9月10日に発生した関東・東北豪雨の被害から約3ヶ月が経過しました。
台風18号の影響から、記録的な大雨が降り続け、鬼怒川を含め複数の河川が決壊または氾濫しました。被害は複数県にまたがり、茨城県・栃木県・宮城県を中心に被災した家屋は15,000戸をゆうに超え、東日本大震災以降では、最大規模の災害となってしまいました。
PBVでは、9月11日に特に被害が大きかった地域に向けて先遣スタッフを派遣し被災状況の確認や災害ボランティアセンターの開設や運営状況の聞き取り、また関係機関からの情報収集を行いました。
現地から支援要請のあった宮城県大崎市の災害ボランティアセンターの運営サポートを実施しました。また、最も甚大な被害を受けた茨城県常総市でも、外部からの支援が必要と判断し活動を開始しました。常総市では、鬼怒川の堤防が決壊した影響により、8,262戸の家屋被害があり(茨城県発表12月18日)、水田の多くある地域では、用水路からも水が溢れ出し、市内で浸水した地域は40平方キロメートルに及びます。農作物への被害も深刻で、収穫間近だった稲穂が広範囲に渡ってなぎ倒され、壊滅的な被害を受けました。
■災害ボランティアセンター運営サポート
PBVでは、これまでの経験を活かし地元社会福祉協議会が運営する「常総市災害ボランティアセンター」の運営サポートを行いながら、地元のNPOや、支援団体と連携しながら被災者への支援活動を行ってきました。
大勢のボランティア参加が見込まれた大型連休のシルバーウィーク(9月19日~23日)に向けて、災害ボランティアセンターの受入れ体制を整えていきました。自宅で生活を再開するためには、水に浸かってしまった家財を仕分けし、不要な物を運び出し、生活できるような環境にする事が不可欠です。一方で、急激に廃棄する物が増えることによって、一時的にゴミ集積場所が不足し、家の前に積み上げておかざるを得ない光景も見受けられました。また、時間が経つにつれて水を吸ってしまった断熱材や床、壁にはカビが発生し、健康被害が出る恐れもありました。様々に立ちはだかる課題に対して、被災者のニーズに応えられるような形で、ボランティアを繋げ、支援活動を実施できるように取り組んでいきました。
災害ボランティアセンターでは、ボランティアがグループを組み一軒一軒まわりながら清掃の作業を行ってきました。東日本大震災を経験した宮城県石巻からも、少しでも力になりたいと漁師グループが繁忙期直前にも関わらず現地に駆けつけ、防災意識の高い企業が参加している「民間防災および被災地支援ネットワーク(CVN)」からは、企業ボランティアのみなさんが清掃活動に参加しました。
そして、地域に根ざした活動をしてきた社会福祉協議会や地元NPOとそれぞれ得意分野を持つ支援団体がお互いの強みを活かすためには、連絡調整や情報共有が欠かせません。毎日夕方には、地元の中間支援組織である「茨城NPOセンターコモンズ」を中心に支援団体間の連絡調整会議が開かれました。
11月16日に「常総市災害ボランティアセンター」は、「地域支えあいセンター」に移行され、被災者の生活支援を続けています。
■支援を活かすマッチング
災害ボランティアセンターには、住民たちからの要望やボランティア参加の問合せの他にも、センターでは対応していない特別な支援の申し出も沢山やってきます。炊き出しの申出や高圧洗浄機などの資材提供、専門的な技術を持った方達の支援など、多岐にわたります。そのようなご好意をできる限り被災された方への支援に繋げられていけるように、情報の集約と調整なども、「茨城NPOセンターコモンズ」を中心に、各支援団体と協力しながら行ってきました。表には見えづらい取り組みですが、被災地支援の中でも重要な活動の一つです。
徐々に、被災地域では、住み慣れた地域を離れざるを得なくなった方や先の見えない不安を抱えている方が集える「場」を求める声が聞かれるようになりました。そこで、地域の方達が集えて交流を図れる場作りに力を入れてきました。
地域の区長さんやキーマンと繋がり、被害状況や住民の現状を聞き取りながら、炊き出しやサロン活動が出来る場所を選定していきます。一方で、支援者側が提供できるメニューや食数、持っている資機材、調理や配食に必要な設備を丁寧にヒアリングし、条件に合う避難所や地域をマッチングしていきます。区長さんの負担にも配慮しながら、住民のみなさんへの事前告知の協力をお願いします。炊き出しにはできる限り同行し、改めて地域のニーズや課題をヒアリングし、毎晩行われている支援団体の連絡調整会議で共有していきました。
ある時には、宮城県女川町の仮設住宅に暮らす女性たちが何日もかけて、豆腐ハンバーグや切干大根などのお惣菜をせっせと作り、小分けにして冷凍して、現地で湯煎をするという斬新な手法で食事を提供してくれました。自分たちが避難している頃食べたかったものを思い出して、メニューを考えたのだそうです。普段家庭で食べるようなお惣菜の数々は大好評でした。しかもそれが今も東北で仮設暮らしの方々が手作りしたものだとを知ると、涙を浮かべる住民の方の姿もありました。
家屋の修繕や農業の再建問題、公営住宅に移り住んだ方達や地域のみなさんの集える場作りなど課題は、まだ沢山あります。
PBVとしての支援活動は一旦終了しますが、地元の茨城NPOセンターコモンズを中心に支援活動を引きつぎ、地域の団体を中心に被災者への生活再建支援が継続されていきます。
《PBV関東・東北豪雨災害支援》
●実施期間 2015年9月11日~12月20日
●活動内容 災害ボランティアセンター運営サポート、清掃活動、支援のマッチング調整等
●PBV活動のべ人数 747名
●外部支援調整数 352件
関東・東北豪雨災害へのご協力、ご寄付いただいた、個人や団体、企業のみなさんに感謝申し上げます。ありがとうございました。