメンバーもホッとしたことでしょう。
そんな頃、神社近くの広場から美味しそうな匂いが漂ってきます。
男性メンバーが御神輿をかついでいる間に女性メンバーがバーベキューの準備をしてくれていました。
体力を使ってお腹を空かせたメンバーから「うまそー!」という声が聞こえてきましたが、もちろんバーベキューの主役は住民の皆さんですからね!(笑)
焼いては運び、焼いてはまた運び。お肉や野菜など大量の食材が、笑い声の絶えない住民の皆さんのテーブルに届けられます。
この後も、スイカ割りがあったりビンゴ大会があったりと大いに盛り上がり、住民の皆さんからこれまでの活動のお礼と、「また是非荻浜に来てください。そして、今度はここで採れた牡蠣でバーベキューをしましょう!」という嬉しい言葉をいただきました。
それを受けて、これまでリーダーリーダーとしてここでの活動をまとめてきた左座くん(愛称:サザン)が「今日はお祭りに参加させていただきありがとうございました。来年の秋は観光で来ます。美味しい牡蠣を楽しみにしています。」と挨拶。
住民の皆さんもボランティアメンバーも、明日からのパワーを胸とお腹に蓄えることができた素晴らしい一日を過ごせたことと思います。
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片付けが進む中、参加していた住民の一人、江刺寿宏(えさし としひろ)さんからお話を伺いました。
Q: 毎年9月9日に行われているお祭りということですが、今年は震災があって意味合いの変わるものになったかと思います。終わってみていかがですか?
江刺さん:そうですね、もちろん意味合いは大きく変わりました。でも、そもそも今年はお祭りをこんなに盛大にできるなんて全く思っていなかったんです。ボランティアの方々が来てくれるとはいえ、今日も朝までそういう思いでした。でも、神社に着いたら皆さんたくさん集まっているしバーベキューの準備もしてくれているし、何かすごいことになるんじゃないかって。今日は平日ということもあって子どもたちは学校だったんだけれど、この盛り上がりを見てほしかったし何よりキレイになった神社や港を見せてあげたいって思ったんです。それで電話で校長先生に掛け合って給食までの時間に来てもらえました。
漁船から海を見つめる子どもたち。荻浜の未来を担う目にはどう映っていたのでしょうか。
江刺さん:養殖業をやっているんですが、震災後は今年の牡蠣の養殖は諦めていたんです。想像もできなかったですからね。でも、時間が経って、ボランティアの皆さんの力もあって少しずつキレイになっていく港を見たら、頑張ってみようという気持ちが湧いてきました。お祭りの時も約束しましたが、牡蠣のシーズンは10月から翌年3月頃までなので、来年の秋にまた来てもらってここで採れた牡蠣を食べてもらいたいんです。
思えば、バーベキューの時に聞こえてきた「俺たち被災してたんだ!って一瞬忘れてたよ。」という声も江刺さんでした。
一日一日、ひとつひとつの活動が住民の皆さんとボランティアメンバーの間に絆を生んでいきます。そして、その絆が復興への近道を射す灯りとなって被災地を照らしていきます。
「明日からも頑張ろう」
そう、心から思えた時間となりました。
All photos by Mitsutoshi nakamura