被災地に暖かいお風呂を!-「千人風呂プロジェクト」

今日は、NGOのhttp://www.jim-net.netが、被災した方たちにお風呂に入ってもらおうとはじめたプロジェクト、その名も「千人風呂プロジェクト」を紹介します。発案と協力の呼びかけをしたのは、医師で代表も務める鎌田實さんです。

このお風呂がはじまるまで、上下水が壊れた人口7万人ほどの石巻市では、自衛隊が運営しているお風呂がたった二つという状況でした。そこでみなさんに、身体を温め、さっぱりする場をもっと作りたいとの思いからはじまったものです。もちろん、感染症予防にもつながります。

もちろん緊急時ですから、千人はもちろん大勢が一度に入れるわけではありませんが、心意気はでっかく「千人風呂」と名づけられました。少人数で順番に入れる、そんなプロジェクトです。小さいといっても、お風呂を作るというのは大変な作業です。今回、様々な企業やボランティアの協力の下に実現したお風呂は、今ではすっかり地域の人たちに愛される憩いの場となっています。ちなみにお湯はポンプで循環させていて、機材は全て、企業からの提供によるものです。今日はピースボートのボランティアもお手伝いしているお風呂をご紹介します。

これが永厳寺です
これが永厳寺です

一つ目は永巌寺というお寺の境内をお借りしている「不動の湯」というお風呂で、4月8日にOPENしました。このお寺は、お風呂だけでなく、地域の人たちが炊き出しをしたり、支援物資を配ったりする拠点にもなっています。

毎日だいたい50名前後が利用するという不動の湯。1回には7名入ればいっぱい、という大きさなので、時には順番待ちになることもあります。それでもご近所にお住まいの方や、近くの避難所の方がよく利用されています。

時間は毎日14時18時の間、男湯と女湯の時間を分けて使っています。お風呂のあと、お茶を飲んでくつろいでいただくためのスペースも作りました。最近では、近所の子どもたちが、お風呂とは関係なく毎日遊びに来てくれるようになっています。

いらっしゃいませ
いらっしゃいませ

ここにはピースボートからもボランティアスタッフが23名、運営サポートで入っています。お風呂当番は、朝から灯油を入れて、水を入れてお湯を沸かします。そして使い終わった後の排水は、ポンプで吸い出して捨てます。毎日キレイにして、気持ちよく使ってもらうためにもちろん掃除もします。水道はお寺のご好意で拝借しています。

「不動の湯」を担当するJIM-NETのスタッフ、熊谷さんは言います。

「この地域は水道は復旧していますが、まだガスが通っていません。また津波の影響で1階が浸水してしまい、風呂釜がやられたため、取り替えないと使えない場合も多いんです。ご家庭でお風呂に入れるようになるには、もう少し時間がかかるでしょうね。離れた避難所から訪問されて『3週間ぶりにお風呂に入れました』と喜んでいただく方もいるんですよ」

まだまだ必要とされている「不動の湯」。地域の憩いの場として、今日もボランティアスタッフみんなで、みなさんのご利用をお待ちしています。

もう一箇所は湊小学校の校庭にある「希望の湯」です。こちらのお風呂は、男女二つの大きな湯船があって、1日200人前後が利用しています。それでも湊小学校には現在も200名以上の避難者が暮らしているため、全員が毎日入るというわけにもいかず、二日に1回のペースで入浴しています。4月20日から本格OPENしてはや一ヶ月。

JIM-NETの西村さんがOPEN当初の話を教えてくれました。

「まだ水道が通らない中で、給水車で水を運んだり、ボイラーのトラブルがあったりと苦戦しながらのスタートだったんです」

現在は水道も復旧し、学校の水道から引いています。使っている水の量は浴槽で10トン。シャワー200人分で67というから、すごい量になります。

「ボイラーにくべる薪は廃材を利用しているので、材料費は無料です。でも入浴している人数によって、温度調整が変わってくるので難しいんですよね」と西村さん。

「始まったときは、本当に喜んでいただきました。震災後初めての入浴、という方も多かったですから。若い人は自衛隊のお風呂や親戚の家など遠くまで足を延ばすこともできますが、高齢の方はそうもいかないですものね。身体が温まって、ほっとした、よく眠れたって声をかけていただきました」

 

これがボイラーです
これがボイラーです
希望の湯でボランティアをする西村さん
希望の湯でボランティアをする西村さん

現在の運営は、JIMNETと青年海外協力隊のOB会、そしてピースボートが力を合わせてやっており、番頭や清掃など毎日少なくとも5名は人手が必要です。

「実は、慣れてきたら、住民の方に管理をお願いしたいと思っていたのですけど、実際にはみなさん、まだまだ日々の暮らしで精一杯なので、まだしばらくはお役目が続きそうですね」

今やすっかりこの「希望の湯」の顔となった西村さん。彼女の笑顔と温かいお風呂の元に、今日も沢山の人が「希望の湯」を訪れます。

※千人風呂の詳細についてはJIM-NETのスタッフブログhttp://blog.livedoor.jp/jim_net/?p=2をご覧下さい。