石巻では、数日前まで満開だった桜も散り葉桜へと変わり始め、旧北上川の土手にはつくしんぼやタンポポが顔を出しはじめました。これまで1カ月半は、幾度 となく続いた突然の大雪や豪雨、強烈な川風で、ボランティアの拠点となるテントの倒壊や浸水もありましたが、気温も暖かく穏やかになり、夜もある程度寝や すくなりました。
そんな中、ピースボートで支援してきた湊小学校をはじめとする市内多くの学校では、4月21日を前後して入学式が行われました。今日はその様子をレポートします。
ピースボートの活動当初から、泊り込みボランティアを派遣している湊小学校では、お隣の湊第二小学校、湊幼稚園を合わせた3校合同の入学式となりました。小学校2校合同で湊小学校27名、湊第二小学校7名、計34名のささやかな入学式です。
子どもたちは、小学一年生らしく月齢の差が大きく、背の高さも雰囲気もそれぞれで、動きもなかなかまとまりません。その様子が余計に愛らしく、親御さんたちが我が子の成長をとても喜びながら写真を撮り、先生方も微笑みながら見守る、あたたかい入学式でした。
そんな和やかな雰囲気の中、はっと現実に戻されることもありました。
入学式で名前を呼ばれ、「はいっ!!」と元気に返事をする子どもたちを後ろから見守る親御さんの列の一番端に、お母さんのものと思われる遺影を持ちながら我が子を見守るお父さんの姿。
どれだけ自分の娘の成長した姿を楽しみにしていたでしょうか。被災前、保育園か幼稚園かの卒園を間近に控え、小学校入学の準備をするその家族の風景を想像 すると胸が苦しくなり、同席したスタッフも涙を堪えることが出来ませんでした。どれだけ親子三人でこの日を迎えたかったことでしょう。
同席したスタッフは言います。
「少しだけこの被災の風景に慣れてしまった僕には、改めてここがつらい現実と隣り合わせの場所なのだと強く認識させられました。
災害支援をはじめて1カ月半ここで寝泊まりし、ピースボート災害支援チームの動きも一つギアが上がり、スピード感と振れ幅も大きくなってきたのを感じます。
リアルタイムで報告できていないのが本当に申し訳ないほどのドラマが日々眼前を通り過ぎていきます。あまりにも多すぎて、時折立ち止まって、ちゃんと租借しないと、消化不良のままモヤモヤとした思いを抱えたままになってしまいます。
でも、子どもたちの笑顔はやっぱり最高です。なんとも言えません。この子どもたちがツライと感じる毎日では駄目だ、楽しく思いきり遊べる場所を一日でも早く作らなくてはと決意を新たにできた日でもありました」
完全な復興へはまだ道のりがある町の小学校で、満開の桜にも負けない笑顔を見せてくれる子どもたち。彼らの新生活は、大人みんなで全力で守らなくちゃ、ですね!!
ピースボート災害支援センターとは
1983年に始まったピースボートの船旅。約3ヶ月の時間をかけて地球をぐるりとめぐる中で、人と自然、そして文化と繋がる旅を続けてきました。現地の方とふれ合い、スポーツを通して交流したり、歴史を学んだり。これまで、6万人を超える人びとがピースボートで地球一周を体験しています。
また1995年の阪神・淡路大震災以降、台湾やトルコでの大地震、ハリケーン・カトリーナ(米国)、スマトラ沖地震と津波被害に見舞われたスリランカなど、世界各国で支援活動を行ってきました。そして、2011年に起こった東日本大震災。数多くのボランティアの方々とともに、現地で支援活動を行いました。東日本大震災以降、断続的な支援活動を行うため、一般社団法人ピースボート災害ボランティアセンターが設立されました。
現在、世界各地で自然災害が増加傾向にあります。このような災害に対する脆弱性を減らし、災害を軽減していることは国際社会にとって、とても重要です。
同時に、こういった自然災害には誰もが遭遇する可能性があります。中でも世界の貧しい地域や日本の担い手が少なく、繋がりが弱い地域になればなるほど、より深刻な影響を受け、生活の再建に膨大な時間がかかってしまいます。
そんな現代社会の中で、ピースボート災害ボランティアセンターは、被災地での災害支援活動はもちろん、災害に強い社会を作るためにさまざまな活動をしています。
災害の起こると、被災地へ先遣スタッフを派遣。現地の状況を把握し、適切な支援を検討します。日々状況が変わる中で、ボランティアの派遣をはじめ、被災地のニーズに合わせて組織的かつ責任ある支援活動を進めていきます。
さらに、防災・減災への取り組みも行っています。全国で行っている災害ボランティアトレーニングや防災教育、また災害時には公的機関と民間が連携・協働することも大切です。日本でも、世界でも、さまざまなネットワークに参加し「顔の見える関係」を築くため、防災訓練や研修にも積極的に参加しています。
いつ、どこで起こるか分からない自然災害は、ときにわたしたちを被災者にし、ときに私たちを支援者にもします。自分を守ることはもちろん、身近な大切な人を守り、少し遠くのあの人を支える——「人こそが人を支援できるということ」ピースボート災害ボランティアセンターでは、これからも被災地での災害支援活動や災害に強い社会作りに取り組んでいきます。