アフリカの若者と考える防災 「レジリエント・シティ」キャンペーン

 

現在航海中の「ピースボート 第86回地球一周の船旅」では、マダガスカルから南アフリカまでの区間にあたる2014年12月18-23日、国際NGOピースボートとピースボート災害ボランティアセンター(PBV)は国連国際防災戦略事務局(UNISDR)とともに、アフリカの若者を船に迎え、災害の被害を最小限に抑えるための防災促進プログラムを実施しました。

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「レジリエント・シティ」キャンペーンは、2005年に神戸でおこなわれた第2回国連防災世界会議で採択された「兵庫行動枠組(HFA)」を、各自治体が具体的に実行していくための取り組みとして、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)によって立ち上げられました。ピースボートは、2014年からこの世界防災キャンペーンの公式パートナーになりました。年間3回の地球一周の船旅を通し60以上の港町を訪れるという特徴を活かし、1つでも多くの市町村や自治体に「災害に強い都市構築のための必須10項目」の導入を呼びかけています。

 

船内では、各国の若者に向けた「レジリエント・シティ」キャンペーンのユースプログラムをPBVスタッフがファシリテーターとなり実施しています。

過去に実施した「レジリエント・シティ」キャンペーンのユースプログラム

 

12月18日、UNISDRアフリカ事務所によって選ばれた次代を担う若きリーダーたちがマダガスカル、モザンビーク、南アフリカから6名、さらに国連関係者がケニアから2名乗船し、日本からの参加者を約800名乗せた船に合流しました。「レジリエント・シティ」キャンペーンの促進だけでなく、アフリカ・ユースにとって大きな学びと気付きを得られるような場の提供を目指し、災害リスク軽減や災害に強いコミュニティを構築するための取り組みやこれまでの経験をお互いに共有できるようなプログラムを企画しました。

 

プログラム初日は、モザンビークで活動する現地のNGO団体、IVERCAやDANBOの協力を得て、防災・減災を考えるツアーが実施されました。IVERCAの代表を務めるアイヴァンさんの案内でマファララ地区を訪れ、豪雨がもたらす洪水より地域住民の健康や衛生問題が表面化していることを学びました。DANBOの現場リーダーであるグラーモさんのリーダーシップのもとで、アフリカ・ユースは、次の豪雨に備えて排水溝の掃除を手伝いました。

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泥や瓦礫で排水溝が詰まると、洪水によって住宅に被害が出たり、感染症が蔓延したり、子ども達が学校に通えなくなるなど、深刻な状況に直面してしまいます。一つの災害が、衛生面、水、教育、そして持続可能な開発など、多方面に影響をもたらすことが懸念されています。アイヴァンさんは、「このようにツアーなどで外部からの人を受け入れることで、危険で恵まれてないと思われていた地域への偏見が少しでも緩和され、雇用創出にも貢献するなど、地域力の強化が期待できる」と語りました。アイヴァンさんとグラーモさんのように、若者が災害に強いコミュニティづくりの大きな役割を担っている姿は、アフリカ・ユースにとって、非常に良い刺激となりました。

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モザンビークを出港し、ケープタウンに到着するまでの4日間では、アフリカ・ユースは非常にタイトなスケジュールななか、防災に関する幅位広いテーマのワークショップ、セミナー、船内イベントや講演を行いました。UNISDRアフリカ事務所の職員が「レジリエント・シティ」キャンペーンを紹介し、アフリカのユースネットワークの代表からは「ユースと防災」というテーマでレクチャーをしてもらいました。PBVスタッフのロビン・ルイスは2011年の東日本大震災から他国で活かしてほしい教訓を伝えました。そして、今回のプログラムで学んだことや帰国してから取り組みたい課題などをピースボートの参加者に向けて発表する機会を最終日に設けました。

 

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ケープタウンに到着すると、ケープタウン市の職員を迎え、シンポジウムと記者会見を行いました。ケープタウンはUNISDRが掲げる「レジリエント・シティ」キャンペーンの必要項目を満たし、南アフリカで初めてロールモデル都市となった市です。

 

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この約1週間のプログラムを通して、「ここで過ごした時間の意義は、自分たちが帰国してから実際にどう活動できるかにかかっている」と強く自覚しているアフリカ・ユースたちは、下船後も連携を強く保てるように、「アフリカ・レジリエント・ユース(ARY)」というグループのメンバーになりました。さらに、グループとして、また個々の行動目標を記した「オーシャンドリーム宣言」を発表し、災害に強いコミュニティづくりに貢献することを誓い合いました。
※オーシャンドリーム宣言は、現在NGOピースボートが使用している客船「オーシャンドリーム号」に由来している。

 

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今年の3月、仙台で第3回国連防災世界会議が開催され、2015年以降の国際的な防災枠組が策定されます。それぞれの国に適応した災害対策導入や、災害に強いまちづくりに、これからの未来を担う若きリーダーたちのさらなる活躍が期待されます。