「誰しもが医療を受けられない現実」
ロシア軍によるウクライナ侵攻によって、一般市民の住宅や学校、病院なども甚大な被害を受けています。世界保健機関(WHO)の報告によれば、5月5日までに攻撃を受けた保健・医療施設の数は191件。これにより75名が亡くなり、54名の負傷者が出ています。病院への直接的な攻撃だけでなく、医薬品不足や衛生状態の悪化などを理由に、医療を受けられずに命の危機にさらされる人びともいます。
人的被害の拡大しているウクライナでは、負傷者への救命救急医療が急務となっています。それにより継続的な治療が必要な患者や軽症の患者が病院にかかることが困難な状況が続いています。
「優先順位が低いがん患者への医療」
国内外に避難している世帯の約3割に、慢性疾患を抱える家族がいるというデータがあります。その中には継続的な治療が必要な多くのがん患者も含まれています。一方で、国連をはじめとした支援団体の資金は、救命救急医療を最優先としている現実があります。そのため診断や治療に費用と時間のかかるがん患者へのケアの優先順位は低く、多くのがん患者が治療を受けられない状態に置かれています。さらにウクライナでは18~60歳までの男性の出国が禁じられていることから、多くの男性がん患者が国内に取り残されてしまっています。
「YCEの支援内容」
ルーマニアに拠点を置くNGO「Youth Cancer Europe(以下、YCE)」は、攻撃が始まった直後の2月26日から、ウクライナのがん患者が継続的な治療を受けられるよう支援活動を続けています。プロジェクト立上げから40日間で、治療が必要な207名のがん患者を支援し、そのうち127名がヨーロッパ16カ国の病院で治療を受けています。支援の対象はがん患者だけではありません。彼らの家族も含んでいて、合計400名以上の人びとに安全な住まい、食料、社会的ケアを提供しています。
がん患者が必要とする支援は、ひとりひとり異なります。YCEが行っている支援は、
- 患者からニーズの聞き取り
- 必要な治療や医薬品の情報収集
- ヨーロッパでの受け入れ可能な病院の情報収集と調整
- 転院に必要な法的手続き
などを実施しています。ウクライナ、そしてヨーロッパ各国の関係機関と協力しながら、ひとりひとりの命を繋ぐためのきめ細やかな活動を実施しています。
「PBVは、YCEと協力事業を開始します」
皆様からお寄せいただいているご寄付はYCEを通じて
- 治療費
- 転院に関する費用
- 患者の家族の移動にかかる交通費
- 転居先での生活費
など、中長期的な支援に活用してまいります。
誰も取り残さない支援の実現に向けて、現地団体と協力しながら支援活動を実施してまいります。
皆様の継続的なご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
【2022年 ウクライナ緊急支援募金 All for Ukraine】
Images: courtesy of Youth Cancer Europe